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空を満たす何か

なんじゃいそれ

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「異世界人だけが持つ条件があるはずなんです。」

「条件とは?」

私の言葉に、ギルミアさんが馬鹿にしたように言った。

「それが分からないから今まで誰も成し遂げられなかったんだよ。まったく。君は頭が悪いね。」

「条件が分からないからじゃなくて、今まで誰も禁止しようと行動してこなかったからでしょ。 森の賢者様は利用することしか考えてなかったようですもんね?」

私がばっさり切り捨てた。こっち来てからどんどん口が悪くなってるなぁ、私。ついでに性格も。ここまでひねくれてなかったはずなんだけど。

「ララ。喧嘩腰は良くありませんよ。」
ラヴァルさんが窘めるも、

「何で私だけ怒られるの?こいつだって煽ってきてるんだから、注意するなら両方するべきでしょ?」

あぁ、だめだ。苛々する。何故どいつもこいつも論点がずれているんだ。

「ねぇ、本当に貴方達はここに何しにきたの?今まで魔族領を回って何を見てきたの?
その態度でドラゴンの里に入ろうとしてたわけ?なら、悪いけど今すぐここから消えてくれない?」

謝る人の態度ではないし、片方しか窘めないし。裁判官はどこにいるの!両者の言い分は聞きなさいよ!

「言い過ぎでは?」
ラヴァルさんもギルミアさんも反論してくるけど、構いやしない。

「口が悪いのは認めるけど。言い過ぎ?自分の言動省みてみなよ。あぁ、腹が立つ。」

ツニートはショックからそろそろ回復したかな…。

もう私一人では(苛々が)押さえられなくなってきた。まとめて怒鳴りつけたい。あぁ、怒鳴ったらさぞかしすっきりするんだろうな。やっちゃう?そんな事を考えていると、ツニートが

『殴っていい?』
そう声をかけてきた。

「いいよ。」

ツニートの質問に食い気味に答えた。

ラヴァルさんとギルミアさんの二人が何か言う前に、ツニートは拳を振りかぶっていた。

人形が吹き飛ぶように二人は身体を九の字にして飛んでいった。

「羽虫退治したし、帰ろうか。」
私の言葉に、ツニートはこっくりと頷いた。羽虫はまたそのうち勝手に湧いてくるからね。瀕死でもカーミラさんが見つけてくれれば助かるし。

行きとは違い、辺りに吹く心地よい日差しと風を感じながらゆっくりと帰りの道を歩いた。

ツニートがぽつりと言った。
『ありがとう。カエデ、怒ってくれた。情けない。俺、言い返せなかった。言いたいこと、一杯あった、はずなのに。何言えばいいのか、分かんなくなった…。』
ツニートの目から水滴が後からどんどん溢れてくる。

この素直で純真な弟のようなツニートが私は大好きだった。

「それでいいんだよ。ツニートは一歩前進出来た。だからいいんだよ。」
私はツニートの頭を撫で回した。サイズ的に撫で回した事にも気付いてないかもしれないけど、それでも良かった。

『俺ずっと、アノーリオンと、復讐することしか、考えてなかった。俺が追い出された、あの日、皆、死んだんだ。駆けつけた時、もう、手遅れだった。もし、異端児じゃなくて、普通に産まれて、追い出されてなかったら…』

「ツニート、それは違うよ。私に言わせたら、この世界の人間も魔族も全員クレイジーで異端で野蛮だから、気にすることないし。
ツニートの一族の人達が死んだのはツニートのせいじゃなくて、さっきのあの人でなし達のせい。追い出された事を恨むんじゃなくて、死んだ人達の為にここまで心を砕いてるんだから、集落の人達は幸せだね。」

『…そっか。うん。そっか、うん。』
噛み締めるように頷くツニートが可愛い。どこまで優しいんだ、この子は。

確か小さい時に追い出されて、アノーリオンが保護したんだったよね。アノーリオンと長く一緒にいたから、アノーリオンの感情に引きずられて刷り込みのように復讐心抱いたんだと思ってたよ。ごめんね、ツニート。

そしてアノーリオンさんよ、アフターフォローはしておいて欲しかった。

あいつギルミアさんが論点ずらしてくるから腹が立って、結局あの人達が何しにきたのか分からず仕舞いになっちゃったじゃないの。謝りに来たとか言ってたけど、里で何しでかすつもりだったんだか。」

ぶちぶちと文句を言う。

土下座してたから敵意はなかったんだろうけど。言葉に敵意がある時はどーするんだ。

あの態度はそれにしても酷くない?私だけにああなのか?売り言葉に買い言葉で、更に買い言葉叩きつけちゃったけど。

ラヴァルさんを焚き付ける事に成功したから、後は母様にコンタクト取ればいいんでしょ?やり方分かんないけど。

それにしてもあの人達がお詫び行脚、ねぇ?ギルミアさんまで土下座してたんだから、よっぽど酷い目にあったんだろうね。自業自得だね。あいつはもっと反省が必要だ。森の賢者じゃなくて森の愚者でしょ。

言葉による傷が目に見えないからって何を言っても良いことにはならないんだから。



この先、どうなるんだろう。先行きの不安さに溜め息しかでなかった。

でもその溜め息に、悪い気はしなかった。


少しずつ世界が再び歩き始めた気配を感じたから。











    
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