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突然スタートさせられた異世界生活
加速する復讐~(私だけど)私じゃないって言ってるじゃん~
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「私は、この世界の誰も、救わない。」
「貴様、それでも聖女か!!いいか、皇太子殿下の治療は絶対だ!来なければ、私が引き摺ってでも連れていくからな!!」
言うたいことだけ言って、侍従は部屋からどすどすと出ていった。
溜め息しかでない。たかが3日でもう根を上げているのか、あれは。いつまで正気でいられるかな?ある意味楽しみだ。
「ララランド様、明日以降追い返すならお任せ下さい。何人兵士を連れて来ようと守り抜きまから、ご安心下さい。」
ガーラさんてばなんて素敵な人なの…!それに比べて、あの侍従はガーラさんの爪の垢を煎じて飲むべきだね。
「嫌なことはささっと忘れてお昼に致しましょう。」
ガーラさんの一声でシルキーとバンシーもお昼の準備に取り掛かる。そして、今日も素晴らしく美味しいスープを半分ほど飲み干した所で、また耳障りな騒がしい音がした。
「いるのは分かっているんだ!!早く来んか!!」
そういえばこのおじさんの名前を知らないな。それに、ついさっき追い払ったはずだけど。
何事かと思って顔を出すと、そこは既に騎士8名を制圧済みだった。残されたのは侍従1人。1人だけ残されてこれだけ喚けるのは凄い。
「貴様!!皇太子殿下がお呼びだと言ったはずだ!!なぜさっさと来ないのだ!!さぁ、皇太子殿下の元へ行くぞ!!」
このおじさんへの反抗心と、皇太子の状態を知りたい好奇心の間で揺れ動く。
悩んだ末、好奇心に負けて行くことにした。
王宮の廊下は広いし高さもあるため羽を広げて飛んでいく事は出来るが、通行人をなぎ倒して進むわけにはいかないので歩くしかない。そして私のデブエットはあまり芳しくないので、長距離の移動になるのでバンシーにお姫様抱っこで運ばれる訳だ。
豪華な部屋の前に着くと、中から怒鳴り声が聞こえてくる。言われなくてもあのアホだと分かる。
「何故まだ能力を発揮できないんだ!!まさかまだ傷も治せないなんて!!何なら君は出来るんだ!!聖女だろう!?」
寝不足と怪我のせいでキャラがブレたオウジ様と麗しの聖女様じゃありませんか。
「ご機嫌よう」
私の声に二人ともハッとしてこちらを見る。皇太子はベッドにうつ伏せになり、上半身は包帯でぐるぐる巻きにされ、胸元にはクッションがひいてある。包帯で覆われているため傷の程度は分からないが、少し血が滲んでいて、ある程度傷の深さが予想出来る。
皇太子が寝ているベッドの端に辿り着くと、皇太子の顔は隈が酷く、髪も振り乱していて怖い。目がギラついて別人のようだ。
「っ貴様のせいだろう、ララランド!!なぜ僕にこんなことをするんだ!!早く治せ!!」
「…ララランド?」
と私が現れてやや安堵したような表情の梓。
「名乗っていなかったっけ?ここではララランドって名乗っているの。」
「それと殿下。殿下がそうなったのは私のせいではないと言っているではないですか。治せるのはそちらの聖女様ではありませんか。」
「そこの能無しが治療できないのだから、お前しかいないだろう!!早くするのだ!!こうしている間にも我が国の民は死んでいっているのだ!!平民貴族関係無く、既に国民の4割以上が犠牲になった!貴様はどうとも思わないのか!!」
「ふぅん?ねぇ、梓、貴方顔色が悪いわ。侍女の皆も。私がいるから少し休んで来たら?ね?休む事も必要よ」
そうして無理やりこの皇太子と二人になる。
「ねぇ。この先ずっと続くものだと思っていた物が突然奪われて、理由もなく傷付けられるってどんな気持ち?」
「貴様、何を言っている!?やはり、お前の仕業だろう!?私に何をした!!」
「やっぱりまだ理解出来ないか。もう少しかな」
私はそれだけ言って部屋を出た。
◇◇◇◇◇
次の日からもあの侍従から矢のように皇太子を治療しろと催促されたが、治癒能力はないと言い張って護衛達に追い返して貰っていた。
「何か面白そうな事をやっていますね?ララ」
久しぶりにラヴァルさんが訪ねてきた。
にっこり笑顔で黙殺する。何か話すとボロが出そう。どうせ色々ばれてるんだろうけど。
「私の方もようやく片付いてきましたよ。さっさと吐けば楽になれたものを。人間はしぶといと思っていたんですが、記録に到底及ばないなんて…。」
何にショックを受けているのかさっぱり分からない。
「それで、人間はどんな隙を突いていたんですか?」
「催眠をかけていたんですよ。魔族領に入ると思い出して、もう一度人間領に戻ると忘れるようにして。道理でいくら本人を尋問しても成果が得られない訳です。分からないようになっているんですから。その可能性を考慮すべきでしたね。」
「催眠は除外していたんですか?」
「悔しい事にその通りです…。催眠をかけられる人はかなり限られますから、すぐバレますし。それに1人ずつかけなければいけませんし、催眠の度合いも人によってまちまちですから、効率が恐ろしく悪いんですよ。それに魔族領の襲撃にはかなりの人数の人間がいましたから、そんな原始的で効率の悪い方法を使っているとは思いもよらず…。」
催眠なんてよく分からない不確かなものを信用するなんてかなりのリスクがある。本当にやってのけるとは思わないだろう。もっと頭を使った小難しい方法だとばかり思ってた。
「それでララの方も収穫があったんですよね?何せこの国の民の約半数が死んだとの噂を聞くほどですから。」
「えぇ。嬉しいことに。」
あ。うっかり返事しちゃった…。
「それと、今回の人間達が次々に死んでいくのと同じ現象が魔族領でもおきているんですよ?今のところ、下級魔族中心ですが。」
何、それ。
「貴様、それでも聖女か!!いいか、皇太子殿下の治療は絶対だ!来なければ、私が引き摺ってでも連れていくからな!!」
言うたいことだけ言って、侍従は部屋からどすどすと出ていった。
溜め息しかでない。たかが3日でもう根を上げているのか、あれは。いつまで正気でいられるかな?ある意味楽しみだ。
「ララランド様、明日以降追い返すならお任せ下さい。何人兵士を連れて来ようと守り抜きまから、ご安心下さい。」
ガーラさんてばなんて素敵な人なの…!それに比べて、あの侍従はガーラさんの爪の垢を煎じて飲むべきだね。
「嫌なことはささっと忘れてお昼に致しましょう。」
ガーラさんの一声でシルキーとバンシーもお昼の準備に取り掛かる。そして、今日も素晴らしく美味しいスープを半分ほど飲み干した所で、また耳障りな騒がしい音がした。
「いるのは分かっているんだ!!早く来んか!!」
そういえばこのおじさんの名前を知らないな。それに、ついさっき追い払ったはずだけど。
何事かと思って顔を出すと、そこは既に騎士8名を制圧済みだった。残されたのは侍従1人。1人だけ残されてこれだけ喚けるのは凄い。
「貴様!!皇太子殿下がお呼びだと言ったはずだ!!なぜさっさと来ないのだ!!さぁ、皇太子殿下の元へ行くぞ!!」
このおじさんへの反抗心と、皇太子の状態を知りたい好奇心の間で揺れ動く。
悩んだ末、好奇心に負けて行くことにした。
王宮の廊下は広いし高さもあるため羽を広げて飛んでいく事は出来るが、通行人をなぎ倒して進むわけにはいかないので歩くしかない。そして私のデブエットはあまり芳しくないので、長距離の移動になるのでバンシーにお姫様抱っこで運ばれる訳だ。
豪華な部屋の前に着くと、中から怒鳴り声が聞こえてくる。言われなくてもあのアホだと分かる。
「何故まだ能力を発揮できないんだ!!まさかまだ傷も治せないなんて!!何なら君は出来るんだ!!聖女だろう!?」
寝不足と怪我のせいでキャラがブレたオウジ様と麗しの聖女様じゃありませんか。
「ご機嫌よう」
私の声に二人ともハッとしてこちらを見る。皇太子はベッドにうつ伏せになり、上半身は包帯でぐるぐる巻きにされ、胸元にはクッションがひいてある。包帯で覆われているため傷の程度は分からないが、少し血が滲んでいて、ある程度傷の深さが予想出来る。
皇太子が寝ているベッドの端に辿り着くと、皇太子の顔は隈が酷く、髪も振り乱していて怖い。目がギラついて別人のようだ。
「っ貴様のせいだろう、ララランド!!なぜ僕にこんなことをするんだ!!早く治せ!!」
「…ララランド?」
と私が現れてやや安堵したような表情の梓。
「名乗っていなかったっけ?ここではララランドって名乗っているの。」
「それと殿下。殿下がそうなったのは私のせいではないと言っているではないですか。治せるのはそちらの聖女様ではありませんか。」
「そこの能無しが治療できないのだから、お前しかいないだろう!!早くするのだ!!こうしている間にも我が国の民は死んでいっているのだ!!平民貴族関係無く、既に国民の4割以上が犠牲になった!貴様はどうとも思わないのか!!」
「ふぅん?ねぇ、梓、貴方顔色が悪いわ。侍女の皆も。私がいるから少し休んで来たら?ね?休む事も必要よ」
そうして無理やりこの皇太子と二人になる。
「ねぇ。この先ずっと続くものだと思っていた物が突然奪われて、理由もなく傷付けられるってどんな気持ち?」
「貴様、何を言っている!?やはり、お前の仕業だろう!?私に何をした!!」
「やっぱりまだ理解出来ないか。もう少しかな」
私はそれだけ言って部屋を出た。
◇◇◇◇◇
次の日からもあの侍従から矢のように皇太子を治療しろと催促されたが、治癒能力はないと言い張って護衛達に追い返して貰っていた。
「何か面白そうな事をやっていますね?ララ」
久しぶりにラヴァルさんが訪ねてきた。
にっこり笑顔で黙殺する。何か話すとボロが出そう。どうせ色々ばれてるんだろうけど。
「私の方もようやく片付いてきましたよ。さっさと吐けば楽になれたものを。人間はしぶといと思っていたんですが、記録に到底及ばないなんて…。」
何にショックを受けているのかさっぱり分からない。
「それで、人間はどんな隙を突いていたんですか?」
「催眠をかけていたんですよ。魔族領に入ると思い出して、もう一度人間領に戻ると忘れるようにして。道理でいくら本人を尋問しても成果が得られない訳です。分からないようになっているんですから。その可能性を考慮すべきでしたね。」
「催眠は除外していたんですか?」
「悔しい事にその通りです…。催眠をかけられる人はかなり限られますから、すぐバレますし。それに1人ずつかけなければいけませんし、催眠の度合いも人によってまちまちですから、効率が恐ろしく悪いんですよ。それに魔族領の襲撃にはかなりの人数の人間がいましたから、そんな原始的で効率の悪い方法を使っているとは思いもよらず…。」
催眠なんてよく分からない不確かなものを信用するなんてかなりのリスクがある。本当にやってのけるとは思わないだろう。もっと頭を使った小難しい方法だとばかり思ってた。
「それでララの方も収穫があったんですよね?何せこの国の民の約半数が死んだとの噂を聞くほどですから。」
「えぇ。嬉しいことに。」
あ。うっかり返事しちゃった…。
「それと、今回の人間達が次々に死んでいくのと同じ現象が魔族領でもおきているんですよ?今のところ、下級魔族中心ですが。」
何、それ。
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