僕は平凡に生きたい

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トラウマ

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固まった京くんを置いて部屋に戻ると体育祭前からずっと会っていなかった千蘿くんがソファでくつろいでいた。
帰ってきた俺に気付いた千蘿くんがニコッと笑って「おかえり」と言ってまたテレビへと視線を戻した。

「た、だいま…久しぶりだね~」

「はは、ほんとだね。…オトモダチとは仲良くやれてるの?」

「ん?うん!」

「そう、よかったね」

笑っているけれど何処か冷たい千蘿くんに首を傾げる。
友だちっていう単語が出てくるたびにいつもだ…お前なんかに?みたいな感じだったらショックだけど、まさか…まさかね?
って、京くんが待ってるし急いで戻らないと。
ハッと思い出したようにキッチンへと向かって食材をいくつか持って部屋を出ようとすれば千蘿くんに「そんなに急いでどこに行くの?」と引き止められた。

「えっと…友だちと、ご飯食べようと思って…」

「…へぇ…」

そう呟いたきり何も言わない千蘿くんに「もう、行くね…?」と恐る恐る言えば「ああ、ごめん。行ってらっしゃい」と手を振ってくれた。

パタンと扉を閉めて背中を扉につける。

「ふぅ…」

苦手なわけでもないし優しい人なんだけど、時々感じる冷たい視線がとてつもなく怖かったりする。
久しぶりに会ったから、尚更怖くて…。
…うう、すぐ怖がるのやめたいのにぃ…。

もう一度息を吐いて京くんの部屋へと戻れば何故か京くんは頭を抱えていた。
…どうしたの?

**
何故か落ち込んでいた京くんをなんとか座らせてご飯を作る。
ご飯を食べたら元気になるよね?きっとね?

手伝おうか?と聞いてきた京くんをすぐ出来るからと断った。
…今の京くん指切りそうで怖いんだもん。ごめんね?

…よし、これでおっけー!

「出来たよ~」

「俺、運ぶから!」

「へ?ありがとう」

ガタッと勢いよく立ったと思ったら置いてあったご飯と俺が持っていたものを取ってリビングへと運んでくれた。
お手伝いする子供みたいでほんわかしちゃうなぁ……なんか、今日の俺京くんに対して親のような気持ちしか抱いてなくない…?
笑いそうになったけど流石にダメか…と思いながら俺もついて行けばわくわくとした表情が隠し切れてない京くんが待っていた。

そこで耐えきれなくなって俺は吹き出してしまった。
ず、ずるい…ずるいよ、京くん…!

俺が笑っている理由がわからなくて首をしきりに傾げている京くんがかわいくて更に笑ってしまった。
…それからしばらく笑いがおさまらなかったからご飯は少しだけ冷めてしまった。ごめんなさい。

美味しい!と何度も言いながらガツガツ食べる京くんを見ながら俺はちびちびと自分用のご飯を食べる。
うーん…やっぱりお腹空かない…。でも、今は食べないと…。
口に運ぶのも躊躇っている俺を見た京くんが、

「…佳乃ちゃん、あんまりお腹空いてないって言ってたし俺がいるからって無理しなくていいんだよ?」

と言って眉を下げて言った。
大丈夫だよ、と言いたいけどこればかりは流石に…。

「…ん、ごめんね…」

「謝らなくていいよ!俺がお腹空いたって言っちゃったからなんだし…」

「…今、お腹空いてないだけだから…心配しないでね?」

俺がそう言うと納得したようなしてないような微妙な表情をして「…うん」と頷いた。
うん、ごめんね。
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