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空を満たす何か
色々面倒くさくなってきたな…
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カーミラさんが脅されていたからといって、同情するつもりはない。
Q. 仕方が無かったといえば罪はなくなるか?
A. いいえ。無くなりません。
情状酌量で罪は軽くなるかもしれないが、従った時点で罪は発生するものだからだ。そして罪はいつか清算しなくてはならない。勿論、再犯はなしで。
ツニートやアノーリオンの気持ち、カーミラさんの立場やら何やらと考える事が多すぎて、面倒になってきた…。
そうだ!もう面倒だし、ラヴァルさんに特攻してみちゃう?あ、ギルミアさんを同席させてみる…?う~ん、あの人役に立つ…?余計火に油注いでキャンプファイア出来る位の火柱にしそうだな…。よし、同席はなしにしよう。ラヴァルさんと二人だけで話して上手くいくことを祈るしかない。
私が動かないときっとこの事態は動かないだろう。それでは困る。異世界人を召喚する、という事すら考え付かないように、その技術や方法を記した物、果ては異世界人という言葉すら抹消したいのだ。異世界人にまつわる全てを人々の記憶からも消すことで、ようやく私達は自由になれる。召喚という言葉が無ければ、知らないものをよく分からない術を使って呼ぶなんて事も出来ない。
その為にはラヴァルさんの助けが必要だ。
そもそも数百年前に真名による制約を生み出したという彼は、どうやってガイアの助けを借りた?一人で成し遂げるには余りにも規模が大きい。
真名による制約という案、そこに神の力を借りるという案。その案はどこからもたらされたものなのか?その鍵はきっと彼が握っているに違いない。
だけど私はラヴァルさんと取引するだけのカードを持っていない。ならばどうするか?
→ 特攻しよう!
となるわけだ。小娘の私にこれ以上を望んでくれるなっていう訳で、向かうはラヴァルさんのところだ。
ただいまの時刻は夕方。丁度夕食前だし、偉大な先人はこう言っていた。『思い立ったが吉日』と。
なのでラヴァルさんの部屋まで飛んで行きます。狭い所で翼を広げてはいけませんって声は聞こえなかったことにします。きっと皆、身体能力は私よりも上だし避けるよ。
あっという間にラヴァルさんの部屋の前に着いたので、扉をノックする。
返事が聞こえたので、早速中に入る。
「こんばんは。ラヴァルさんと少し話がしたくて予定も聞かずに伺いました。すいません。今、時間を取って頂けますか?」
大分強気に攻めます。ラヴァルさんにはこのくらい分厚い面の皮が必要なんです。
「おや。勿論、構いませんよ。」
そう言われてソファに案内される。
ラヴァルさんは驚いた顔をしたものの快く応じてくれた。ラヴァルさんの部屋は赤い絨毯に黒を基調とした家具で揃えていて、それが恐ろしいまでにラヴァルさんに合っていた。
飲み物を勧められたが、ラヴァルさんの部屋にはお酒しかなかったので断った。
「それで話とは?」
「まずは王国でのこと、後始末全て押し付けてすみませんでした。目的を達成したら、全てがどうでもよくなってしまって…。それから家族への手紙を送る為に協力して頂いてありがとうございました。」
謝罪とお礼は人間関係の基本だって姉が言っていた。
「後始末と言ってもそれほどやることは無かったんですがね。まさか一言もなく姿を消すとは思いませんでした。これでも心配したんですよ?」
あれ?ラヴァルさんがここに来た当初より優しくなってるぞ?おかしい…。
「それは、ラヴァルさんの目的を達成するために私が必要ということですよね?」
ラヴァルさんはやれやれとでも言いたげに溜め息をつきながら言った。
「…それはカーミラから聞いたんですか?」
「いいえ。ギルミアさんからです。」
「全く…。思い通りにいかないことばかりで嫌になりますねぇ。」
ここでラヴァルさんの雰囲気ががらっと変わった。今までがぬるま湯だったとしたら、急に冷たい水に入った時のような感じ。
「魔族の王になりたいと望んでいるんですか?見下されてきた上級や古代種族の人達を見返す為に?」
「そうだと言ったら?中貴方も級のクセに叶わぬ夢を見るなと言いに来たんですか?」
「いいえ。夢を見ることは誰に咎められることでもありませんから、私がとやかく言う事はありません。一つだけ質問してもいいですか?」
「ふぅん。どうぞ?」
「なぜドラゴンの里を襲ったんですか?何の罪もない卵まで徹底して襲撃したのはなぜですか?」
私は戦争をただ史実として知っているだけで、血みどろの戦争は経験したことがない。何も知らない小娘が、と言われたらそれまでだ。
「里で皆に優しくされて、正義感でも植え付けられましたか?さぞ私が憎いでしょうねぇ?
里を襲撃した理由?ドラゴン族が一番気に食わない奴らだからです。卵は生かせば後の禍根になりますから潰して当然でしょう。」
ドラゴン族は妊娠率も出生率もかなり低い。後の禍根?そりゃなるよ。だって彼女達にとって待ち焦がれた妊娠だったはずだ。長い間大変な思いしてまでそのお腹で赤ちゃん守ってきたんだよ?そんな思いして待ち望んだ赤ちゃんが卵の殻を自力で割れなかったら、我が子を諦めるしかなくなるんだよ?
「貴方ほどの頭の回る人が、なぜ力で屈服させようとするんですか?力で押さえつけるから力で反発されるんです。それが分からないはずもないですよね。」
口調こそ荒げていないものの、ラヴァルさんの瞳は怒りを宿してギラギラとこちらを睨み付けていた。
「本当に王になりたいと望んでいるんですか?貴方は王になって何を成し遂げたいのですか?」
子を失い、狂って里の奥に隠され保護されている彼女達は、未だその悪夢の中に取り残されているのだ。悪夢なら起こして覚ましてあげなければ。
Q. 仕方が無かったといえば罪はなくなるか?
A. いいえ。無くなりません。
情状酌量で罪は軽くなるかもしれないが、従った時点で罪は発生するものだからだ。そして罪はいつか清算しなくてはならない。勿論、再犯はなしで。
ツニートやアノーリオンの気持ち、カーミラさんの立場やら何やらと考える事が多すぎて、面倒になってきた…。
そうだ!もう面倒だし、ラヴァルさんに特攻してみちゃう?あ、ギルミアさんを同席させてみる…?う~ん、あの人役に立つ…?余計火に油注いでキャンプファイア出来る位の火柱にしそうだな…。よし、同席はなしにしよう。ラヴァルさんと二人だけで話して上手くいくことを祈るしかない。
私が動かないときっとこの事態は動かないだろう。それでは困る。異世界人を召喚する、という事すら考え付かないように、その技術や方法を記した物、果ては異世界人という言葉すら抹消したいのだ。異世界人にまつわる全てを人々の記憶からも消すことで、ようやく私達は自由になれる。召喚という言葉が無ければ、知らないものをよく分からない術を使って呼ぶなんて事も出来ない。
その為にはラヴァルさんの助けが必要だ。
そもそも数百年前に真名による制約を生み出したという彼は、どうやってガイアの助けを借りた?一人で成し遂げるには余りにも規模が大きい。
真名による制約という案、そこに神の力を借りるという案。その案はどこからもたらされたものなのか?その鍵はきっと彼が握っているに違いない。
だけど私はラヴァルさんと取引するだけのカードを持っていない。ならばどうするか?
→ 特攻しよう!
となるわけだ。小娘の私にこれ以上を望んでくれるなっていう訳で、向かうはラヴァルさんのところだ。
ただいまの時刻は夕方。丁度夕食前だし、偉大な先人はこう言っていた。『思い立ったが吉日』と。
なのでラヴァルさんの部屋まで飛んで行きます。狭い所で翼を広げてはいけませんって声は聞こえなかったことにします。きっと皆、身体能力は私よりも上だし避けるよ。
あっという間にラヴァルさんの部屋の前に着いたので、扉をノックする。
返事が聞こえたので、早速中に入る。
「こんばんは。ラヴァルさんと少し話がしたくて予定も聞かずに伺いました。すいません。今、時間を取って頂けますか?」
大分強気に攻めます。ラヴァルさんにはこのくらい分厚い面の皮が必要なんです。
「おや。勿論、構いませんよ。」
そう言われてソファに案内される。
ラヴァルさんは驚いた顔をしたものの快く応じてくれた。ラヴァルさんの部屋は赤い絨毯に黒を基調とした家具で揃えていて、それが恐ろしいまでにラヴァルさんに合っていた。
飲み物を勧められたが、ラヴァルさんの部屋にはお酒しかなかったので断った。
「それで話とは?」
「まずは王国でのこと、後始末全て押し付けてすみませんでした。目的を達成したら、全てがどうでもよくなってしまって…。それから家族への手紙を送る為に協力して頂いてありがとうございました。」
謝罪とお礼は人間関係の基本だって姉が言っていた。
「後始末と言ってもそれほどやることは無かったんですがね。まさか一言もなく姿を消すとは思いませんでした。これでも心配したんですよ?」
あれ?ラヴァルさんがここに来た当初より優しくなってるぞ?おかしい…。
「それは、ラヴァルさんの目的を達成するために私が必要ということですよね?」
ラヴァルさんはやれやれとでも言いたげに溜め息をつきながら言った。
「…それはカーミラから聞いたんですか?」
「いいえ。ギルミアさんからです。」
「全く…。思い通りにいかないことばかりで嫌になりますねぇ。」
ここでラヴァルさんの雰囲気ががらっと変わった。今までがぬるま湯だったとしたら、急に冷たい水に入った時のような感じ。
「魔族の王になりたいと望んでいるんですか?見下されてきた上級や古代種族の人達を見返す為に?」
「そうだと言ったら?中貴方も級のクセに叶わぬ夢を見るなと言いに来たんですか?」
「いいえ。夢を見ることは誰に咎められることでもありませんから、私がとやかく言う事はありません。一つだけ質問してもいいですか?」
「ふぅん。どうぞ?」
「なぜドラゴンの里を襲ったんですか?何の罪もない卵まで徹底して襲撃したのはなぜですか?」
私は戦争をただ史実として知っているだけで、血みどろの戦争は経験したことがない。何も知らない小娘が、と言われたらそれまでだ。
「里で皆に優しくされて、正義感でも植え付けられましたか?さぞ私が憎いでしょうねぇ?
里を襲撃した理由?ドラゴン族が一番気に食わない奴らだからです。卵は生かせば後の禍根になりますから潰して当然でしょう。」
ドラゴン族は妊娠率も出生率もかなり低い。後の禍根?そりゃなるよ。だって彼女達にとって待ち焦がれた妊娠だったはずだ。長い間大変な思いしてまでそのお腹で赤ちゃん守ってきたんだよ?そんな思いして待ち望んだ赤ちゃんが卵の殻を自力で割れなかったら、我が子を諦めるしかなくなるんだよ?
「貴方ほどの頭の回る人が、なぜ力で屈服させようとするんですか?力で押さえつけるから力で反発されるんです。それが分からないはずもないですよね。」
口調こそ荒げていないものの、ラヴァルさんの瞳は怒りを宿してギラギラとこちらを睨み付けていた。
「本当に王になりたいと望んでいるんですか?貴方は王になって何を成し遂げたいのですか?」
子を失い、狂って里の奥に隠され保護されている彼女達は、未だその悪夢の中に取り残されているのだ。悪夢なら起こして覚ましてあげなければ。
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