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稲荷神

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 稲荷神いなりのかみ


 全国に約三万社ほどある稲荷神社いなりじんじゃに祀られている神。稲荷神社の総本社は、山城国やましろのくに伊奈利山(現在の京都府伏見区)にある伏見稲荷大社ふしみいなりたいしゃで、『山城国風土記ふどき』には伊奈利のルーツについて語られている。それによると元々は、秦の始皇帝の末裔とされる秦氏はたしの氏神として祀った農耕神であり、秦氏の勢力の拡大により稲荷神の名も全国に広まっていった。神名の稲荷は「稲成いねなり」から来ており、一般的には「お稲荷さん」の愛称で親しまれている。食物を司る神とされるため、古事記こじき日本書紀にほんしょきに登場する「宇迦之御魂神うかのみたまのかみ」(もしくは「倉稲魂うかのみたま」)や伊勢神宮外宮げくうに祀られた「豊受大神とようけのおおかみ」とも同一と考えられ、同じ性質を持つ「大気都比売神おおげつひめのかみ」や「保食神うけもちのかみ」も五穀豊穣を守護する神として同一視される。さらには音の付会ふかいから民俗信仰されていた「宇賀神うがじん」などとも習合し、その過程で神徳も広がって農耕だけではなく、殖産興業や商売繁盛の神としても崇められるようになった。ちなみに稲荷神の神使が狐とされるのは、宇迦之御魂神の別名を「御饌津神みけつかみ」とも言い、神名にある「ケツ」が狐の古い言い回しであるという説や、春になると冬眠していた狐が里に下りてくるため、豊穣をもたらす山の神の使いとされたという説などがある。
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