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突然スタートさせられた異世界生活

纏まらなくなった思考

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日向ぼっこで連れてこられたのはさっきのテラスがあるところからさらに奥まった場所だった。巨大な庭園にある見晴らしの良い丘で腰を下ろした。私はツニートの肩から頭の上に移動させられ、ツニートはどこから取り出したか分からない大きな葉っぱを自分の頭の上に乗せた。私からは丁度良い日陰になった。

庭園は様々な花が満開で、素人でも丁寧に手入れされているのが分かる。

『ララ、見て。』
ツニートが隣に腰を下ろしたアノーリオンの顎の下を遠慮なくぱかっと開けた。

あ、私のリュック…。

「きゃああああ~~~~~!!」
乙女のような悲鳴が隣からあがる。

『ここ、貴重品、入れる、便利。使うと良い』

そこ、逆鱗とかって呼ばれる場所じゃないっけ?急所でそこ刺されたら死ぬってやつ?

「儂のお宝が落ちたらどーする!!」

え、そこ金庫的な扱いなんだ?じゃあ、物語でドラコンの逆鱗触ると怒るっていうのはお財布盗られそうだったから怒ってたってこと?そりゃ怒るわ…。

確かにセキュリティ万全だし便利そうだけど、いきなり人様の顎の下に手を突っ込むのはちょっと……。

『ララ、うれし?』
私、何で今までリュックの事忘れてたんだろう?あれ?いつから忘れてたんだろう?おかしいな。

ありがとうの意味を込めて頭を撫でる。弟がいたら、こんな感じなのかな?髪はごわごわかと思いきや、猫っ毛のようにふわふわで柔らかい。それに天日干しした布団の匂いがする。気持ち良くて、すとんと眠りに落ちた。







◇◇◇◇◇


「寝たか」
アノーリオンがララを起こさないよう小さく声をかけた。

「おかしいと思わんか。」
何が、とは言わなかった。それでも目の前の巨人族の仔は分かったようだった。

『ララ、泣かない、話さない。すぐ寝る。』

「不自然な程に感情を表に出さないのぅ。儂らに怯えてもおかしくないと思ったが。ガイアが関係しておるか」

ツニートはこっくり頷く。
『考えさせない。だから、考えよう、したら、寝る。ガイア、辛い記憶、いらない、忘れさせたい。』

「だがそれでもいつかは向き合わねばなるまい。先延ばしにすればするほど辛くなる。ガイアの過保護には困るのぅ。話が通じる相手ではなし。何か方法良い方法はないか…。
あいつらにも言っておかねばなるまいな。ギルミアは余計な一言が多いし、ラヴァルはちぃと無神経な所があるからな。気を付けさせねばならん」

『カーミラ、忘れてるよ?』

「おぉ。そうだそうだ。だがカーミラは心配あるまい?医者と母の心得もあるしのぅ。まぁ、構いすぎるきらいはあるがな」

『おれ、アノーリオン、見守るだけ』

穏やかに三人の時間は過ぎていった。



◇◇◇

『ララ、そろそろ、夕ごはん。』
夕ごはん、の声で一気に意識が覚醒する。人様の頭の上でぐーすか寝すぎて引くレベルだ…。既にテラスに移動済みだった。移動中も全く気がつかなかった事に衝撃を受ける。慌ててツニートの頭の上から下りようとして足を滑らせた。

あ、落ちる!

衝撃に備えようと身を固くするが、背中の翼がパラシュートのように開いてバッサバッサと必死に羽ばたいて落下速度を落としてくれた。そのまま地面に着地かなーと思っていたらツニートの両手の中に着地した。

そして、アノーリオンさん?それ必殺技的なビームでは…?貴方だけ殺傷能力高過ぎない?もしかして私に恨みとかある…?私、それ当たったら骨も残さず塵になる自信あるよ?……結局、お空に放ってました。あぶな。

昼ごはんすっ飛ばして寝てたので空腹が限界です。お腹が鳴って地響きに似た音がしている。

「まだお肉はお腹が受け付けないと思うのだけど。果物はどうかしらぁ?朝とは違うのを用意してくれたみたいよぉ」

色んな果物がタワーになって積んである。上から取らないと崩れるね、これ。でもタワーの一番上の赤いバナナより真ん中にあるオレンジ色の苺が食べたい…。そう思っていると、金髪さんが気付いて、素早く引き抜いてくれた。この人、きっとジェンガも上手いと思う。感謝の意味を込めて会釈して、思い切りかぶりつく。やっぱり味は苺だ。色とのギャップが毎度すごいな。

「ララちゃん!ララちゃんの好物とか好きな事ってなぁに??」
と金髪さん。

果物も肉も好きだけど、これが一番好き!って即答するものはないなぁ。
好きな事…。ずっと練習してきたチアリーディングは大好き。そうだ、大会が近いから皆で…皆って誰だっけ?あれれ?混乱してくる。

「ララちゃん?念話にも声にも出てない事分かってる?」

「ギルミア!!気を付けろと言ったでしょう!族長だった者の発言とは思えませんね」

え?どういうこと?だってさっき、ちゃんと即答するほどの好物はないって答えたのに。聞こえなかっただけじゃないの?朝はちゃんと念話?とかっていうやつも出来てたじゃん。言いたいことが目の前でぐるぐると回り、目が回って立っていられなくなり、私の意識はブラックアウトした。



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