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空を満たす何か

風雲が勝手に急を告げてくる

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明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。皆様により多くの幸せが訪れる一年でありますように!



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時折、ふと理不尽とは何か考える事がある。

あそこまで私を追い詰めたものの正体はなんだったのか。竜の里の奥にある森で保護されている傷付いた戦士達を今もなお傷付け続けるものは何なのだ、と。

それは自らが作り出した、罪悪感や行き過ぎた責任感によるものなのか?

それとも他人が作り出した、自力では脱け出せない理に敵わない状況がそうなのだろうか?

ではそこから助かる術はあるのか?あるとしたらどんな方法なのだろうか。



里の奥の森に保護されている彼女達への手伝いを始めて一年が経った。彼女達は順調に回復を続け、今では片言ではあるものの、簡単な意志疎通は可能になった。過去の地雷を無理矢理思い出させなければ発作のようだった自傷行為も殆んどしなくなった。

どんな生き物だっていつかは置かれた環境に慣れる。だか忘れることを許さず、その感情を抱え、自分を責め続けることは本当にしんどい。私もしんどかった。ここまで長期間抱え続けられる彼女達にある種の才能さえ感じるほどだ。

「何か難しい事を考えておるようだの?」
アノーリオンに後ろから声をかけられた。考え事をしたいときは、里の外れにある丘ですることにしていた。吹き抜ける爽やかな風に当たると頭もすっきりするから、この丘は私のお気に入りスポットの一つだ。

最近は森にいた戦士達八人は体調が良いと私と一緒に里まで来るようになり、今日は一番最初に出会った青色の竜が私のお供だった。

「うん。理不尽とは何か、そこから助かる術はあるのか考えてた。」

私は鬱で苦しんでいた姉にも彼女達にもずっと己に『逃げる』という選択肢を取ってもいいのだ、と伝えたかった。その機会はついぞ無かったが。

「また随分と難しい問題だのぅ。なぜそんなに難しい問題を考えておる?」

「…何となく。ただこの世の真理に挑戦したくなっただけ。ねぇ、『逃げること』は負けだと思う?」

「いいや、負けではないとも。儂は己がもう立ち上がれないと抵抗をやめ屈した時、負けだと思っておる。逃げることは戦略の一つに過ぎん。」

「じゃあ、『自責の念』は罰になる?」

「ふぅむ…。どうかのぅ?自らを罰し続けているという意味ならそうなのかもしれん。だが罪を償えと求める相手側からすると、そうではないかもしれん。」

まぁそうだよね。感情は目に見えないし、『反省している』という言葉が口先だけかどうかなんて本人にしか分からないし。

「許すって何でこんなに難しいんだろうね?」
私は隣にいる青い竜に向かって話しかけた。

『ネー?』
一緒に首をかしげている姿は可愛い。だけどこの反応は内容を理解してないな。まだ閉ざされた質問しか出来ないからね。

「何故ならそこには己の感情が入るからのぅ。そんなに簡単に出来ればこの世に争いはないわい。のぅ、ラリサや。」
アノーリオンはラリサさんに声をかけた。

そう、この蒼い鱗が美しいラリサさん。戦士の中で一番強かったそうで、なんとガードさんの番の方でした!

「あー…。私もやったな、私刑。やられたこと以上の報復をやっちゃってたわ。」

そんな会話をしていた時だった。アノーリオンが何かに気付いたかのように身体をびくっと震わせ、里の方を見た。その表情は固く強ばっていて、怒りのようなものも感じた。侵入者とかかな?と呑気に考えていたら、アノーリオンが何も言わずに里の方にすっ飛んでいった。

「え、何?何が起きたの?」
私が声を発した時にはもうアノーリオンはいなかった。とりあえず異常事態だと思ったので、ラリサさんに森の奥に帰るよう伝え、私は不安を抱えたまま里の方に向かった。

すると、そこで見たものは。

アノーリオンとツニートに土下座する、ラヴァルさん、ギルミアさんとカーミラさんがいた。

「なに、この状況。どゆこと?」

あまりにも異様な静けさが漂う中、私の声だけが響いた。

アノーリオンもツニートもいつでも飛び掛かれるよう張り詰めている。そこにアノーリオンの厳しい声が届いた。

「この里には二度と関わるな、足を踏み入れたら殺すと言ったはずだ。今更それを破るとはどういうことだ。」
アノーリオンは言った。感情を感じさせない冷たい声が噴火直前の火山みたいに思えて、かえって恐ろしかった。

「まずはララの安否を聞かせてくれませんか。心配していたのは貴方だけではありません。連絡も無しに一年もいなくなるなんて思いませんでしたから。」

ラヴァルさんが非難するように眼鏡の奥の瞳がこちらを見据えた。

正座したまんまだけど。敵意はないことは分かるけど、体勢と発言が全くあってない。

笑いたいんだけど、笑ったら怒られるよね?

アノーリオンは今すぐこいつを殺したいですって顔してるし。









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