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第48話 ハーフエルフ
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ダンジョンの48階の最奥。
轟音と光が交錯する中、巨大な魔物マンティコアと冒険者たちが戦っていた。
魔物は人の十倍以上の大きさもあり、獅子の魔物に、背中から角鹿の魔物が生えていて、尻尾は蛇の魔物が合体したキメラだった。
尻尾の蛇が毒を巻き散らし、角鹿が広範囲に雷を落とすため、接近戦が難しかった。
そして遠距離から攻撃しようとしても獅子の魔物が炎のブレスを吐くため邪魔されて討伐は困難を極めた。
この魔物が48階の入口付近に陣取っていて、金等級パーティー「金の木漏れ日」は突破できずにいた。
「撤退だ!キャンプまで戻れ!」
リーダーのブリオニーが命令を下すと、負傷者を庇いながら撤退した。
ブリオニーは父親がエルフ、母親が人間のハーフエルフで、弓と魔法を得意としていた。
今年100歳になり、記念に何としても48階を突破したかった。
キャンプに戻り、怪我人に癒しをかけていると、冒険者ギルドからの支援隊がやってきたと知らされた。
ブリオニーは支援隊の中から神々しい気配を感じ、驚いた。
見た目は18歳の少女で、金髪と翠の瞳、白い肌にスラリとした体形で、白地に金の織り込みが施された服を纏い、腰に金色の剣を刺していた。
その少女の耳が尖っていて、誰もがひと目でエルフと分かった。
誰もがその美少女に目を奪われたが、それ以上に驚いたのがリーダーのブリオニーが少女に跪き、臣下の礼をとっていたからだ。
ブリオニーは父親を尊敬していたが、父親だからではなくエルフ独特の神々しさに尊敬の念を感じていた。
しかし目の前の少女の神々しさは、その比ではなかった。まるで女神がいるのではないかと錯覚し、跪かずにはいられなかった。
それもそのはず、シリルはハイエルフであり、女神の眷属、半神である。ハイエルフに会ったことがないブリオニーが、シリルを女神と勘違いしてもおかしくなかった。
「私はブリオニーと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ボクはシリル。48階の助太刀に来たんだ、よろしくね」
シリルはギルドマスターからの手紙を渡し、ブリオニーは読み終わるとシリルをテントに案内した。
ブリオニーは「金の木漏れ日」のメンバー全員を集めて、シリルを紹介した。
「今後シリル様の指揮のもと討伐を行う」
ブリオニーが宣言すると、みんなが驚いて声を上げた。もちろんシリルも。
「うそだろ!」「そんな話聞いてないよ」
サブリーダーのルシュアがシリルを睨みつけて、ブリオニーに詰め寄った。
「エルフだからって、こんな小娘の尻に敷かれるなんて。どうしたのよ、ブリオニー!」
他のメンバーも同様に騒ぎ出した。
今までもギルドから助っ人が何人も来たが、役に立たないと見るとブリオニーはすぐに送り返していた。
それがエルフの少女には実力も見ないうちに、骨抜きにされてしまった。
皆納得がいかなかった。
そこに誰かが呟いた。
「もしかしてブリオニーさんはロリコンだったのか。だから今まで独身……」
「えっ? うそだろ。ロリコンなの?」
「俺達のリーダーがロリコン? 威厳の顔の裏に、そんな秘密が……」
話がどんどん違う方向にいき、ブリオニーの白い顔は真っ赤になっていた。
「私はロリコンではない。信じてくれ」
ルシュアも何故か顔を真っ赤にして、メンバーを睨んだ。
「ブリオニーがロリコンな訳ない。私は小さいころから一緒だったけど、ブリオニーは私のことを見向きもしなかったんだから」
みんなが同情の目でルシュアを見た。
「やっぱりルシュアはブリオニーが好きだったんだ」
「そんなの今更だろ? バレバレだったじゃん」
「今はそんな話どうでも良くないか?」
ルシュアはいたたまれなくなってテントを出ていった。
シリルが手を挙げた。
「ブリオニーさんがリーダーでお願いします。ボクはやりたくない。それより早くやっつけに行こうよ」
その言葉に皆が安堵し、ブリオニーも平静に戻った。
「では明日、再度挑戦します」
「今からはダメ? 早く戦いたんだけど」
「今からですか? 準備と休憩をしなくては……」
「ボクひとりでやってもダメ?」
「ひとりでですか。無謀すぎます」
シリルの横柄な態度に、リーダー以外誰もが反感を抱いた。
「そこまで言うなら、ひとりでやってもらいましょうよ、リーダー」
「そうだ、そうだ」
ブリオニーはシリルを諫めることなどとてもできず、みんなの反感もあり、シリルの単独挑戦を認めた。
シリルが危なくなったときは命に代えても守らねばと内心考えていた。
シリルはマンティコアを見て、初めて戦う魔物にワクワクしてきた。
思わず興奮してきて感情が高ぶってきたが、……深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。
「いけない。いけない。暴走しちゃダメだよね」
シリルは一歩ずつマンティコアに接近する。
角鹿の頭部が雷を放つが、シリルはまるで舞うように華麗なステップでその雷をかわしていった。
尻尾の蛇が毒を巻き散らし、獅子の頭が炎を噴いた。
シリルの周りに風の守りと竜巻が起こり、毒は巻き上げられ、炎はシリルを避けて流れた。
「こんなもん? 大したことないな」
シリルに見下されて怒ったのか、魔物が大きく咆哮し威圧を放った。それは周りで観戦して者も感じるほど強かった。
「あはは、結構やるじゃん。でもまだまだだね」
シリルの心は次第に昂ぶり、笑い声が自然と口をついて出た。
マンティコアが動いた瞬間、シリルの感情が頂点に達し威圧を放った。
圧倒的な重圧が周囲を包んだ。
魔物は動けなくなり、よろよろと倒れこんだ。
周りの観戦者も耐えられず、うつ伏せになってしまった。
「なんだ、この威圧の凄さは」
ブリオニーは離れていたにも関わず、立っていることができないほどの威圧に驚いた。
シリルの剣が閃き、音もなく尻尾が宙を舞う。
切り離された尻尾は大きな音を立てて地面に落ちた。
「もっと楽しませてよ」
魔物は雷を放ったが、それをシリルは楽々と回避し、鹿の頭を一刀両断した。
獅子顔が叫び声を上げ、立ち上がり、シリルに襲いかかったが、シリルは目にも留まらぬ速さで躱すと同時に前右脚を切断した。
「あはは、どうした!こいよ」
シリルの感情はどんどん高ぶり、暴走し始めた。
シリルの周りは暴風が吹き荒れ、目が金色に輝きだし神剣が光出した。
獅子が炎のブレスを吐くが、悠々と回避し、前左脚、後左脚。後右脚と切断していった。
もはや魔物は動くこともできなかった。
「あはは!」
シリルの獰猛な笑い声が響き、魔物はただ切り刻まれていった。
そして息も絶え絶えになった獅子の頭に片足を乗せて、シリルは剣を振り下ろした。
「ざま~みろ!」
獅子の頭が切断されると、マンティコアは死に絶えた。
その様子に誰もが恐れおののいた。
「暴風エルフ」
誰かが呟くと、シリルは我に返った。
「しまった! 暴走しちゃった?」
シリルは恐る恐る周りを見回し、死傷者がいないことを確認すると、ほっと胸を撫で下ろした。
「うん、問題ない。問題ない」
そう呟きながらブリオニーたちのもとに戻っていったが、魔物の血で全身血まみれになったエルフの少女に誰もがドン引きしていた。
48階を攻略したシリルは「金の木漏れ日」とともに帰還することになった。
一緒に魔物を倒し、一緒に寝食を共にするうちに、彼らと次第に打ち解けていった。
ブリオニーからは相変わらず敬語で話しかけられて、むず痒い気がするがしないでもなかった。
それよりもブリオニーからエルフの話を聞けたのが大きな収穫だった。
シリルが地上に戻ってき時、ダンジョンに入ってから2か月経っていた。
街は50年振りの階層突破に、お祭り騒ぎのごとく盛り上がった。
轟音と光が交錯する中、巨大な魔物マンティコアと冒険者たちが戦っていた。
魔物は人の十倍以上の大きさもあり、獅子の魔物に、背中から角鹿の魔物が生えていて、尻尾は蛇の魔物が合体したキメラだった。
尻尾の蛇が毒を巻き散らし、角鹿が広範囲に雷を落とすため、接近戦が難しかった。
そして遠距離から攻撃しようとしても獅子の魔物が炎のブレスを吐くため邪魔されて討伐は困難を極めた。
この魔物が48階の入口付近に陣取っていて、金等級パーティー「金の木漏れ日」は突破できずにいた。
「撤退だ!キャンプまで戻れ!」
リーダーのブリオニーが命令を下すと、負傷者を庇いながら撤退した。
ブリオニーは父親がエルフ、母親が人間のハーフエルフで、弓と魔法を得意としていた。
今年100歳になり、記念に何としても48階を突破したかった。
キャンプに戻り、怪我人に癒しをかけていると、冒険者ギルドからの支援隊がやってきたと知らされた。
ブリオニーは支援隊の中から神々しい気配を感じ、驚いた。
見た目は18歳の少女で、金髪と翠の瞳、白い肌にスラリとした体形で、白地に金の織り込みが施された服を纏い、腰に金色の剣を刺していた。
その少女の耳が尖っていて、誰もがひと目でエルフと分かった。
誰もがその美少女に目を奪われたが、それ以上に驚いたのがリーダーのブリオニーが少女に跪き、臣下の礼をとっていたからだ。
ブリオニーは父親を尊敬していたが、父親だからではなくエルフ独特の神々しさに尊敬の念を感じていた。
しかし目の前の少女の神々しさは、その比ではなかった。まるで女神がいるのではないかと錯覚し、跪かずにはいられなかった。
それもそのはず、シリルはハイエルフであり、女神の眷属、半神である。ハイエルフに会ったことがないブリオニーが、シリルを女神と勘違いしてもおかしくなかった。
「私はブリオニーと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ボクはシリル。48階の助太刀に来たんだ、よろしくね」
シリルはギルドマスターからの手紙を渡し、ブリオニーは読み終わるとシリルをテントに案内した。
ブリオニーは「金の木漏れ日」のメンバー全員を集めて、シリルを紹介した。
「今後シリル様の指揮のもと討伐を行う」
ブリオニーが宣言すると、みんなが驚いて声を上げた。もちろんシリルも。
「うそだろ!」「そんな話聞いてないよ」
サブリーダーのルシュアがシリルを睨みつけて、ブリオニーに詰め寄った。
「エルフだからって、こんな小娘の尻に敷かれるなんて。どうしたのよ、ブリオニー!」
他のメンバーも同様に騒ぎ出した。
今までもギルドから助っ人が何人も来たが、役に立たないと見るとブリオニーはすぐに送り返していた。
それがエルフの少女には実力も見ないうちに、骨抜きにされてしまった。
皆納得がいかなかった。
そこに誰かが呟いた。
「もしかしてブリオニーさんはロリコンだったのか。だから今まで独身……」
「えっ? うそだろ。ロリコンなの?」
「俺達のリーダーがロリコン? 威厳の顔の裏に、そんな秘密が……」
話がどんどん違う方向にいき、ブリオニーの白い顔は真っ赤になっていた。
「私はロリコンではない。信じてくれ」
ルシュアも何故か顔を真っ赤にして、メンバーを睨んだ。
「ブリオニーがロリコンな訳ない。私は小さいころから一緒だったけど、ブリオニーは私のことを見向きもしなかったんだから」
みんなが同情の目でルシュアを見た。
「やっぱりルシュアはブリオニーが好きだったんだ」
「そんなの今更だろ? バレバレだったじゃん」
「今はそんな話どうでも良くないか?」
ルシュアはいたたまれなくなってテントを出ていった。
シリルが手を挙げた。
「ブリオニーさんがリーダーでお願いします。ボクはやりたくない。それより早くやっつけに行こうよ」
その言葉に皆が安堵し、ブリオニーも平静に戻った。
「では明日、再度挑戦します」
「今からはダメ? 早く戦いたんだけど」
「今からですか? 準備と休憩をしなくては……」
「ボクひとりでやってもダメ?」
「ひとりでですか。無謀すぎます」
シリルの横柄な態度に、リーダー以外誰もが反感を抱いた。
「そこまで言うなら、ひとりでやってもらいましょうよ、リーダー」
「そうだ、そうだ」
ブリオニーはシリルを諫めることなどとてもできず、みんなの反感もあり、シリルの単独挑戦を認めた。
シリルが危なくなったときは命に代えても守らねばと内心考えていた。
シリルはマンティコアを見て、初めて戦う魔物にワクワクしてきた。
思わず興奮してきて感情が高ぶってきたが、……深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。
「いけない。いけない。暴走しちゃダメだよね」
シリルは一歩ずつマンティコアに接近する。
角鹿の頭部が雷を放つが、シリルはまるで舞うように華麗なステップでその雷をかわしていった。
尻尾の蛇が毒を巻き散らし、獅子の頭が炎を噴いた。
シリルの周りに風の守りと竜巻が起こり、毒は巻き上げられ、炎はシリルを避けて流れた。
「こんなもん? 大したことないな」
シリルに見下されて怒ったのか、魔物が大きく咆哮し威圧を放った。それは周りで観戦して者も感じるほど強かった。
「あはは、結構やるじゃん。でもまだまだだね」
シリルの心は次第に昂ぶり、笑い声が自然と口をついて出た。
マンティコアが動いた瞬間、シリルの感情が頂点に達し威圧を放った。
圧倒的な重圧が周囲を包んだ。
魔物は動けなくなり、よろよろと倒れこんだ。
周りの観戦者も耐えられず、うつ伏せになってしまった。
「なんだ、この威圧の凄さは」
ブリオニーは離れていたにも関わず、立っていることができないほどの威圧に驚いた。
シリルの剣が閃き、音もなく尻尾が宙を舞う。
切り離された尻尾は大きな音を立てて地面に落ちた。
「もっと楽しませてよ」
魔物は雷を放ったが、それをシリルは楽々と回避し、鹿の頭を一刀両断した。
獅子顔が叫び声を上げ、立ち上がり、シリルに襲いかかったが、シリルは目にも留まらぬ速さで躱すと同時に前右脚を切断した。
「あはは、どうした!こいよ」
シリルの感情はどんどん高ぶり、暴走し始めた。
シリルの周りは暴風が吹き荒れ、目が金色に輝きだし神剣が光出した。
獅子が炎のブレスを吐くが、悠々と回避し、前左脚、後左脚。後右脚と切断していった。
もはや魔物は動くこともできなかった。
「あはは!」
シリルの獰猛な笑い声が響き、魔物はただ切り刻まれていった。
そして息も絶え絶えになった獅子の頭に片足を乗せて、シリルは剣を振り下ろした。
「ざま~みろ!」
獅子の頭が切断されると、マンティコアは死に絶えた。
その様子に誰もが恐れおののいた。
「暴風エルフ」
誰かが呟くと、シリルは我に返った。
「しまった! 暴走しちゃった?」
シリルは恐る恐る周りを見回し、死傷者がいないことを確認すると、ほっと胸を撫で下ろした。
「うん、問題ない。問題ない」
そう呟きながらブリオニーたちのもとに戻っていったが、魔物の血で全身血まみれになったエルフの少女に誰もがドン引きしていた。
48階を攻略したシリルは「金の木漏れ日」とともに帰還することになった。
一緒に魔物を倒し、一緒に寝食を共にするうちに、彼らと次第に打ち解けていった。
ブリオニーからは相変わらず敬語で話しかけられて、むず痒い気がするがしないでもなかった。
それよりもブリオニーからエルフの話を聞けたのが大きな収穫だった。
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