悪役令嬢は死にたくないので、学園を中退してスローライフを始めます~敵対していた商家の息子やメインヒロインがなぜか押しかけてきた~

すー

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第1話:死亡フラグ回避/予期せぬ来訪者

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 魔法学園に通うファティームは、ふとしたきっかけでこの世界が好きだった乙女ゲームの世界であると気づいた。

 しかも彼女が転生したのは、そのゲームの悪役令嬢、ファティーム・ヴァンドールというキャラクターだ。

 ファティームは物語の終盤で、主人公と彼女の恋人たちによって追い詰められ、悲劇的な運命を迎えることになっていた。

「こんな結末、絶対に味わいたくない!」

 決意したファティームは、物語のメインストリーから外れて静かに生きる決意を固める。

 彼女は学園を中退し、遠くの村で平和に暮らすことを決めるのであった――

――新しい生活が始まった。

 彼女は継母から譲り受けた小さな家で、ハーブの栽培やポーション作りを始める。

「前世では仕事ばかりだったからこんなスローライフに憧れてたのよね」

 日々は平和で、ゲームの中での恐ろしい運命からも遠ざかった――

――はずだった。。

 ところがある日、その平和な生活が一変する。

 家のドアをノックする音が鳴り響き、ファティームがドアを開けると、そこには意外な人物が立っていた。

 ゲームの中でファティームの宿敵とされていた、ダークマジシャン・アルトだった。

「やっと見つけた」

 そう言って微笑むアルトにファティームは固まってしまう。
 しかしアルトの目は、ゲームで彼がファティームに向けていた厳しい視線ではなく、柔らかで穏やかだった。

「君がいなくなってからずっと探してたんだ」
「……どうしてあなたが私を探してたの?」

 ファティーマが警戒しながら尋ねると、彼は照れたようにはにかんだ。

「僕はファティーナに好意を抱いているんだ」

 アルトの言葉にファティームは驚きのあまり言葉を失った。
 ゲームの筋書きには、こんな展開は絶対になかったから。

「どうして……? たとえそうであったとしても今の私は学校をやめてしまったし、こんな私なんて……」

 彼女は力なく返事をする。
 しかしアルトは微笑みながら言った。

「僕はあなたが何者であろうと関係ない。 心からファティームを好きになったんだ」

 この突然の展開に、これからの物語が、どのように変わっていくのか、原作を知っいるファティームすらも予想ができなかった。







 アルトの突然の告白に、ファティームは混乱していた。

 彼女はゲームの中で、アルトがファティームの敵として登場することを知っていたから。
 しかし、彼の表情に嘘のようなものは感じられなかった。

「アルト……あなたは本当に私のことを……?」

「信じて欲しい、ファティーム」とアルトは穏やかに言葉を続けた。

「あの学園を出てから、僕は君のことを考え続けていた。 そして、ここで再会できたことは、運命だとすら思っているんだ」

 ファティームはアルトの情熱的な言葉に少し心を動かされるものの、ゲームの記憶が彼女の心に影を落としていた。

 しかしアルトは彼女を急かすことなく、村での彼女の生活を勝手に手伝い始める。

 そうしてファティームはアルトを突き放すことも出来ず、近くの宿に泊まって毎日ファティームの元へ通うアルトと少しずつ仲を深めていく。

 彼は特にハーブの栽培やポーションの作成に熱心で、その手際の良さにはファティームも驚いた。

「アルト、あなたはどうしてこんなにポーション作りが得意なの?」

 ファティームの質問に、アルトは微笑みながら答えた。

「実は私の家は代々、薬草を扱う商人の家系なんだ。 その知識を活かして、ファティームを助けたいと思ってる」

ファティームはアルトの温かさや誠実さに触れる度に、彼への警戒心が少しずつ解けていった。

 そして、二人は毎日を共に過ごすうちに、自然と互いに深い絆が生まれていった。

 そんなある日、ファティームの家にまたもや来訪者が訪れる。それは、ゲームの中で主人公の幼馴染として登場する、エリーザという名の魔法使いだった。

「ファティーマ、あなたを探していたわ!」

 エリーザはファティーマと一緒にいるアルトの姿を見て驚いた顔で言った。

「あなたが学園を去った理由、そしてアルトと一緒にいる理由を知りたいの」

 エリーザの言葉に、ファティームは再び過去のゲームの記憶と現実の狭間で揺れ動く。

 アルトとの新しい関係や、エリーザとの今後の関わり方、そしてゲームの運命から逃れるための方法を模索するファティーム。

 彼女の前には、さらなる試練が待ち受けていた。







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