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空を満たす何か
殴り案件
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「暴力には暴力で返さなければ、って意地になってたんだよねぇ。」
「あらぁ?私、染色用の珍しい植物見つけたから、採集してくるわねぇ?うふふ。」
カーミラさんはそう言って席を外した。これ以上話に参加したくなかったのかもしれない。
「それで?殺してごめんねって謝りに行って。謝ったから、今後は自分達に協力してねって頼んで回ったって?」
ギルミアさんの言葉にイラッとしたので、こちらから畳み掛けるように要約した。
「うーん、まぁ要約するとそうなるのかな?」
殺してごめん、で許すやつなんているか!ごめんで済んだら警察いらないんだよ!
それにしてもラヴァルさんもギルミアさんも頭脳派じゃなかったっけ。特にラヴァルさんは『詐欺は教養の高さ』とかいう謎の教育を受けてたんだよね?何でそれで上手くいくと思った?
そりゃタコ殴りにされるはずだよ。
「今まで自分がしてきた行為と向き合っただけです。全てが上手くいくと思ってはいません。私がやらなければと思ったから行動したまでです。償われる方の都合まで考えが至っていませんでしたが…。」
謝罪も償いも、パフォーマンスじゃないんだ。
『一つ、聞きたい。』
ツニートが口を開いた。
『従わせるなら、生き残り必要。ならなぜ、俺の集落、皆殺し、あった?』
うわ、ここでヘビーな過去きた。アノーリオンも中々だけどそれに比肩する。
だからツニート、今まで自分の過去のこと聞いてもぼかして言わなかったんだね…。
「それはっ……。」
珍しくラヴァルさんが口籠った。何か言えない理由でもあるのか?見せしめだったとか?
「あー、それやったの僕だ。」
ギルミアさんが言った。
「あの時、新しい呪術研究してたんだよ。」
この後に続く言葉が容易に想像出来て、これ以上聞きたくなかった。ツニートの耳を塞いであげたいのに、体格的にそれは片耳しか叶わないことがひどく悔しい。
「実験の試し打ちを兼ねてたんだけど、あっちの抵抗が物凄くて、つい加減出来なくなったんだ。あれには流石の僕も驚いたよ。」
やめて。やめて。どうかこれ以上は…。
「戦力が欲しかったのにまさか皆死んじゃうとはね~。ツニートが生き残ってたって聞いた時は安堵したよ」
ツニートの顔を恐る恐る見ると、顔は青ざめて無表情だった。ツニートがツニートじゃなくなるようで、怖かった。
あれ?でもツニートは一族を追い出されたって聞いたけど。まさかツニートを逃がすための口実だった?でもこの雰囲気でツニートに聞けるほど私は無神経ではない。
誰だって言いたくないことの一つや二つや三つ、あるもんだ。
これだからこいつとはどこまでも相容れないんだよ。
他人の痛みをどうとも思っていないその無関心さに、どうしようもなく嫌悪感を抱く。
ラヴァルさんが口籠るはずだよ。こんなのまともな人なら口に出来るはずがない。
「森の賢者じゃなくて、森のクソヤローに改名したらどう?」
つい口を挟んだ。何も言わない、言えないツニートの姿をこれ以上見ていられなくて。
「何だって?僕だって反省したんだから。それにこの件に君は無関係なんだから口を出される謂れはないよ。」
ギルミアさんは反論する。
「っ、ララッ!!私が、私が全て悪いのです。ですから、どうか、どうか!この件は私に任せて頂けませんか!!」
ラヴァルさんがその場に膝をついて私に懇願した。
「無関係なら皆殺しにしても何とも思わないんだ?生き残った人への配慮すらしなくてもいいんだ? 自分は一族の人が拐われた、周りは助けてくれない、と大騒ぎしといて。」
「随分と都合の良い世界に生きてるんだね。ほんとに羨ましいよ。」
ラヴァルさんは私の足にしがみつかんばかりに謝ってくるのを無視して、私は吐き捨てた。
ツニートは両手を握り締めて震えていた。
「それに私は無関係じゃない。私だって故郷を奪われた被害者だ。肉塊にされて土地に撒かれるところだったんだから。それで?肉塊になってないから別に問題ないよね、とでも言うつもり?」
ギルミアさんの存在全てに苛々する。自分がされた時には大騒ぎしといて、他人がされたら無関心。ムカつくどころの話じゃないよね?
ツニートの素直な言葉と態度に私は何度も救われてきた。だから今度は私が力になりたいのに、どうしていいか分からない。かける言葉が見つからない。
「故郷。あ!思い出した。それを伝えに来たんだ。異世界人の召喚の禁止方法が分かったんだよ。」
私の言葉を無視して、ギルミアさんが言った。暖簾に腕押し。私の言葉は彼のどこにも何にも響かないんだな。益々腹が立つが、召喚禁止は兼ねてからの私の願いだ。ここは大人しく続きを待つ。
「母なる大地ガイアに頼むんだよ。」
「…どうやって?」
「ララは唯一の異世界人です。これまで異世界人のみが母なる女神と接触出来ていますから、恐らくララも女神と話が出来る存在だと考えられます。その接触方法は今のところ分かっていません。ですが異世界人だけが持つ何らかの条件があるはずなんです。」
ギルミアさんの言葉にラヴァルさんが続けた。
「あらぁ?私、染色用の珍しい植物見つけたから、採集してくるわねぇ?うふふ。」
カーミラさんはそう言って席を外した。これ以上話に参加したくなかったのかもしれない。
「それで?殺してごめんねって謝りに行って。謝ったから、今後は自分達に協力してねって頼んで回ったって?」
ギルミアさんの言葉にイラッとしたので、こちらから畳み掛けるように要約した。
「うーん、まぁ要約するとそうなるのかな?」
殺してごめん、で許すやつなんているか!ごめんで済んだら警察いらないんだよ!
それにしてもラヴァルさんもギルミアさんも頭脳派じゃなかったっけ。特にラヴァルさんは『詐欺は教養の高さ』とかいう謎の教育を受けてたんだよね?何でそれで上手くいくと思った?
そりゃタコ殴りにされるはずだよ。
「今まで自分がしてきた行為と向き合っただけです。全てが上手くいくと思ってはいません。私がやらなければと思ったから行動したまでです。償われる方の都合まで考えが至っていませんでしたが…。」
謝罪も償いも、パフォーマンスじゃないんだ。
『一つ、聞きたい。』
ツニートが口を開いた。
『従わせるなら、生き残り必要。ならなぜ、俺の集落、皆殺し、あった?』
うわ、ここでヘビーな過去きた。アノーリオンも中々だけどそれに比肩する。
だからツニート、今まで自分の過去のこと聞いてもぼかして言わなかったんだね…。
「それはっ……。」
珍しくラヴァルさんが口籠った。何か言えない理由でもあるのか?見せしめだったとか?
「あー、それやったの僕だ。」
ギルミアさんが言った。
「あの時、新しい呪術研究してたんだよ。」
この後に続く言葉が容易に想像出来て、これ以上聞きたくなかった。ツニートの耳を塞いであげたいのに、体格的にそれは片耳しか叶わないことがひどく悔しい。
「実験の試し打ちを兼ねてたんだけど、あっちの抵抗が物凄くて、つい加減出来なくなったんだ。あれには流石の僕も驚いたよ。」
やめて。やめて。どうかこれ以上は…。
「戦力が欲しかったのにまさか皆死んじゃうとはね~。ツニートが生き残ってたって聞いた時は安堵したよ」
ツニートの顔を恐る恐る見ると、顔は青ざめて無表情だった。ツニートがツニートじゃなくなるようで、怖かった。
あれ?でもツニートは一族を追い出されたって聞いたけど。まさかツニートを逃がすための口実だった?でもこの雰囲気でツニートに聞けるほど私は無神経ではない。
誰だって言いたくないことの一つや二つや三つ、あるもんだ。
これだからこいつとはどこまでも相容れないんだよ。
他人の痛みをどうとも思っていないその無関心さに、どうしようもなく嫌悪感を抱く。
ラヴァルさんが口籠るはずだよ。こんなのまともな人なら口に出来るはずがない。
「森の賢者じゃなくて、森のクソヤローに改名したらどう?」
つい口を挟んだ。何も言わない、言えないツニートの姿をこれ以上見ていられなくて。
「何だって?僕だって反省したんだから。それにこの件に君は無関係なんだから口を出される謂れはないよ。」
ギルミアさんは反論する。
「っ、ララッ!!私が、私が全て悪いのです。ですから、どうか、どうか!この件は私に任せて頂けませんか!!」
ラヴァルさんがその場に膝をついて私に懇願した。
「無関係なら皆殺しにしても何とも思わないんだ?生き残った人への配慮すらしなくてもいいんだ? 自分は一族の人が拐われた、周りは助けてくれない、と大騒ぎしといて。」
「随分と都合の良い世界に生きてるんだね。ほんとに羨ましいよ。」
ラヴァルさんは私の足にしがみつかんばかりに謝ってくるのを無視して、私は吐き捨てた。
ツニートは両手を握り締めて震えていた。
「それに私は無関係じゃない。私だって故郷を奪われた被害者だ。肉塊にされて土地に撒かれるところだったんだから。それで?肉塊になってないから別に問題ないよね、とでも言うつもり?」
ギルミアさんの存在全てに苛々する。自分がされた時には大騒ぎしといて、他人がされたら無関心。ムカつくどころの話じゃないよね?
ツニートの素直な言葉と態度に私は何度も救われてきた。だから今度は私が力になりたいのに、どうしていいか分からない。かける言葉が見つからない。
「故郷。あ!思い出した。それを伝えに来たんだ。異世界人の召喚の禁止方法が分かったんだよ。」
私の言葉を無視して、ギルミアさんが言った。暖簾に腕押し。私の言葉は彼のどこにも何にも響かないんだな。益々腹が立つが、召喚禁止は兼ねてからの私の願いだ。ここは大人しく続きを待つ。
「母なる大地ガイアに頼むんだよ。」
「…どうやって?」
「ララは唯一の異世界人です。これまで異世界人のみが母なる女神と接触出来ていますから、恐らくララも女神と話が出来る存在だと考えられます。その接触方法は今のところ分かっていません。ですが異世界人だけが持つ何らかの条件があるはずなんです。」
ギルミアさんの言葉にラヴァルさんが続けた。
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