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番外編(捏造ありまくり)
指宿 佳乃(誕生日話)
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トラウマ知ってる前提で進みます。
Side:中原京
「誕生日?あ、そういえば今日誕生日だったかも」
そんな台詞が返ってきたのはなんだかんだとバタバタしていて誕生日を慌ただしく迎えてしまったので、少し申し訳なく思いながらも
『佳乃ちゃん誕生日おめでとう!今日の夜は俺の部屋でご飯食べない?俺が作るからさ』
と朝一番に言ったから。
そしてきょとんとした表情で首を傾げた後困ったように笑うのは俺たちが大好きで堪らない、笑う顔がかわいい佳乃ちゃんだ。
……っていうかちょっと待って?
だったかもって何?
「えっ……と?今日が誕生日だったよね?前にそう教えてもらった気がしたんだけど……俺間違ってたかな……」
「あっ違うの!……えーっと、誕生日なんだけど、その……なんていうのかなぁ。俺の中で誕生日って別に特別な日でもなんでもなくて……あ、でも京くんからおめでとうって言ってもらえたし特別な日かも」
えへへ、と照れ臭そうに笑う佳乃ちゃんに俺の心はズキュンと撃ち抜かれた。
だが、しかし。
今はときめいてる場合ではない……!!
これは緊急事態だ、とまだ来ていない颯と群青にLIMEを送るためにグループを開いた。(グループ名:愛でる会)
『緊急事態』
『緊急事態?学校でも燃えてるのか?』
『いや、燃えてたらこんなメッセージ送ってこないだろw』
『佳乃ちゃん、誕生日を特別な日だと認識してない』
そのメッセージに既読はすぐついたが返信はすぐに返ってこない。
……固まってるんだろうな。わかる、わかるぞその気持ち。
そして返ってきたメッセージは、
『まじ?』
『佳乃が……そうか……』
だった。
もしかして昔のことが関係してるんだろうか。
通常であれば自分が生まれた日は特別な日だと、そう思っているものだ。
たしかにそうじゃない人もいるかもしれないけど……。
「まさか佳乃ちゃんがそう思ってるとはなぁ……」
どうすれば、君が生まれたことが、君の中で特別になるんだろうか。
******
「改めて、佳乃ちゃん誕生日おめでとう」
「佳乃、おめでとう」
「おめっとさん!これ、プレゼントな」
「えっありがとう……ふふ、みんな優しいんだねぇ」
俺たちがあげたプレゼントを嬉しそうに見て破顔する佳乃ちゃんに、喜んで貰えて良かったと安心する。
「あ、ご飯冷めない内に食べて欲しいな~俺めちゃくちゃ頑張ったから!」
「うん、すっごくおいしそうだなって思ってたんだ。いただきまぁす」
「京って料理出来たんだな」
「俺やれば出来る子だから」
「うわ、出た出た」
出た出たって言われても事実だし。
「っ……京くん、美味しい!俺より上手なんじゃないかなぁ、これ。美味しいなぁ~」
「いや、それはない!……でも美味しかったならよかった。ほら、颯達も食べれば?俺の美味しい、佳乃ちゃんのお墨付きの料理」
「ふん、俺の舌は厳しいぞ」
「まじもんの金持ちだもんな、お前ら」
「2人とも、でも本当に美味しいよ?俺これが好き~」
これ、と言って食べたのは茄子の肉巻きに甘辛いタレがかかったもの。
それ一番頑張ったやつだから表面上「よかった~」なんて笑って言ってるけど内心飛び上がるほど嬉しい!!
颯たちもなんだかんだ舌太鼓を打ちぺろりと完食していた。
「は~お腹いっぱい……京くん、ありがとう。ご馳走様でした。お皿は俺洗うね」
「いやいやいや!佳乃ちゃんが今日の主役なんだし、主役はゆっくり休んでて!ね?」
「主役……?でも、別に……ただの誕生日ってだけだし……」
お皿を持って立ち上がろうとした佳乃ちゃんを無理矢理座らせれば、戸惑ったように恐る恐る見上げてきた。
これは本当に意味がわかってないやつだ……。
ちらりと颯と群青を見てもどう言えばいいのかわからず困っているようだった。
うーん……。
「佳乃ちゃん、佳乃ちゃんは誕生日は別に特別なものじゃないって言ってたよね?」
「へ?うん。お母さんは生まれてきてくれてありがとうってお祝いしてくれてたし、俺も生んでくれた事には感謝してる。でも、俺なんか生まれてこなければお母さんは苦労しなかったし、あんな事にもならなかったし……やっぱり特別な日だとは思えない、かな」
「……でも、ね佳乃ちゃん……佳乃ちゃんがそう思ってても俺は……俺たちは佳乃ちゃんが生まれてきてくれて、俺たちに出会ってくれて、笑っていてくれて本当に良かったと思うんだよ」
淡々と語る佳乃ちゃんに俺は言葉が詰まりながらも伝える。
「……うん、俺も京くんや、颯くん、あっくんに出会えてよかったよ。……だけど……」
「うん、分かってるよ。そんなすぐにそっか!特別な日なんだ!ってならないのは。……でも、佳乃ちゃんがそこにいるだけで、笑ってくれるだけで喜ぶ人は沢山いるからね。それに、これからは毎年俺たちが佳乃ちゃんのことお祝いするから!卒業したらお母さんも交えてさ」
「……ん、ふふ……それは、賑やかで楽しそうかも」
「でしょ?だから、佳乃ちゃんが生まれた今日が特別な日だと思うより、俺たちが盛大にお祝いする日、って思ってくれたら嬉しい。俺たちにとっても今日はとっても特別な日だし」
「……うん……」
じんわりと目に涙を浮かべて笑う佳乃ちゃんは、すごく綺麗だった。
思わず2人の世界に入っていたら背後からゴホンッと咳払いが聞こえて、やべって反射的に思っちゃった。
だってなーんにも言わないからさ~。
「もーいいとこだったのに、邪魔しないでくれるー?」
「俺たちの存在無視する方が悪いだろ」
「佳乃、そう思ってるのはこいつだけじゃねーからな!俺たちもだけど、クラスメイトもそう思ってるから」
ギャーギャーと文句を言い合っているとクスクスと小さな笑い声が聞こえてきたのでそちらに目をやると、佳乃ちゃんが口を手でおさえて笑っていた。
俺たちの視線に気付いた佳乃ちゃんは、恥ずかしそうにはにかんだ。
「あ、ごめんね。仲が良いなぁと思ったら思わず」
「仲が……」
「いい……」
「そんな風に見えるのか……」
「え?あれ?違ったの?そ、そんな絶望したような顔するほど!?」
おろおろと俺たちの顔を見ながら慌てる佳乃ちゃんを思わず抱きしめてしまって、颯たちに叩かれるのは数十秒後のことだった。
卒業しても、歳をとっても、こうやって佳乃ちゃんがずっと笑っていてくれたらいいとそう願いながら俺は佳乃ちゃんの笑顔を見ていた。
******
佳乃は自分以外の誕生日はとことんお祝いしますが、自身の誕生日はどうでもいいタイプです。
お母さんが毎年お祝いしてくれますが、佳乃的には自分よりお母さんにおめでとうを言いたいって感じで……難しい。
自分を肯定出来ない人間です。
そんな佳乃に幸あれ。
HAPPY BIRTHDAY!YOSHINO IBUSUKI!
Side:中原京
「誕生日?あ、そういえば今日誕生日だったかも」
そんな台詞が返ってきたのはなんだかんだとバタバタしていて誕生日を慌ただしく迎えてしまったので、少し申し訳なく思いながらも
『佳乃ちゃん誕生日おめでとう!今日の夜は俺の部屋でご飯食べない?俺が作るからさ』
と朝一番に言ったから。
そしてきょとんとした表情で首を傾げた後困ったように笑うのは俺たちが大好きで堪らない、笑う顔がかわいい佳乃ちゃんだ。
……っていうかちょっと待って?
だったかもって何?
「えっ……と?今日が誕生日だったよね?前にそう教えてもらった気がしたんだけど……俺間違ってたかな……」
「あっ違うの!……えーっと、誕生日なんだけど、その……なんていうのかなぁ。俺の中で誕生日って別に特別な日でもなんでもなくて……あ、でも京くんからおめでとうって言ってもらえたし特別な日かも」
えへへ、と照れ臭そうに笑う佳乃ちゃんに俺の心はズキュンと撃ち抜かれた。
だが、しかし。
今はときめいてる場合ではない……!!
これは緊急事態だ、とまだ来ていない颯と群青にLIMEを送るためにグループを開いた。(グループ名:愛でる会)
『緊急事態』
『緊急事態?学校でも燃えてるのか?』
『いや、燃えてたらこんなメッセージ送ってこないだろw』
『佳乃ちゃん、誕生日を特別な日だと認識してない』
そのメッセージに既読はすぐついたが返信はすぐに返ってこない。
……固まってるんだろうな。わかる、わかるぞその気持ち。
そして返ってきたメッセージは、
『まじ?』
『佳乃が……そうか……』
だった。
もしかして昔のことが関係してるんだろうか。
通常であれば自分が生まれた日は特別な日だと、そう思っているものだ。
たしかにそうじゃない人もいるかもしれないけど……。
「まさか佳乃ちゃんがそう思ってるとはなぁ……」
どうすれば、君が生まれたことが、君の中で特別になるんだろうか。
******
「改めて、佳乃ちゃん誕生日おめでとう」
「佳乃、おめでとう」
「おめっとさん!これ、プレゼントな」
「えっありがとう……ふふ、みんな優しいんだねぇ」
俺たちがあげたプレゼントを嬉しそうに見て破顔する佳乃ちゃんに、喜んで貰えて良かったと安心する。
「あ、ご飯冷めない内に食べて欲しいな~俺めちゃくちゃ頑張ったから!」
「うん、すっごくおいしそうだなって思ってたんだ。いただきまぁす」
「京って料理出来たんだな」
「俺やれば出来る子だから」
「うわ、出た出た」
出た出たって言われても事実だし。
「っ……京くん、美味しい!俺より上手なんじゃないかなぁ、これ。美味しいなぁ~」
「いや、それはない!……でも美味しかったならよかった。ほら、颯達も食べれば?俺の美味しい、佳乃ちゃんのお墨付きの料理」
「ふん、俺の舌は厳しいぞ」
「まじもんの金持ちだもんな、お前ら」
「2人とも、でも本当に美味しいよ?俺これが好き~」
これ、と言って食べたのは茄子の肉巻きに甘辛いタレがかかったもの。
それ一番頑張ったやつだから表面上「よかった~」なんて笑って言ってるけど内心飛び上がるほど嬉しい!!
颯たちもなんだかんだ舌太鼓を打ちぺろりと完食していた。
「は~お腹いっぱい……京くん、ありがとう。ご馳走様でした。お皿は俺洗うね」
「いやいやいや!佳乃ちゃんが今日の主役なんだし、主役はゆっくり休んでて!ね?」
「主役……?でも、別に……ただの誕生日ってだけだし……」
お皿を持って立ち上がろうとした佳乃ちゃんを無理矢理座らせれば、戸惑ったように恐る恐る見上げてきた。
これは本当に意味がわかってないやつだ……。
ちらりと颯と群青を見てもどう言えばいいのかわからず困っているようだった。
うーん……。
「佳乃ちゃん、佳乃ちゃんは誕生日は別に特別なものじゃないって言ってたよね?」
「へ?うん。お母さんは生まれてきてくれてありがとうってお祝いしてくれてたし、俺も生んでくれた事には感謝してる。でも、俺なんか生まれてこなければお母さんは苦労しなかったし、あんな事にもならなかったし……やっぱり特別な日だとは思えない、かな」
「……でも、ね佳乃ちゃん……佳乃ちゃんがそう思ってても俺は……俺たちは佳乃ちゃんが生まれてきてくれて、俺たちに出会ってくれて、笑っていてくれて本当に良かったと思うんだよ」
淡々と語る佳乃ちゃんに俺は言葉が詰まりながらも伝える。
「……うん、俺も京くんや、颯くん、あっくんに出会えてよかったよ。……だけど……」
「うん、分かってるよ。そんなすぐにそっか!特別な日なんだ!ってならないのは。……でも、佳乃ちゃんがそこにいるだけで、笑ってくれるだけで喜ぶ人は沢山いるからね。それに、これからは毎年俺たちが佳乃ちゃんのことお祝いするから!卒業したらお母さんも交えてさ」
「……ん、ふふ……それは、賑やかで楽しそうかも」
「でしょ?だから、佳乃ちゃんが生まれた今日が特別な日だと思うより、俺たちが盛大にお祝いする日、って思ってくれたら嬉しい。俺たちにとっても今日はとっても特別な日だし」
「……うん……」
じんわりと目に涙を浮かべて笑う佳乃ちゃんは、すごく綺麗だった。
思わず2人の世界に入っていたら背後からゴホンッと咳払いが聞こえて、やべって反射的に思っちゃった。
だってなーんにも言わないからさ~。
「もーいいとこだったのに、邪魔しないでくれるー?」
「俺たちの存在無視する方が悪いだろ」
「佳乃、そう思ってるのはこいつだけじゃねーからな!俺たちもだけど、クラスメイトもそう思ってるから」
ギャーギャーと文句を言い合っているとクスクスと小さな笑い声が聞こえてきたのでそちらに目をやると、佳乃ちゃんが口を手でおさえて笑っていた。
俺たちの視線に気付いた佳乃ちゃんは、恥ずかしそうにはにかんだ。
「あ、ごめんね。仲が良いなぁと思ったら思わず」
「仲が……」
「いい……」
「そんな風に見えるのか……」
「え?あれ?違ったの?そ、そんな絶望したような顔するほど!?」
おろおろと俺たちの顔を見ながら慌てる佳乃ちゃんを思わず抱きしめてしまって、颯たちに叩かれるのは数十秒後のことだった。
卒業しても、歳をとっても、こうやって佳乃ちゃんがずっと笑っていてくれたらいいとそう願いながら俺は佳乃ちゃんの笑顔を見ていた。
******
佳乃は自分以外の誕生日はとことんお祝いしますが、自身の誕生日はどうでもいいタイプです。
お母さんが毎年お祝いしてくれますが、佳乃的には自分よりお母さんにおめでとうを言いたいって感じで……難しい。
自分を肯定出来ない人間です。
そんな佳乃に幸あれ。
HAPPY BIRTHDAY!YOSHINO IBUSUKI!
応援ありがとうございます!
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