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突然スタートさせられた異世界生活
学びます!
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説明回です!
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部屋のベッドに向かうと、ラヴァルさんがいそいそと地図やら本やらどっさりと用意していた。すごいウキウキしてる…。
ギルミアさんはベッドの上にそっと繭ごと置いてくれた。先ほどのやり取りが無かったかのように「じゃあね」と言って部屋を出ていった。
「まずは、魔族の歴史からにしましょうか。この間も説明は一部しましたが、もっと詳しくやりましょう。」
原初の女神ガイアはこの世界を創造した。神の一つ柱で神と言ってはいるが、いうなれば世界、大地そのものである。人間や怪物など生きているもの全て皆等しくガイアの子であるとされる。
世代を経る毎に怪物はガイアの能力を持つものと持たないものに別れた。能力を持たないものは怪物と区別し、動物と呼ばれた。高い知能と身体的特徴を持つものは、人間や怪物と区別し、魔族と呼ばれた。
魔族達は高い能力、長い寿命、頑丈な身体を脈々と受け継いでいったが繁殖能力だけはとても低かった。寿命が短い人間だけは文化の発展と共に桁違いにその数を増やしたが、世代を経る毎にガイアから受け継いだ能力を持つ者は少なく、またその力も弱くなっていった。そして人間たちの研究が進み、ガイアの能力を使う源を「魔力」と呼び、魔力が低い者がその能力を無理に使うと、魔力使用後に有毒な残りカス「淀み」が出ることが分かってきた。さらに研究が進み、妖精族含む一部の魔族、薬効を持つ動植物、ごく僅かな一部の人間に淀みを浄化する能力を持つ者がいることが分かった。その浄化の能力を持つ者が浄化をしても数を増やした人間達の淀みを生み出す速さには到底叶わず、淀みは増える一方だった。浄化のスピードは小さな水溜まり一つ浄化するのに数か月~数年かかるほどだった。
また時折異世界からの住人がやって来る事があったが、この頃からこちらから意図的に異世界人を呼ぶ事も出来るようになった。
一人の人間の研究者が、浄化能力を持つ者の身体の一部を淀みに犯された大地に埋めると、その土地は一晩で浄化され、埋めた一部が朽ちるまで大地は淀みに犯される事が無いと発表した。異世界人は特にその浄化能力が高い、とも。この発見は偉大だと持て囃された。
これが後に悲劇を生んだ。
魔族達も淀みを発生させるがその量は極僅かで、また頑丈な身体を持つため淀みの影響をほとんど受けず、浄化の能力を持つものを保護して増やしていこうと考えた。だが淀みの影響を強く受ける人間達は、こぞって浄化能力を持つものや淀みに犯されていない土地を求めて奪い合いを始めた。
ユニコーンやドリアード、人魚族、妖精族、ドラゴン族、異世界人は全身の血肉が有用であったがために、住処を追われ、捕まれば生きたまま羽根や手足をもがれ、バラバラにされて土地に撒かれた。一つ目族は一つしかない目玉を抜かれ、ヘカトンケイル族(百の腕を持つ巨人)もその腕を全てもがれた。闇ルートでは捕まったものたちの血や腕、時には心臓までもが高額で売られることもあった。
力の強い種族も妻や子供が人質に取られ、人間の残虐で卑劣な手段の前に次々と犠牲になっていった。そうして魔族は人間と対立した。
浄化の能力を持つ人間は性別を問わず常に厳しく監視・監禁された。その能力を国の為だけに使い、その能力を持つ人間を次代に残す為、複数の人間と無理矢理娶わせるなど非道なやり方がなされた。
それを止めたのが、四宮 守 という一人の異世界人だった。彼も私と同じような目に合いながら、彼が得たものは「誰よりも賢い知恵」だった。彼は誰よりも上手く相手を出し抜き、切り抜けたいと強く願ったから。ガイアを目覚めさせ真名による誓約を生み出し、人間達に利用されることなく魔族達を守るためその身を湖へと沈ませた。ガイアの加護により亡骸は永遠に朽ちることは無い。だからこそ彼の身体が魔族領にある限り、永久的に魔族領では淀みは発生しない。数百年経った今も魔族の恩人として語り継がれているのは、それら全てをたった一人で為したから。
「……という訳です。真名のからくりが人間側にバレてからは、対魔族・異世界人にも非常に有効ですから悪用されまくってます。守の死後、ガイアはまた眠りにつき助力は願えませんから、真名を教えないという対策しか取れません。
さらに、魔族側はその身体的特徴や種族の特性によって浄化とは関係なく人間に奴隷として拐われたり、風評被害で村を滅ぼされ皆殺しにされたり倉を奪われたりしています。」
うわ、人間えげつな…。泥棒とかどんだけ貪欲なの…。しかも風評被害って。
「あぁ、風評被害ですから彼らは何の害も無いんですがね、人間達はゴブリン族やオーク族を見つけたら何故か皆殺しにするんですよ。女子供も関係無く。ゴブリン族は手先が器用でゴブリン製の木工細工は有名ですし、オーク族は気性が穏やかな者が多く、農作業や力作業の手伝いによく来てくれます。殺す意味が分かりません。
鬼火族はランタンに閉じ込めて軒先に吊るせば灯り代わりになるし淀みが家に寄り付かない、とか。迷信ですから軒先に吊るしたって効果は全くありませんよ。家猫族や獣人族、人魚族、エルフ族はその見目の良さから奴隷や愛玩用としてよく連れ去られます。カーミラの女郎蜘蛛族なんて反物目当てにしょっちゅう倉を人間達に襲撃されてますし。嘆きの妖精は泣き声がうるさいというだけで殺されます。」
うわぁ…。灯りと魔除け代わり…。バンシーなんてただ泣いてるだけじゃん…。
この世界の人間は聞けば聞くほどクズだった。もうお腹いっぱい胸いっぱい、胃もたれしてるよ…。
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部屋のベッドに向かうと、ラヴァルさんがいそいそと地図やら本やらどっさりと用意していた。すごいウキウキしてる…。
ギルミアさんはベッドの上にそっと繭ごと置いてくれた。先ほどのやり取りが無かったかのように「じゃあね」と言って部屋を出ていった。
「まずは、魔族の歴史からにしましょうか。この間も説明は一部しましたが、もっと詳しくやりましょう。」
原初の女神ガイアはこの世界を創造した。神の一つ柱で神と言ってはいるが、いうなれば世界、大地そのものである。人間や怪物など生きているもの全て皆等しくガイアの子であるとされる。
世代を経る毎に怪物はガイアの能力を持つものと持たないものに別れた。能力を持たないものは怪物と区別し、動物と呼ばれた。高い知能と身体的特徴を持つものは、人間や怪物と区別し、魔族と呼ばれた。
魔族達は高い能力、長い寿命、頑丈な身体を脈々と受け継いでいったが繁殖能力だけはとても低かった。寿命が短い人間だけは文化の発展と共に桁違いにその数を増やしたが、世代を経る毎にガイアから受け継いだ能力を持つ者は少なく、またその力も弱くなっていった。そして人間たちの研究が進み、ガイアの能力を使う源を「魔力」と呼び、魔力が低い者がその能力を無理に使うと、魔力使用後に有毒な残りカス「淀み」が出ることが分かってきた。さらに研究が進み、妖精族含む一部の魔族、薬効を持つ動植物、ごく僅かな一部の人間に淀みを浄化する能力を持つ者がいることが分かった。その浄化の能力を持つ者が浄化をしても数を増やした人間達の淀みを生み出す速さには到底叶わず、淀みは増える一方だった。浄化のスピードは小さな水溜まり一つ浄化するのに数か月~数年かかるほどだった。
また時折異世界からの住人がやって来る事があったが、この頃からこちらから意図的に異世界人を呼ぶ事も出来るようになった。
一人の人間の研究者が、浄化能力を持つ者の身体の一部を淀みに犯された大地に埋めると、その土地は一晩で浄化され、埋めた一部が朽ちるまで大地は淀みに犯される事が無いと発表した。異世界人は特にその浄化能力が高い、とも。この発見は偉大だと持て囃された。
これが後に悲劇を生んだ。
魔族達も淀みを発生させるがその量は極僅かで、また頑丈な身体を持つため淀みの影響をほとんど受けず、浄化の能力を持つものを保護して増やしていこうと考えた。だが淀みの影響を強く受ける人間達は、こぞって浄化能力を持つものや淀みに犯されていない土地を求めて奪い合いを始めた。
ユニコーンやドリアード、人魚族、妖精族、ドラゴン族、異世界人は全身の血肉が有用であったがために、住処を追われ、捕まれば生きたまま羽根や手足をもがれ、バラバラにされて土地に撒かれた。一つ目族は一つしかない目玉を抜かれ、ヘカトンケイル族(百の腕を持つ巨人)もその腕を全てもがれた。闇ルートでは捕まったものたちの血や腕、時には心臓までもが高額で売られることもあった。
力の強い種族も妻や子供が人質に取られ、人間の残虐で卑劣な手段の前に次々と犠牲になっていった。そうして魔族は人間と対立した。
浄化の能力を持つ人間は性別を問わず常に厳しく監視・監禁された。その能力を国の為だけに使い、その能力を持つ人間を次代に残す為、複数の人間と無理矢理娶わせるなど非道なやり方がなされた。
それを止めたのが、四宮 守 という一人の異世界人だった。彼も私と同じような目に合いながら、彼が得たものは「誰よりも賢い知恵」だった。彼は誰よりも上手く相手を出し抜き、切り抜けたいと強く願ったから。ガイアを目覚めさせ真名による誓約を生み出し、人間達に利用されることなく魔族達を守るためその身を湖へと沈ませた。ガイアの加護により亡骸は永遠に朽ちることは無い。だからこそ彼の身体が魔族領にある限り、永久的に魔族領では淀みは発生しない。数百年経った今も魔族の恩人として語り継がれているのは、それら全てをたった一人で為したから。
「……という訳です。真名のからくりが人間側にバレてからは、対魔族・異世界人にも非常に有効ですから悪用されまくってます。守の死後、ガイアはまた眠りにつき助力は願えませんから、真名を教えないという対策しか取れません。
さらに、魔族側はその身体的特徴や種族の特性によって浄化とは関係なく人間に奴隷として拐われたり、風評被害で村を滅ぼされ皆殺しにされたり倉を奪われたりしています。」
うわ、人間えげつな…。泥棒とかどんだけ貪欲なの…。しかも風評被害って。
「あぁ、風評被害ですから彼らは何の害も無いんですがね、人間達はゴブリン族やオーク族を見つけたら何故か皆殺しにするんですよ。女子供も関係無く。ゴブリン族は手先が器用でゴブリン製の木工細工は有名ですし、オーク族は気性が穏やかな者が多く、農作業や力作業の手伝いによく来てくれます。殺す意味が分かりません。
鬼火族はランタンに閉じ込めて軒先に吊るせば灯り代わりになるし淀みが家に寄り付かない、とか。迷信ですから軒先に吊るしたって効果は全くありませんよ。家猫族や獣人族、人魚族、エルフ族はその見目の良さから奴隷や愛玩用としてよく連れ去られます。カーミラの女郎蜘蛛族なんて反物目当てにしょっちゅう倉を人間達に襲撃されてますし。嘆きの妖精は泣き声がうるさいというだけで殺されます。」
うわぁ…。灯りと魔除け代わり…。バンシーなんてただ泣いてるだけじゃん…。
この世界の人間は聞けば聞くほどクズだった。もうお腹いっぱい胸いっぱい、胃もたれしてるよ…。
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