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突然スタートさせられた異世界生活

そうだったのか

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異世界から来たとはいえ同じ人間。人間でいることが申し訳なくなってくる…。気分を変えたくて飲み物が飲みたいなぁと周りを見渡すと、いきなり手の中にコップが現れた。そして突然コップに中身が出現した。ご丁寧にストロー付き…。驚いて目を白黒させていると、ラヴァルさんはどこかに向かって「ありがとうございます。助かります。」って声をかけている。

何事!?だれ?いや、有難いんだけども!

家事手伝い妖精シルキーですよ。古い名のある屋敷や家人が善良であると勝手に家に住み着いて掃除とか家事を手伝ってくれるんですよ。お礼に夜寝る前に暖炉の上に甘いホットミルクを一杯置いておくのが礼儀なんです。
シルキーと仲良くなると、嘆きの妖精バンシーを家に招く事があるんです。赤ん坊や幼い子供がぐずれば泣き止ませてくれますし、その家人が亡くなる事を予知したら泣いて知らせてくれることがあります。お礼はホットチョコレートですね。どちらの種族も子供が産まれた主婦に絶大な人気がありますね。どちらの種族もものすごい恥ずかしがり屋ですから姿は見せませんが、この屋敷にもいますよ。」

家政婦さんに子守り…。危篤時のアラーム付き…。しかも賃金はホットミルクとホットチョコレートを毎晩一杯のみ。なのに泣き声がうるさいってひどすぎない…?

胸焼けを起して、シルキーから貰った青色ジュースを一気に飲む。オレンジジュースだった。

「それであなたがいた人間の村は恐らく、守もいた事のあるネイビス王国にあります。あそこは奴隷制がありますから。闇ルートで手に入らない物はないとまで言われているほどです。」

やりたい放題の国ってわけか。ちゃんと取り締まろうよ…。治安悪いじゃん。

「名前を聞かれませんでしたか?異世界人はかなり高額な懸賞金がかかっています。善良な村人を装って売って金にするなんてザラに聞く話です。」

それ、私の事ですね…。

「あなたが発見された時に交わされた言葉も想像がつきますよ。
『いたぞ!異世界人だ!!捕まえろ!!』
『金になるぞ!!逃がすな!!』
『真名を何としても聞き出せ!!』
とかそんなところでしょう。」


「大陸共通語の読み書き教えましょうか?奴らと会話なんてしたくもないでしょうが覚えておいて損はありませんよ?魔族もそれぞれの種族で使う言葉は様々なんです。人型では発声できなかったり聞き取れない音域だったりしますから、そちらも面白いですよ?」

敵を知り己を知れば百戦危うからず、敵情視察も大事だってお姉ちゃんが言ってた。あの国の人の顔なんて見たくないし、むしろ呪われて勝手に死んでくれればいいのにとさえ思っている。でもきっと必要になるだろうという予感がした。

魔族の言葉は凄く面白そうだけど、私の前に一つの壁が立ちはだかっているのを忘れてはいけない。

(聞き取りが出来ないんです…。)
ヒアリングが絶望的なんです…。母国語でさえ聞き間違いが酷い。聴力は問題ないのに。

「耳は聞こえてますよね?」
ラヴァルさんが訝しげに聞かれた。

(聴力に問題はないんです…)
違うと首を横に振る。きっとやり始めたらラヴァルさんも痛感すると思う。すぐに。ほんとすぐに。

(よろしくお願いします)
と頭を下げ、大陸共通語も魔族の言葉も教わることにした。


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