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空を満たす何か
私を満たすものは
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「何処に行こうかの。」
『何処へでも!』
そんな会話をした後。
『ララ、血塗れ。着替え、しないと。』
「何処かで手に入れないとの。さて、どこが良いか…。ふぅむ。」
『魔族領!そこなら、血塗れ、あんまり、気にされない。』
「確かにそうじゃの。では、背中に翼がある種族は……、妖精族の所にしようかの。そこならララにあう服もあろうて。」
妖精族の服はオーガンジーを重ねたような服で、緑とピンクのグラデーションだった。
『ララ。似合う。これでよし!』
「さぁ、次はどうしようか。ヘカトンケイル族の所でハンドサインで遊ぶのもよし。ドラゴン族の幼竜が生まれたはずじゃから会いに行っても良いの。あぁ、キュクロプス族と視力勝負しても面白いのぅ。」
『ヘカトンケイルのとこ。岩場。でも、気の良い、人たち。きっとララも、楽しい。』
「あいたっ!!こら、ツニート!!尻尾を踏むでない!いつも下を見て歩けと言っておろうが!!あぁっ、儂の尻尾が千切れておる…。」
私は、二人を会話をただぼんやりと聞いていた。
そうして二人は物言わぬ私を色々な所に連れて行った。
そこで出会う人達は、脱け殻のようになって挨拶を返しもしない私にも温かい言葉をかけていった。
「この出会いに感謝を。」
「私も人間に主人を目の前で殺されたのよ。先に逝った主人もきっと今の貴方と同じ気持ちだったのね。家族を残してきてしまった、なんて。」
「貴方の家族はどんな人だった?立派な人達なのだろう?そんな人達が貴方を育てたんだ。その人達にとって自分は自慢の娘であると、どんな状況でも生き抜いてみせたと、もっと自分を誇るといい。」
「素敵なお嬢さん。少し頑張りすぎちゃったのね。」
「儂の娘は、人間に捕まるくらいなら一人で立派に死んでみせるといって天晴れな最期を迎えたんだ。だが貴方のように生きてさえ居てくれたら、と時々思うよ。」
「長い人生、生きていれば色々ある。刻が満ちればまたいずれ前を向けよう。焦ることはない。」
「きっと貴方のお母様もこう言ったと思うわ。生きていてくれてありがとう、と。」
そんな言葉が少しずつ私を満たしていくような気がした。
なぜ見ず知らずの私に、皆そこまで優しく話しかけてくれるのか不思議だった。
ドラゴン族の里には、ケットシー族が身を寄せている。自分達だけでは人間から種族を守りきれないと雑用を申し出る代わりに庇護を求めたらしい。
そこで暫くの間、世話になることになった。
温かい言葉をかけてもらううち、ぽつりと私の中から言葉が溢れた。
「いえに、かえりたかった。」
誰かに返事を返して欲しい訳では無かった。でも律儀に答えてくれるケットシー族とドラゴン族の女性達がいた。
「そうね。家族に会いたいと望むのは当然の事よ。」
「でもかえれなかった。かえるほうほうを、つぶされてた。」
「帰る方法を潰した奴はちゃんとぶちのめしたかい?」
「だから、このてで、ころした。
それにしねば、たましいだけでもかえりたかったばしょに、かえれるとおもったの。」
「死んでいたら、こうして貴方と言葉を交わせなかったわ。」
「ぜんぶかかえてることにつかれたの。でも、しねなかった。ツニートがとめたから。」
「同じ母として言わせてもらうと、私はどんな理由でも貴方が生きている事が嬉しいよ。私の一番最初の卵は孵らなかった。見送る時は身を切られるようだったんだ。同じ思いを貴方の母君にさせなくて良かった。」
「もうこのせかいにいたくない。しねないなら、どうすればいい?もうわからないの。」
「そうね。私も将来何を成すか?と聞かれたら分からないと答えるわ。明日の事すら良い日になるか最悪な日になるかなんて誰にも分からないもの。難しく考えてはダメよ?」
「…この世界は嫌いかい?」
「…きらい。いたいのもくるしいのももういや。もうなにももってないのに、これいじょううばわないで。」
綺麗な物は綺麗なままだから受け入れられるのだ。一度汚れてしまえば再び美しい状態には戻れない。私の犯した罪も消えず、何も知らない無垢だった楓にはもう戻れない。
久しぶりに思い切り声をあげて泣いた。人目も憚らず泣いた。やっと泣きたいだけ泣けた。
私の呟きに返事をしてくれた二人の女性は私が泣き止むまで、そっと私を抱き締めてくれた。お母さんの抱擁とは全然違うのに、お母さんと同じ温かさだった。
そこからだったと思う。私が少しずつ変わったのは。
『何処へでも!』
そんな会話をした後。
『ララ、血塗れ。着替え、しないと。』
「何処かで手に入れないとの。さて、どこが良いか…。ふぅむ。」
『魔族領!そこなら、血塗れ、あんまり、気にされない。』
「確かにそうじゃの。では、背中に翼がある種族は……、妖精族の所にしようかの。そこならララにあう服もあろうて。」
妖精族の服はオーガンジーを重ねたような服で、緑とピンクのグラデーションだった。
『ララ。似合う。これでよし!』
「さぁ、次はどうしようか。ヘカトンケイル族の所でハンドサインで遊ぶのもよし。ドラゴン族の幼竜が生まれたはずじゃから会いに行っても良いの。あぁ、キュクロプス族と視力勝負しても面白いのぅ。」
『ヘカトンケイルのとこ。岩場。でも、気の良い、人たち。きっとララも、楽しい。』
「あいたっ!!こら、ツニート!!尻尾を踏むでない!いつも下を見て歩けと言っておろうが!!あぁっ、儂の尻尾が千切れておる…。」
私は、二人を会話をただぼんやりと聞いていた。
そうして二人は物言わぬ私を色々な所に連れて行った。
そこで出会う人達は、脱け殻のようになって挨拶を返しもしない私にも温かい言葉をかけていった。
「この出会いに感謝を。」
「私も人間に主人を目の前で殺されたのよ。先に逝った主人もきっと今の貴方と同じ気持ちだったのね。家族を残してきてしまった、なんて。」
「貴方の家族はどんな人だった?立派な人達なのだろう?そんな人達が貴方を育てたんだ。その人達にとって自分は自慢の娘であると、どんな状況でも生き抜いてみせたと、もっと自分を誇るといい。」
「素敵なお嬢さん。少し頑張りすぎちゃったのね。」
「儂の娘は、人間に捕まるくらいなら一人で立派に死んでみせるといって天晴れな最期を迎えたんだ。だが貴方のように生きてさえ居てくれたら、と時々思うよ。」
「長い人生、生きていれば色々ある。刻が満ちればまたいずれ前を向けよう。焦ることはない。」
「きっと貴方のお母様もこう言ったと思うわ。生きていてくれてありがとう、と。」
そんな言葉が少しずつ私を満たしていくような気がした。
なぜ見ず知らずの私に、皆そこまで優しく話しかけてくれるのか不思議だった。
ドラゴン族の里には、ケットシー族が身を寄せている。自分達だけでは人間から種族を守りきれないと雑用を申し出る代わりに庇護を求めたらしい。
そこで暫くの間、世話になることになった。
温かい言葉をかけてもらううち、ぽつりと私の中から言葉が溢れた。
「いえに、かえりたかった。」
誰かに返事を返して欲しい訳では無かった。でも律儀に答えてくれるケットシー族とドラゴン族の女性達がいた。
「そうね。家族に会いたいと望むのは当然の事よ。」
「でもかえれなかった。かえるほうほうを、つぶされてた。」
「帰る方法を潰した奴はちゃんとぶちのめしたかい?」
「だから、このてで、ころした。
それにしねば、たましいだけでもかえりたかったばしょに、かえれるとおもったの。」
「死んでいたら、こうして貴方と言葉を交わせなかったわ。」
「ぜんぶかかえてることにつかれたの。でも、しねなかった。ツニートがとめたから。」
「同じ母として言わせてもらうと、私はどんな理由でも貴方が生きている事が嬉しいよ。私の一番最初の卵は孵らなかった。見送る時は身を切られるようだったんだ。同じ思いを貴方の母君にさせなくて良かった。」
「もうこのせかいにいたくない。しねないなら、どうすればいい?もうわからないの。」
「そうね。私も将来何を成すか?と聞かれたら分からないと答えるわ。明日の事すら良い日になるか最悪な日になるかなんて誰にも分からないもの。難しく考えてはダメよ?」
「…この世界は嫌いかい?」
「…きらい。いたいのもくるしいのももういや。もうなにももってないのに、これいじょううばわないで。」
綺麗な物は綺麗なままだから受け入れられるのだ。一度汚れてしまえば再び美しい状態には戻れない。私の犯した罪も消えず、何も知らない無垢だった楓にはもう戻れない。
久しぶりに思い切り声をあげて泣いた。人目も憚らず泣いた。やっと泣きたいだけ泣けた。
私の呟きに返事をしてくれた二人の女性は私が泣き止むまで、そっと私を抱き締めてくれた。お母さんの抱擁とは全然違うのに、お母さんと同じ温かさだった。
そこからだったと思う。私が少しずつ変わったのは。
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