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第四章:黒い花
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ところで、とあたしは真木に質問をした。
「先輩も現場に行くの? いや、マジで危険だし、野次馬とか好奇心とか一目見たいとかのレベルを超えてるっしょ?」
真木は、ふーむ、とシートに寄り掛かった。
「確かに危険だからね、内心ビビってるよ。だけど、野町さんは僕を現場に連れて行くつもりだね。何しろ状況が状況だから、打てるだけ手は打つべきだ。
勿論、僕としても、開花は見てみたい。それに何やら心がざわざわする」
ざわざわ?
あたしは真木の顔をじっと見た。心のどこかで小さな警報が鳴り始める。
また、こいつ口を滑らせた気がするぞ。先輩の本心って奴は、何だ?
大体、さっきの推論を更に進めると――
真木はあたしの視線に気づいたのか、顔を近づけると、歯を大きく剥きだして、邪悪極まりないニタニタ笑いを浮かべた。
「いやいや、勘違いしてもらっては困るよ、京さん! 最大の理由! 最大の理由があるのだよ!」
「顔、ちかっ! で、理由? 最大の? 何よ?」
真木は、ひゃっはあと叫ぶと車の天井に九十度の角度で頭を擦りつけ、辛抱たまらん! という顔をした。
「僕は、御霊桃子がぎゃふんと言う場面を是非とも間近で見たいんだよおお! 何しろ僕は神虫現象で色々な目にあって、怒っている。だが、振り上げた拳を降ろす所が見つからない! だから、あの女に降ろすのだ! 悪人だからね! 邪悪な奴が屈辱にまみれて、悶え怒るのを見ることの何と壮快で甘美な事か!!!」
体をくねらせ、げひひげひひと嗤う真木。
オーウ、だーめだこりゃ。考え過ぎだったわ。
あたしはイっちゃってる真木を放っておいて、コーヒーを一口飲んだ。
「あ、美味い」
香織さんが運転席からぴょこんと顔を出した。
「でしょ! でしょ! もっと飲んでねえ!」
真木はコーヒーを掲げる。
「香織嬢、これ、何が入ってるんですか? 若水や聖水だけじゃあないでしょう? 僕達みたいに片足を突っ込んでいる人間にだけ美味いコーヒーってのは気味が悪いですよ」
え?
あたしは思わず、もう一口飲もうとしていたコーヒーを口から離した。香織さんは運転席のシートに顔半分を押し付け、にへへへと笑った。
「でーじょぶだー、体に害のある物は入ってないってばよ!
まあ、ちょい前に流行った似非科学系の飲み物よりは体に良いと思うし?
それより、どう京子さん? 何が入ってるか判る? 当てたら良い物あげちゃうかも!」
「ええ……そんな事言ったって……」
あたしは指につけて透かしてみたり、臭いをじっくり嗅いでみたりした。だが、コーヒーという以外は何も思いつかない。
「京さん、多分これが暖かいコーヒーというのが問題なのだよ」
真木はそう言いながら眼帯をずらし、真っ黒な目を細めた。
「やっぱりな。眩しいくらいの祈り……気、いや、神気と言ったものが込められているねえ。これが冷えた水ならば君も指先に温かさを感じてビックリする所なのだがね。ふむ、一之瀬裕子と真逆ですなあ」
祈り――人の善意。人の温かさ。
あたしは香織さんの笑顔につられて微笑むと、残りのコーヒーを飲み干した。
「先輩も現場に行くの? いや、マジで危険だし、野次馬とか好奇心とか一目見たいとかのレベルを超えてるっしょ?」
真木は、ふーむ、とシートに寄り掛かった。
「確かに危険だからね、内心ビビってるよ。だけど、野町さんは僕を現場に連れて行くつもりだね。何しろ状況が状況だから、打てるだけ手は打つべきだ。
勿論、僕としても、開花は見てみたい。それに何やら心がざわざわする」
ざわざわ?
あたしは真木の顔をじっと見た。心のどこかで小さな警報が鳴り始める。
また、こいつ口を滑らせた気がするぞ。先輩の本心って奴は、何だ?
大体、さっきの推論を更に進めると――
真木はあたしの視線に気づいたのか、顔を近づけると、歯を大きく剥きだして、邪悪極まりないニタニタ笑いを浮かべた。
「いやいや、勘違いしてもらっては困るよ、京さん! 最大の理由! 最大の理由があるのだよ!」
「顔、ちかっ! で、理由? 最大の? 何よ?」
真木は、ひゃっはあと叫ぶと車の天井に九十度の角度で頭を擦りつけ、辛抱たまらん! という顔をした。
「僕は、御霊桃子がぎゃふんと言う場面を是非とも間近で見たいんだよおお! 何しろ僕は神虫現象で色々な目にあって、怒っている。だが、振り上げた拳を降ろす所が見つからない! だから、あの女に降ろすのだ! 悪人だからね! 邪悪な奴が屈辱にまみれて、悶え怒るのを見ることの何と壮快で甘美な事か!!!」
体をくねらせ、げひひげひひと嗤う真木。
オーウ、だーめだこりゃ。考え過ぎだったわ。
あたしはイっちゃってる真木を放っておいて、コーヒーを一口飲んだ。
「あ、美味い」
香織さんが運転席からぴょこんと顔を出した。
「でしょ! でしょ! もっと飲んでねえ!」
真木はコーヒーを掲げる。
「香織嬢、これ、何が入ってるんですか? 若水や聖水だけじゃあないでしょう? 僕達みたいに片足を突っ込んでいる人間にだけ美味いコーヒーってのは気味が悪いですよ」
え?
あたしは思わず、もう一口飲もうとしていたコーヒーを口から離した。香織さんは運転席のシートに顔半分を押し付け、にへへへと笑った。
「でーじょぶだー、体に害のある物は入ってないってばよ!
まあ、ちょい前に流行った似非科学系の飲み物よりは体に良いと思うし?
それより、どう京子さん? 何が入ってるか判る? 当てたら良い物あげちゃうかも!」
「ええ……そんな事言ったって……」
あたしは指につけて透かしてみたり、臭いをじっくり嗅いでみたりした。だが、コーヒーという以外は何も思いつかない。
「京さん、多分これが暖かいコーヒーというのが問題なのだよ」
真木はそう言いながら眼帯をずらし、真っ黒な目を細めた。
「やっぱりな。眩しいくらいの祈り……気、いや、神気と言ったものが込められているねえ。これが冷えた水ならば君も指先に温かさを感じてビックリする所なのだがね。ふむ、一之瀬裕子と真逆ですなあ」
祈り――人の善意。人の温かさ。
あたしは香織さんの笑顔につられて微笑むと、残りのコーヒーを飲み干した。
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