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本編
家族との対峙 1
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「「「「「来ちゃった♪」」」」」
男に言われても、ストーカーのような気持ち悪さしか感じない。
「拠点移すなら、素敵なあの旦那の近くが良いって皆で話しててな~。荷物がさっき着いたんだ。」
「家族連れの大所帯で途方に暮れてたら、近くの人がここの親方に頼むと良いって教えてくれたんだ」
「明日の新聞を楽しみにしてて!面白い事が起きるよ♪」
皆口々に話す。
「あの時は助けてくれてありがとうございました。」
お礼を口にする。
「いや、旦那。忘れてると思うが俺達は加害者なんだ。礼なんていらねぇよ!!」
「それもそうか。じゃあ、今のなしで」
冗談を言う余裕も出てきた。
「え、旦那ぁ~。まだ根に持ってるんすかぁ?」
「…一生忘れない、なんてね。あんな思いはもう二度とごめんだけど、ナタリーが無事だったからもう良いことにする」
「「「「「「旦那ぁ~~!!!!一生ついていきます!!!!」」」」」」
「それは困るから、付いてこないでね?」
「あ、旦那。うちの若ぇのが何人か旦那と一緒に大工見習いとして働くことになったんで、ヨロシクな!」
「えっ??」
「鍛えたら旦那みたいに傷もすぐ治せるんすよね!俺もそうなりたいんす!ヨロシクっす!」
「……」
僕は何も知らない。知らないったら知らない。
無言でナタリーを促し、今度は僕の自宅に向かう。
「…ねぇ、テオ。まだ入らないの?」
「もう少し…」
僕は言葉が家の玄関の前で格闘していた。
(開けたくない…。開けたら絶対いる!!)
「…はあぁぁーー」
深呼吸して一気に中に入る。
「ただいま」
足が三人分見える。
(やっぱりいるぅ~~!!むりむり本当にむり)
長姉オリヴィア、次姉アメリア、三姉ソフィアの姉の足だと分かる。
「やっと来たわね。いらっしゃいな」
三人に続いて居間に向かう。三人とも腰まであるブルネットの髪を靡かせて歩いている。顔立ちも体型も話し方もそっくりで、姉の見分け方は髪のわけ目だ。
姉の何が怖いって、恐ろしい情報網を持っていることだ。人の機微にもかなり敏い。隠し事なんて即バレする。口喧嘩で勝とうなんて思ってはいけない。穏やかな口調とは裏腹に全て知っているかのように的確に図星を突く姿は戦慄する。それが三人揃ってると思うと…鳥肌が立つ。三人とも嫁いだのに何でいるんだろう。
どぎまぎして居間のソファにナタリーと並んで座る。
「今、父さんと母さんも来るわ」と長姉。
「来たわ」と三姉。次姉は妊娠中で大きく目立ち始めたお腹を眠そうにさすっている。
どっどっどっ!と聞き慣れた父のけたたましい足音がする。それに遅れてパタパタ…と軽い足音がしてくるのは母さんか。
父が入ってくるのと同時に、ナタリーと僕は立ち上がり、
「ありがとうございました!」
と頭を下げ、一礼する。自分の知らない間に頭を下げさせていたのだ。
「まぁ、座れ。何があったのか一から聞かせてくれ」
父の号令で座り、事のあらましを包み隠さず話す。
暫く沈黙が落ちる。父が最初に口を開いた。
「俺は自分の息子を自慢に思う。」そして気まずそうに続ける。
「近所の悪ガキどもからからかわれているのはな、その、知っていたんだ。男だしいつか強くなると思って、静観していたせいでお前が苦しんでいたのも知っている…。お前の姉達は口で負かしていたしな、そのうちお前も…と思っていたのもある…その、済まなかった。」
父の隣で母も必死に頷いていた。
「まさかあいつらがギャングになっているなんて思わなかった。人身売買だなんて…。だが、良くやったじゃねぇか。」
僕は俯いて何も言わなかった。あんなに苦しかったのに、家族には味方でいてほしかったのに、知っていてああだったのか。いつも欲しい言葉とは見当違いの、僕の気持ちなんて聞きもせずに無神経に一方的に伝えられた言葉がフラッシュバックする。過去の傷だらけの自分自身が言う。
(家族だったら、怪我だらけで子供が帰って来たらどうしたのか誰にやられたのか一回でも聞くだろう?)
胸を焦がすような真っ黒な感情が吹き出してくる。
「…今更?」
ぽつりと言った。
「知っていて放置したんだ。」
つい最近まで僕の避難場所は魔女の所しかなかった。魔女が自分の傷を癒し、母のように抱き締め励まし、食べ物をくれた。僕の味方は魔女しかいなかった。どんなに姉に、母に、父に訴えたって「ああ、そうなの」としか言わなかったのに。今になって押さえ込んでいた感情が溢れて止まらない。女の姉達はできたのに、やり返せないいつも傷だらけの息子が情けなかったんだろう?恥ずかしかったのだろう?
「弱かった僕が悪いんだから、仕方がないね」
もう、いいや。諦めの感情が涌いてくる。口では何とでも言えるし、言ったところで変わることなんてない。それこそ今更だろう。
ナタリーにはこんな所見せたくなかったのに。もう、ナタリーを送っていこう。
そう思っていると、今まで静かに成り行きを見守っていたナタリーが口を開いた。
「テオの性格ってご存知?」
男に言われても、ストーカーのような気持ち悪さしか感じない。
「拠点移すなら、素敵なあの旦那の近くが良いって皆で話しててな~。荷物がさっき着いたんだ。」
「家族連れの大所帯で途方に暮れてたら、近くの人がここの親方に頼むと良いって教えてくれたんだ」
「明日の新聞を楽しみにしてて!面白い事が起きるよ♪」
皆口々に話す。
「あの時は助けてくれてありがとうございました。」
お礼を口にする。
「いや、旦那。忘れてると思うが俺達は加害者なんだ。礼なんていらねぇよ!!」
「それもそうか。じゃあ、今のなしで」
冗談を言う余裕も出てきた。
「え、旦那ぁ~。まだ根に持ってるんすかぁ?」
「…一生忘れない、なんてね。あんな思いはもう二度とごめんだけど、ナタリーが無事だったからもう良いことにする」
「「「「「「旦那ぁ~~!!!!一生ついていきます!!!!」」」」」」
「それは困るから、付いてこないでね?」
「あ、旦那。うちの若ぇのが何人か旦那と一緒に大工見習いとして働くことになったんで、ヨロシクな!」
「えっ??」
「鍛えたら旦那みたいに傷もすぐ治せるんすよね!俺もそうなりたいんす!ヨロシクっす!」
「……」
僕は何も知らない。知らないったら知らない。
無言でナタリーを促し、今度は僕の自宅に向かう。
「…ねぇ、テオ。まだ入らないの?」
「もう少し…」
僕は言葉が家の玄関の前で格闘していた。
(開けたくない…。開けたら絶対いる!!)
「…はあぁぁーー」
深呼吸して一気に中に入る。
「ただいま」
足が三人分見える。
(やっぱりいるぅ~~!!むりむり本当にむり)
長姉オリヴィア、次姉アメリア、三姉ソフィアの姉の足だと分かる。
「やっと来たわね。いらっしゃいな」
三人に続いて居間に向かう。三人とも腰まであるブルネットの髪を靡かせて歩いている。顔立ちも体型も話し方もそっくりで、姉の見分け方は髪のわけ目だ。
姉の何が怖いって、恐ろしい情報網を持っていることだ。人の機微にもかなり敏い。隠し事なんて即バレする。口喧嘩で勝とうなんて思ってはいけない。穏やかな口調とは裏腹に全て知っているかのように的確に図星を突く姿は戦慄する。それが三人揃ってると思うと…鳥肌が立つ。三人とも嫁いだのに何でいるんだろう。
どぎまぎして居間のソファにナタリーと並んで座る。
「今、父さんと母さんも来るわ」と長姉。
「来たわ」と三姉。次姉は妊娠中で大きく目立ち始めたお腹を眠そうにさすっている。
どっどっどっ!と聞き慣れた父のけたたましい足音がする。それに遅れてパタパタ…と軽い足音がしてくるのは母さんか。
父が入ってくるのと同時に、ナタリーと僕は立ち上がり、
「ありがとうございました!」
と頭を下げ、一礼する。自分の知らない間に頭を下げさせていたのだ。
「まぁ、座れ。何があったのか一から聞かせてくれ」
父の号令で座り、事のあらましを包み隠さず話す。
暫く沈黙が落ちる。父が最初に口を開いた。
「俺は自分の息子を自慢に思う。」そして気まずそうに続ける。
「近所の悪ガキどもからからかわれているのはな、その、知っていたんだ。男だしいつか強くなると思って、静観していたせいでお前が苦しんでいたのも知っている…。お前の姉達は口で負かしていたしな、そのうちお前も…と思っていたのもある…その、済まなかった。」
父の隣で母も必死に頷いていた。
「まさかあいつらがギャングになっているなんて思わなかった。人身売買だなんて…。だが、良くやったじゃねぇか。」
僕は俯いて何も言わなかった。あんなに苦しかったのに、家族には味方でいてほしかったのに、知っていてああだったのか。いつも欲しい言葉とは見当違いの、僕の気持ちなんて聞きもせずに無神経に一方的に伝えられた言葉がフラッシュバックする。過去の傷だらけの自分自身が言う。
(家族だったら、怪我だらけで子供が帰って来たらどうしたのか誰にやられたのか一回でも聞くだろう?)
胸を焦がすような真っ黒な感情が吹き出してくる。
「…今更?」
ぽつりと言った。
「知っていて放置したんだ。」
つい最近まで僕の避難場所は魔女の所しかなかった。魔女が自分の傷を癒し、母のように抱き締め励まし、食べ物をくれた。僕の味方は魔女しかいなかった。どんなに姉に、母に、父に訴えたって「ああ、そうなの」としか言わなかったのに。今になって押さえ込んでいた感情が溢れて止まらない。女の姉達はできたのに、やり返せないいつも傷だらけの息子が情けなかったんだろう?恥ずかしかったのだろう?
「弱かった僕が悪いんだから、仕方がないね」
もう、いいや。諦めの感情が涌いてくる。口では何とでも言えるし、言ったところで変わることなんてない。それこそ今更だろう。
ナタリーにはこんな所見せたくなかったのに。もう、ナタリーを送っていこう。
そう思っていると、今まで静かに成り行きを見守っていたナタリーが口を開いた。
「テオの性格ってご存知?」
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