僕は君になりたかった

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僕と、誰かが笑いあっている光景を僕は遠くから見ていた。
…僕があそこにいるってことは、僕は誰なんだろう。
いよいよ僕はどこにも存在しないものになったのかな。

悲しいけど、それで良かったんだと思う。
誰も悲しむ人なんていないし。うん、良かった。

存在しないのなら、このままどこかに行こうかな。
誰も知らない、行ったことのない場所、とか。
…そんな所あるかな。
うーんと唸りながら考えていた僕は、僕に近付いてきた何かに気付くことはなかった。


「あのー」

「ひっ!?」

「あ、すんませーん。驚かせちゃいましたぁー?」

「あっご、ごめんなさい!」

「いやいやぁ~うちが驚かせちゃったんでぇ~」

「はぁ…」

けらけらと笑うこの人(であってるのかな)は誰なんだろう?
…見たことのない服に、髪の色と肌の色…。

「うちは蝦蟇世がませって言うんです~以後お見知り置きを~」

「えと、僕は……誰、だろう…」

「都はんと違うんですかぁ~~?」

「…そう、だったけど…」

名前を忘れているわけではないけど、先程見た光景が離れず自分は誰なのだろうと自問自答する。

「んーーうちは難しい事分からないですけど、取り敢えず都はんは都ですよ~~」

「そう、なんですね…」

「そーそー。だからぁ、都はんは別の世界に行って貰おうと思って~」

「へ?別の世界…?」

「そうです~別の世界っていうかぁうちが作った世界~?」

…この目の前の人は何者なんだろう。益々その謎が深まった。
それに話が唐突すぎてついていけなくなってきた。
どうして僕が都なのと、別世界に行くのが繋がっているんだ。

「…取り敢えず、聞いてもいいですか?」

「はぁい?」

「あなたは、何者なんですか?」

「うちぃ~?名前は「さっき聞いたので大丈夫です」…んー何者って聞かれてもなぁ~何者でもないしぃ~」

「何者でも、ない…?」

「うん。うちは、何者でも、ない」

突然にこにこしていた顔が感情が抜け落ちたかのように真顔になった。
それに少しだけ怖いと思いつつも「でも、世界を作れるんですよね?」と尋ねた。
その疑問にうーーーーーんと唸りながら何も答えなくなってしまった。

…別の世界、かぁ…。
そしたらあの人達ともう会えなくなってしまう。
あぁ、でももう見なくても済むのか。
どうせ忘れられないのなら、別の世界に行ってしまってもいいんじゃないか。
思考がぐちゃぐちゃになりながらも、僕にあるのはあの人への恋心。

そんな僕を見かねた蝦蟇世が「それで、どうしますかぁ」と問うてきた。

この世界で、死ねないのなら、いっそ。

そう思った僕が出した答えは。
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