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突然スタートさせられた異世界生活

無計画な一本釣り

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もう少しつつきたいけど、命令し慣れてるような傲慢さを維持するためには口数を出来るだけ減らしたい。言葉少なに指示する様って格好良くない?一言で釣り上げられるパワーワードとかないかな…?う~む、中々難しいな。

「聖女様の世界では秘匿されるような国宝だったのですね?それならば残念ですが致し方ありません…。ですが異界の話を聞いた、と他の者に自慢したいのです。どんな話でも構いませんので、お聞かせ願えませんか。」

本当にしつこいな。何か話さないと引き下がらないつもりか。面倒だなー、こいつ。

「お前にも、この世界にも、勿体ない」

ちょっと強調して区切って言って見たら、皇太子が面白い反応を見せた。
顔は一見笑ってるように見えるけど、目線はキツく額に青筋が立っている。もうそろそろ本性出してくれないかな?頭も回るようには見えないし、堪え性もなさそうだし。

すると皇太子が一度大きくため息をついてすぐに本性を現した。

「ねぇ、聖女。きみ、自分がどうやってこの世界に来たか知りたくない?自分の家に帰りたくはない?それなら、僕にどんな態度取るべきか。分かるよね?」

私は静かに沸き上がる怒りを抑え、ただ真っ直ぐ皇太子を見つめた。皇太子は嫌な笑いを浮かべながら言った。

「面倒くさいことはやめにしよう。僕が君をこの世界に呼んだんだよ。まぁ、多少のミスはあったけれどね。だってこのままじゃ国が滅ぶ危険だってあったし、僕の功績にもなるしね。君をこちらで保護しようと言うのだから感謝してほしいくらいだよ。」

それでも私は最初の姿勢を崩さなかった。弱味も涙も見せたく無かった。

「それと、いい加減にその警戒解いてくれないかい?いつまでもその態度だと話が進まないし迷惑なんだ。」
目の前のきらきらしい青年は自分の言いたいことだけ言ってため息をつきながら、落ちこぼれのどうしようもない生徒を前にした教師のように呆れた表情を隠しもせず、ララに言い放った。

(こいつが私から全部奪ったのか…)
少女は無表情で悟らせないように、腹の中はマグマのように煮えたぎっていた。

私が何も言わないのを見るや、皇太子も私の態度を崩したいからか、勝手に色々話し始めた。

「やっぱり召喚されてすぐに回収出来なかった事を怒っているのかい?それには理由があったんだよ。聖女は二人一組で召喚されるはずだったんだけど、梓が召喚されてすぐに召喚陣の一部を踏んで消してしまってね、もう一人の聖女の座標が定まらなくなってしまったんだよ。まぁ、でも多少時間はかかったけど回収出来たし、僕としても助かったよ。面目が潰れるところだったんだ。」

たったそれだけ。うっかり召喚陣を踏んだから。

それだけの理由で私は血反吐を吐いて泥水啜って生きていたのか。

タイミングさえ違えば、あの地獄にいたのは私ではなかった?

目に映る全てを消し去ってしまいたかった。自分を取り囲む異世界の物 ーー空気でさえーー 全てが厭わしかった。




その間、ラヴァルさんは無表情で事の成り行きを見ていた事にこの時の私は気付けなかった。


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