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突然スタートさせられた異世界生活
夢みたいな夢
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夢を見た。夢を見てるって分かる夢。
姿形は朧気だけど、何故か赤ちゃんになった私は知らない女性の胸の中にいた。チョコレート色のウェーブを描いた、腰まである美しい髪がとてつもなく印象的な人だった。髪キラッキラして、発光してない?顔は分からないけど、ものすんごい美人の気配がする。例えるならハリウッドスターに抱っこされてる感じ。庶民の夢よね、ハリウッドスターの子になってみたいって。
「良い子……。あぁ。可哀想に…。」
女性は、涙を流して何かを悲しんでいた。
何故泣いているのか分からなくて、泣かないで、と意味を込めて赤ちゃんの手だけど女性の頬に伸ばす。それでもその女性は涙を流し続けている。私を抱いて、ゆらゆらと身体を揺らしてくれているせいか安心して眠くなってきた…。さすが母の安心感は最強だ。知らない言葉の子守唄が耳に心地好かった。
「…この母が……、………してあげ………」
◇◇◇◇◇
ぱかっと目を覚ますと、ベッドの上の繭の中にいた。川流しに合っていた時と違って、繭は下半分しか無かったから、楽に身体を起こす事が出来た。
何かの夢を見ていたとまでは分かるのだが、何の夢だったか思い出せない。何だっけ?
ベッドの縁に腰掛け、辺りを見回す。ここ、どこのホテル?広すぎない?スウィートルームみたい。それに私、いつの間にか真っ白のシンプルなワンピース着てるなぁと、ぼんやりと考える。それに翼が邪魔にならないように背中が開いている。
ドドドドドッ!と何かが走ってくる音がしたと思ったら、部屋のドアが勢い良く開いた。驚いて翼で思わず身体を守ろうとした。
あれ、私の翼。動く。もう痛くない。もしかして飛べる?
自由に動かせる事が嬉しくなる。風切り羽までつぶさに観察していると、ドアを開けた主の存在を思いっきり忘れていた事を思い出す。ドアの前に立つのは、倒れる前に見たでっかい蜘蛛の女性だった。カーミラさん、だったっけ?何故かこちらを見て、頬を赤くして震えているが。
「おおお起きたのね!!どこか痛むところはない?水は飲む?朝ごはんは食べられるかしら?食べられるなら一緒にどう?勿論、食べられる量だけで良いのよぉ!何が好きかしら!」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
何から答えたものか、と返答に困っていると水の入ったグラスを差し出される。口を付けると、オレンジの爽やかな香りがした。気付くと一杯飲み干していて、すぐに二杯目を注いでくれるカーミラさん。
「食欲はありそうねぇ。良かったわぁ。一緒に朝ごはん食べましょう?」
目の前に手を差し出される。そっと手を重ねて立ち上がろうとすると足から力が抜けて思わず床にお尻を打ち付ける。
「ララちゃん!!」
カーミラさんが心配して私の目の前で、蜘蛛の腹をぺたんと床につけて足を診てくれる。お医者さんなのかな?
「捻挫はしてないわねぇ。筋肉量が足りないだけだと思うわぁ。栄養もね。ゆっくりリハビリしていけば大丈夫よぉ!」
と言って、私の膝裏に手を入れたかと思うと抱き上げてくれた。ものすごい視点が高くなる。ここでやっと部屋の違和感に気づいた。部屋がやたらと広いんじゃなくて、部屋と家具に対してベッドが小さいんだ。ドアも妙に大きいのは、カーミラさんが2mくらい?あるからかな。気づいたらすっきりした。
抱っこされていることが何となく恥ずかしくて、食堂に向かうカーミラさんの肩越しにそっと後ろの廊下を見つめる。蜘蛛だからか全く揺れずに滑るように歩くなぁと思っていたらあっという間に食堂についた。
「揃ってるわねぇ!さぁ、食べましょう!」
そこは食堂というよりテラスに近かった。ウッドデッキにテーブルと椅子があるが、そのすぐ隣には平たい石の上に巨大な丸い鉄板が乗せてあった。鉄板の上に巨大な肉がいい匂いをさせていて、その前でツニートとアノーリオンがお行儀良く座っていた。
あれは特に大きな皆さん用か。そもそも入れないもんね。
こちらのテーブルにも美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。異世界に来て初めてのまともな料理だった。
「おはよう、ララちゃん、カーミラ。これはララちゃんのために、料理好きの妖精の皆が張り切って作ったくれたんだよ。乗せきれ無かったけどまだたくさんあるんだって」
と金髪さんがフレンドリーに話しかけてくれた。この金髪さんの名前、なんていったっけ?
「……おはようございます、ララ、カーミラ。…無事で……良かっ…zzz…」
と青白い顔の、ら、ラヴァルさん?が起きて、また寝た。
「そこの蝙蝠はいつもの事だから放っておいて、食べましょう!ララちゃん、まずは果物でも食べてみる?」
カーミラさんが勧めてくれたので、こくりと頷く。差し出された果物は、真っ黒い桃みたいな見た目のものやら毒々しい紫のオレンジ?やら食べるには少し勇気が必要な代物ばかりだった。見た目に慣れてしまえば真っ黒の桃も美味しかった。普通の美味しい桃の味だった。何口か食べただけでもうお腹が一杯になってしまった。こんなにたくさん作ってくれたのに、と申し訳なく思ってしまう。
「まずは吐かずに食べられるだけ食べたら十分さ。僕の竪琴でも聴くかい?」
と名前が思い出せない金髪さん。朝から優雅だな。
「余しても食い扶持はたくさんいるでな。今はなぁーんにも考えんのが良いじゃろうて。あ、竪琴は気分じゃないから違うので。」
とこちらも名前が分からない赤いドラゴンさん。
目の前で突然強い風が吹いたと思ったら、ツニートが縮んだ。ウルトラ◯ンサイズからカーミラさんと同じ2メートルサイズまで小さくなった。
『日向ぼっこ、しよ。アノーリオンも一緒。』
私を肩に乗せて、ツニートはゆっくり歩きだした。
赤いドラゴンさんは、アノーリオンというらしい。後ろからのしのしとついて来る様は、大型犬の様子と同じでなんかほっこりした。
姿形は朧気だけど、何故か赤ちゃんになった私は知らない女性の胸の中にいた。チョコレート色のウェーブを描いた、腰まである美しい髪がとてつもなく印象的な人だった。髪キラッキラして、発光してない?顔は分からないけど、ものすんごい美人の気配がする。例えるならハリウッドスターに抱っこされてる感じ。庶民の夢よね、ハリウッドスターの子になってみたいって。
「良い子……。あぁ。可哀想に…。」
女性は、涙を流して何かを悲しんでいた。
何故泣いているのか分からなくて、泣かないで、と意味を込めて赤ちゃんの手だけど女性の頬に伸ばす。それでもその女性は涙を流し続けている。私を抱いて、ゆらゆらと身体を揺らしてくれているせいか安心して眠くなってきた…。さすが母の安心感は最強だ。知らない言葉の子守唄が耳に心地好かった。
「…この母が……、………してあげ………」
◇◇◇◇◇
ぱかっと目を覚ますと、ベッドの上の繭の中にいた。川流しに合っていた時と違って、繭は下半分しか無かったから、楽に身体を起こす事が出来た。
何かの夢を見ていたとまでは分かるのだが、何の夢だったか思い出せない。何だっけ?
ベッドの縁に腰掛け、辺りを見回す。ここ、どこのホテル?広すぎない?スウィートルームみたい。それに私、いつの間にか真っ白のシンプルなワンピース着てるなぁと、ぼんやりと考える。それに翼が邪魔にならないように背中が開いている。
ドドドドドッ!と何かが走ってくる音がしたと思ったら、部屋のドアが勢い良く開いた。驚いて翼で思わず身体を守ろうとした。
あれ、私の翼。動く。もう痛くない。もしかして飛べる?
自由に動かせる事が嬉しくなる。風切り羽までつぶさに観察していると、ドアを開けた主の存在を思いっきり忘れていた事を思い出す。ドアの前に立つのは、倒れる前に見たでっかい蜘蛛の女性だった。カーミラさん、だったっけ?何故かこちらを見て、頬を赤くして震えているが。
「おおお起きたのね!!どこか痛むところはない?水は飲む?朝ごはんは食べられるかしら?食べられるなら一緒にどう?勿論、食べられる量だけで良いのよぉ!何が好きかしら!」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
何から答えたものか、と返答に困っていると水の入ったグラスを差し出される。口を付けると、オレンジの爽やかな香りがした。気付くと一杯飲み干していて、すぐに二杯目を注いでくれるカーミラさん。
「食欲はありそうねぇ。良かったわぁ。一緒に朝ごはん食べましょう?」
目の前に手を差し出される。そっと手を重ねて立ち上がろうとすると足から力が抜けて思わず床にお尻を打ち付ける。
「ララちゃん!!」
カーミラさんが心配して私の目の前で、蜘蛛の腹をぺたんと床につけて足を診てくれる。お医者さんなのかな?
「捻挫はしてないわねぇ。筋肉量が足りないだけだと思うわぁ。栄養もね。ゆっくりリハビリしていけば大丈夫よぉ!」
と言って、私の膝裏に手を入れたかと思うと抱き上げてくれた。ものすごい視点が高くなる。ここでやっと部屋の違和感に気づいた。部屋がやたらと広いんじゃなくて、部屋と家具に対してベッドが小さいんだ。ドアも妙に大きいのは、カーミラさんが2mくらい?あるからかな。気づいたらすっきりした。
抱っこされていることが何となく恥ずかしくて、食堂に向かうカーミラさんの肩越しにそっと後ろの廊下を見つめる。蜘蛛だからか全く揺れずに滑るように歩くなぁと思っていたらあっという間に食堂についた。
「揃ってるわねぇ!さぁ、食べましょう!」
そこは食堂というよりテラスに近かった。ウッドデッキにテーブルと椅子があるが、そのすぐ隣には平たい石の上に巨大な丸い鉄板が乗せてあった。鉄板の上に巨大な肉がいい匂いをさせていて、その前でツニートとアノーリオンがお行儀良く座っていた。
あれは特に大きな皆さん用か。そもそも入れないもんね。
こちらのテーブルにも美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。異世界に来て初めてのまともな料理だった。
「おはよう、ララちゃん、カーミラ。これはララちゃんのために、料理好きの妖精の皆が張り切って作ったくれたんだよ。乗せきれ無かったけどまだたくさんあるんだって」
と金髪さんがフレンドリーに話しかけてくれた。この金髪さんの名前、なんていったっけ?
「……おはようございます、ララ、カーミラ。…無事で……良かっ…zzz…」
と青白い顔の、ら、ラヴァルさん?が起きて、また寝た。
「そこの蝙蝠はいつもの事だから放っておいて、食べましょう!ララちゃん、まずは果物でも食べてみる?」
カーミラさんが勧めてくれたので、こくりと頷く。差し出された果物は、真っ黒い桃みたいな見た目のものやら毒々しい紫のオレンジ?やら食べるには少し勇気が必要な代物ばかりだった。見た目に慣れてしまえば真っ黒の桃も美味しかった。普通の美味しい桃の味だった。何口か食べただけでもうお腹が一杯になってしまった。こんなにたくさん作ってくれたのに、と申し訳なく思ってしまう。
「まずは吐かずに食べられるだけ食べたら十分さ。僕の竪琴でも聴くかい?」
と名前が思い出せない金髪さん。朝から優雅だな。
「余しても食い扶持はたくさんいるでな。今はなぁーんにも考えんのが良いじゃろうて。あ、竪琴は気分じゃないから違うので。」
とこちらも名前が分からない赤いドラゴンさん。
目の前で突然強い風が吹いたと思ったら、ツニートが縮んだ。ウルトラ◯ンサイズからカーミラさんと同じ2メートルサイズまで小さくなった。
『日向ぼっこ、しよ。アノーリオンも一緒。』
私を肩に乗せて、ツニートはゆっくり歩きだした。
赤いドラゴンさんは、アノーリオンというらしい。後ろからのしのしとついて来る様は、大型犬の様子と同じでなんかほっこりした。
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