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突然スタートさせられた異世界生活

少しの変化

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日がもう少し高くなった頃、カーミラさんが朝ごはんを誘いに来てくれた。
「ララちゃん、おはよう。……朝は食べられそうかしらぁ?」

まず何よりも立ち上がれない。朝ごはん以前の問題が立ちはだかった。どう答えたものかと思っていると、カーミラさんがウエストポーチのようにして、蜘蛛の背中部分に何か積んでいるのが見えた。

カーミラさんはおもむろにその背中に積んでいたものを床に下ろした。
「私の繭の上半分をなくしてあるのよぉ。そしたらララちゃんも負担なく、皆と食べられると思ってぇ。部屋で一人で食べるのは味気ないものぉ。まだ繭がほどけるまでもう少し待ってねぇ?」

そう言いつつ、カーミラさんは私を担いだ。冬に子供が座ったそりを引くお母さんみたい。謎の敗北感を感じる。カーミラさんと背中合わせに蜘蛛の背中にくくりつけられ、テラスまで運ばれてゆく。なんか恥ずかしい…。意外にも蜘蛛の背中はさらさらのベルベットみたいな手触りだった。やっぱり毛並み?のケアはしてるのかな?
「その…。…昨日は一人になりたかったでしょぉ…?だから今朝はどうかなってちょっとドキドキしてたの。一緒に食べれて嬉しいわぁ。ギルミアにムカついたら遠慮なくひっぱたいて良いからねぇ。本当に余計な一言が多いのよぉ。」

(えぇ……。それはちょっと…。)
一応、私の恩人だしさ、さすがにそこまでは気が引ける。昨日、私が泣いていた事は既にご存知らしい。疚しいことは何もしてないけれど、知られてたと思うと恥ずかしくなってくる。

「罰としてこの屋敷の一番高い塔から吊るした事もある位なのよぉ。呼んでくれたらいつでも吊るすからねぇ」
カーミラさんがお色気たっぷりに教えてくれる。ギルミアさん、吊るされた事あるんだ…。

テラスに着いた。いつものようにラヴァルさんは足を組んだまま寝ている。ギルミアさんは何故かげっそりした顔をしていたが、笑顔で手を振ってくれた。アノーリオンさんとツニートも揃っていて、私が一番最後だったようだ。慌てて頭を下げる。カーミラさんは私を繭ごと中央が少しくぼんだ大きな白いクッションに乗せた。

「さて、食べましょう!」
カーミラさんの一言で皆、一斉に食べ始める。アノーリオンさんが肉に向かって火を吹いて、すぐにツニートが肉を半分に取り分けていた。野戦料理…?すごい迫力。そして緑と紫色した肉は食べて大丈夫なのかな…。二人の様子にちょっと引いていると、食べたいと思われたのか、
「あの肉は猛毒だよ。ガイアの血をより濃く引く古代種族じゃないと即死する代物だから、ララちゃんにはこっちだね。」
ギルミアさんがショッキングピンクのブドウ?を差し出しながら教えてくれた。どぎつい見た目で、何と味はメロン。なんてこと!視角と味覚の情報が上手く噛み合わない。でも美味しい。数粒食べたところでお腹一杯になった。ふぅ、と一息つくとギルミアさんが私を見て言った。

「ララちゃん、何か雰囲気変わった…?いや、何が変わったのか説明できないんだけど、何かいつもと違うなって思って。」

それはきっと私の心境の変化が関係しているんだと思う。鋭い人だな。私の母も姉も人の変化にとても敏感な人だった。HSP?HPS?とかいうやつだって友達が言ってた。嫌な事があった時も体重が2㎏太った時も二人には隠し通せた事が無かった。それととても似ている。気を付けないと。

分からない、と首をかしげておく。私が何か隠していることは分かったかもしれないが、何を隠したかまでは分からないだろう。私の考えていることが分かる異世界マジックがあるなら別だが。

「う~ん。でも何か違うんだよなぁ。前はおっとりって感じだったんだけど、今は…、きりっと?いや、違うな。なんか凛とした感じ?う~ん、上手い言葉が見つからないんだけど。ツニートは分かるよね?」

『???ララはララ。変わらない。ギルミア、カーミラに、もっかい、吊るす?』

ギルミアさんは全力で首を横に振っている。アノーリオンさんもカーミラさんもため息ついてる。何となく五人の力関係が見えた気がする。

誰に教えを請うべきか一瞬悩んだけれど、ラヴァルさんにお願いしよう。ラヴァルさんが起きるのを待とうと決めた。




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HSP →「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略。
生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質を持った人」という意味で、環境や性格などの後天的なものではなく、先天的な気質、つまり生まれ持った性質であることが分かっています。

HSPは病気ではありません。最近は「繊細さん」とも呼ばれていますね。
(Wikipedia参考にしています。)
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