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突然スタートさせられた異世界生活
全てを放り投げて
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聖女も皇太子も、私が殺した。豪華だった部屋はどこもかしこも血の海だった。ワンピースから滴る血が気持ち悪い。
護衛も侍女も部屋の外で待機してもらっていたが、そこから出て誰かと話すのは酷く億劫だった。
ラヴァルさんが何をしようとしているのかも、もうどうでもいい。
そしてそのままテラスから飛び立った。目的地なんてない。行きたい場所もない。ただ、この国には居たくない。ただその一点に突き動かされて、どこかを目指す。
ポケットが熱くなった気がして見てみると、連絡用にと渡されていたカーミラさんの元複眼があった。ずっと忘れていたが、それもどこかに放り投げた。
城壁から離れた少し開けた所に、木が一本だけ生えている所があった。そこで一度休む事にした。
自分を縛るものはもう何もなく、ここでもう終わりにしようと思った。死んでしまえば、自分の望む世界に帰れないだろうか。
ワンピースの裾を裂きロープ状にし、輪っかを作る。後はほどけないように木にしっかりくくりつける。
作った輪っかに飛び込み、首が締まる。自分の望む形ではなくとも、せめて家族が生きている世界で私も生きていきたかった。
こんな世界、もういたくない。
目を閉じて、終わりの時を待つ。
『ラーーーーラァーーーーー!!!!』
ぶちぃっ。
引き裂かれる音がしたと思ったら、首の圧迫が無くなった。と同時にその勢いのまま、空中に投げ出された。綺麗な放物線を描いて、べちゃっと地面とキッスした。
「ゲホゲホゲホッ!!」
私を投げ飛ばした犯人は突っ込んできた勢いを殺せず、そのまま通り過ぎて行った。だが、その背中は見覚えのある赤い老竜に乗った金髪の巨人だった。
Uターンして今度はゆっくり戻ってきて、老竜は静かに着地した。
『ララッ!ララッ!!』
そう言って、以前優しくしてくれた青年は泣きながら私を強く抱き締めた。
なぜこの青年は泣いているのか、なぜ私を抱き締めているのか分からなかった。
『ララッ!!迎え、遅くて、ごめんごめん。』
以前も同じように言っていたなぁとぼんやりと思う。
『今度は、道、間違えなかった。ちゃんと間に合って、良かった。』
「……わたし、しにたいの。……かえりたかったの。」
ぽつりと呟く。
私はツニートに抱き締められたまま、静かに涙を流す。老竜は静かに私達二人を囲むように丸くなった。
『ララを、前に助けた時、生きていてくれて、ありがと、思った。だから、今回も。生きていてくれて、ありがと。』
「…やめて。いやだ。もういや。いやなの。こんなとこいたくない…。かえして!いえにかえして……。」
ツニートはそっと私を解放して、穏やかに言った。
『追っ手、来る前に、もう少し、ここから離れよう。』
ツニートは2メートルサイズから4メートル程になり私を抱っこして、老竜に乗った。
「儂、ちょっと疲れ…。おもっ!くっ、腰が…!」
『アノーリオン、早く。』
「ぐぬぬぬぬぬっ。」
助走をつけて必死に翼をはためかせるも数十センチも浮かんでいない。
「ふんぬっ!ふんぬぅっ!ふんぬぅぅぅ~!うぅっ…。」
あ、泣いた。何度かチャレンジして、ようやくその翼は風を掴み、安定した飛行を始めた。その頃にはアノーリオンの息は完全に上がっていた。
「ツニートさんや…。行きと同じく小さくはなってくれんのかのぅ?儂、ちょっと辛いなー?重たいなー?」
『窮屈。行き、急いでた。それに、元の大きさ、まだなってない。』
そんな二人が掛け合いをしていても、私は脱け殻のままだった。頭の中はなぜ死なせてくれなかったのか、それで一杯だった。それにもう自分から話しかける気力も無かった。
「さて。何処へ行こうかの。」
『何処へでも!』
アノーリオンの問いに、ツニートが元気一杯に答えた。
護衛も侍女も部屋の外で待機してもらっていたが、そこから出て誰かと話すのは酷く億劫だった。
ラヴァルさんが何をしようとしているのかも、もうどうでもいい。
そしてそのままテラスから飛び立った。目的地なんてない。行きたい場所もない。ただ、この国には居たくない。ただその一点に突き動かされて、どこかを目指す。
ポケットが熱くなった気がして見てみると、連絡用にと渡されていたカーミラさんの元複眼があった。ずっと忘れていたが、それもどこかに放り投げた。
城壁から離れた少し開けた所に、木が一本だけ生えている所があった。そこで一度休む事にした。
自分を縛るものはもう何もなく、ここでもう終わりにしようと思った。死んでしまえば、自分の望む世界に帰れないだろうか。
ワンピースの裾を裂きロープ状にし、輪っかを作る。後はほどけないように木にしっかりくくりつける。
作った輪っかに飛び込み、首が締まる。自分の望む形ではなくとも、せめて家族が生きている世界で私も生きていきたかった。
こんな世界、もういたくない。
目を閉じて、終わりの時を待つ。
『ラーーーーラァーーーーー!!!!』
ぶちぃっ。
引き裂かれる音がしたと思ったら、首の圧迫が無くなった。と同時にその勢いのまま、空中に投げ出された。綺麗な放物線を描いて、べちゃっと地面とキッスした。
「ゲホゲホゲホッ!!」
私を投げ飛ばした犯人は突っ込んできた勢いを殺せず、そのまま通り過ぎて行った。だが、その背中は見覚えのある赤い老竜に乗った金髪の巨人だった。
Uターンして今度はゆっくり戻ってきて、老竜は静かに着地した。
『ララッ!ララッ!!』
そう言って、以前優しくしてくれた青年は泣きながら私を強く抱き締めた。
なぜこの青年は泣いているのか、なぜ私を抱き締めているのか分からなかった。
『ララッ!!迎え、遅くて、ごめんごめん。』
以前も同じように言っていたなぁとぼんやりと思う。
『今度は、道、間違えなかった。ちゃんと間に合って、良かった。』
「……わたし、しにたいの。……かえりたかったの。」
ぽつりと呟く。
私はツニートに抱き締められたまま、静かに涙を流す。老竜は静かに私達二人を囲むように丸くなった。
『ララを、前に助けた時、生きていてくれて、ありがと、思った。だから、今回も。生きていてくれて、ありがと。』
「…やめて。いやだ。もういや。いやなの。こんなとこいたくない…。かえして!いえにかえして……。」
ツニートはそっと私を解放して、穏やかに言った。
『追っ手、来る前に、もう少し、ここから離れよう。』
ツニートは2メートルサイズから4メートル程になり私を抱っこして、老竜に乗った。
「儂、ちょっと疲れ…。おもっ!くっ、腰が…!」
『アノーリオン、早く。』
「ぐぬぬぬぬぬっ。」
助走をつけて必死に翼をはためかせるも数十センチも浮かんでいない。
「ふんぬっ!ふんぬぅっ!ふんぬぅぅぅ~!うぅっ…。」
あ、泣いた。何度かチャレンジして、ようやくその翼は風を掴み、安定した飛行を始めた。その頃にはアノーリオンの息は完全に上がっていた。
「ツニートさんや…。行きと同じく小さくはなってくれんのかのぅ?儂、ちょっと辛いなー?重たいなー?」
『窮屈。行き、急いでた。それに、元の大きさ、まだなってない。』
そんな二人が掛け合いをしていても、私は脱け殻のままだった。頭の中はなぜ死なせてくれなかったのか、それで一杯だった。それにもう自分から話しかける気力も無かった。
「さて。何処へ行こうかの。」
『何処へでも!』
アノーリオンの問いに、ツニートが元気一杯に答えた。
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