上 下
90 / 116
空を満たす何か

楽しく走り回ってました

しおりを挟む
話が大分ずれてきたなぁ~とは感じてはいますが、楽しいのでこのまま最後まで書ききろうと思ってます(*´∀`)エタりはしませんのでご安心下さい!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

外に立たされていたサフィーさんを解放して、アノーリオンと私に用意された小屋に向かいながらこの里に来てからのことをたくさん話した。今度こそ何も包み隠さなかった。

「森にいる者達の手助けをしていると聞いたが、平気か?カエデには世話をかけるのぅ。」

「私が勝手に首突っ込んだんだよ!…私、もう一生分苦しんだなーって思って。なら今度は誰かを飽きるほど助けたっていいじゃん?って八つ当たりのように思っただけ。
全部私のためにしたことだから本当に気にしないで。ただ、この世界に来た事に意味を見出だしたかった私の我が儘。」

「どんな理由であれ救おうと手を尽くしてくれたのであろう?礼を言う。
ラヴァルについてもそうじゃ。年甲斐もなく意地になってしまったな。すまなかったのぅ。」

そうやって眠くなるまで二人で話続けた。


翌朝。
「そういえばアノーリオン、ツニートは一緒じゃないの?」

「一緒に来たとも。」

「?……ツニートは今どこに?」

「はて。昨日はどこまで一緒におったんだったか…。あ、儂、カエデの行方を探しに来たんだった。」

思いっきり忘れてる!しかも思い出したの違うし!

急に窓が暗くなったと思ったら、窓から巨大な目玉が中を覗いていた。

「っ!!!! ツニート!!」

慌てて外に出ると、そこには拗ねまくった巨人がじっとりとこちりを半目で睨んでいた。

悲鳴を飲み込んで正解だった。後ろからやや遅れてアノーリオンも来た。というか何で私まで睨まれてんだ?

『みんな、俺のこと、忘れる。どーせ、俺なんて、デカいだけの、愚図のウスノロ……。』

「ツニートや。お前さんは愚図のウスノロではない。それにすぐに思い出したから何も問題あるまい。そう落ち込むでないわ!」

フォローになってないぃぃぃ!誰のせいで落ち込んでると思ってんだ!

『うん……。』
あんたはそれでいいんかーい!

「……何も言わずに出て来てごめんね、ツニート。」

『へーき。カエデ、里にいる、思ってた。それに森の皆、助けようとしてる、聞いた。森にいるの、強い戦士ばかり。カエデ、平気?』

機嫌を直したツニートはニコニコ顔だ。
そして森にいるのは皆強い戦士なんだよね。第一線で戦ったからこそ、心が耐えきれなかったのかな…。戦争から帰って来た人の中には心を病んだ人もいたとかなんとか聞いたことがある。

「へーき!彼女達は少しだけ、休むのが下手なだけだよ。」

「ラヴァルのことといい、カエデの思慮深さには驚かされるのぅ。
『休むのが下手なだけ』か…。確かにそうじゃなぁ!必要なのは心が癒えるまでゆっくり休むことじゃ…。あぁ、そうだとも……。彼女らはちと休むのが苦手だったのじゃ。」

そう言いながらアノーリオンは泣いていた。未だ竜族最強と呼び声高い、あの老獪な竜が人目も憚らず、嗚咽を漏らす事もなく、ただひたすら静かに涙を流していた。

その様は痛々しいと言うことすら烏滸がましいほど胸を締め付けられた。

この竜が背負っている重責はどれ程壮絶なものだったのかを垣間見た気がした。

「皆で森に行こうよ。彼女達の勇姿を見て欲しいの。彼女達なりに今も戦ってるんだよ。」

「……あぁ、そうじゃなぁ。誉めてやらんといけないのぅ。」

今回はバケツを乗せたお盆をツニートに持ってもらい、アノーリオンの背に乗って向かった。


「ねぇ。アノーリオンが森に行っていた時はどうやって食べさせてたの?吹き飛ばされなかったの?」

黒竜の戦士のオーリー、ガード、キックスさん達は吹き飛ばされる事もあるから、族長以外一定以上近づけないと言っていた。

「儂は彼女達が産まれたときから知っておるから、近くまで行けたのじゃろうと思う。やっていたのは親と同じ事でそう難しくはないのじゃ。『噛み戻し』聞いたことはあるか?」

なんか聞いたことあるかも。赤ちゃんに親が噛んで柔らかくしたのをあげるやつだよね。離乳食みたいなやつ。

あれ、竜族もやるんだ。割と野性的だね。

「アノーリオンの他に出来る人はいないの?」

ツニートが横で静かに首を振っている。あまり突っ込んで聞いちゃ埋けないやつなんだね、これ。

気まずい沈黙の中、目的地にはすぐに着いた。この中だとツニートが一番警戒されるからは私とアノーリオンが先頭して進む。

私が突き落とされた温泉が視界に入った頃、警戒して身を低くした彼女達が奥から出てきた。唸ってはいないものの、鼻に皺を寄せ歯を剥き出しにしている。

まずい、と思ったが、この時の私は妙な自信に満ち溢れていたので、おやつ入りのバケツを持ったまま彼女達の首に抱きついた。

「こんにちは。ごめんね、怖かったね。大丈夫。知っている人でしょう?思い出して。」

警戒している皆を抱きしめて大丈夫だと声をかけていく。

彼女達が落ち着いたタイミングで彼女達が寝床にしているいつもの場所の真ん中に三人で腰を下ろす。彼女達は警戒レベルは下がったものの、完全には警戒を解いていないようで、匂いを嗅ぎながら私達の周りをぐるぐるしていた。

「…見事なものじゃ。」
アノーリオンが小さく言った。

『これまで、こんなに近く、行けなかった。』
ツニートが重ねて言った。

「……ラリサ。お主、生きておったのか。皆も…。そうか……。生きていて、くれたのか。」

アノーリオンも八人全員は把握していなかったらしい。一人ずつ名前を呼び、生きていてくれた事を噛み締めているようだった。
ついでにガードさんの番が誰か聞こうと思ったが、今聞くのは野暮だろうと思い控えた。


後からこの時の事を振り返ると、どれだけ危険なことをしたのか自分で自分が恐ろしくなった。ここがジュラ○ックパークの世界ならすぐあの世行きなくらい危険だった。


戦場で生き延びるには、警戒しすぎる位で丁度良い。私の異世界ライフはとびきり物騒なのだから。









しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

無理やり召喚されたのに闇の魔女とか言われて迫害されてます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:60

番を求めて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:16

召喚された聖女の苦難

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:14

異世界トリップは期間限定らしいです。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

若妻はえっちに好奇心

恋愛 / 完結 24h.ポイント:596pt お気に入り:272

処理中です...