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一反木綿

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 一反木綿いったんもめん


 一反(約十メートル)ほどの白くて薄い木綿布が、夕方や夜などにヒラヒラと飛来してくる妖怪。人をくるみ込んで、窒息死させることもある。水木しげる著の『決定版 日本妖怪大全』によると、鹿児島県の大隅おおすみ地方に現れた妖怪で、志布志しぶし湾近くにそびえる権現山あたりでは、特に子供たちから怖がられていたようだ。見た目はまったく恐ろしくなく、それどころかぼんやりした人などは、洗濯物が風にあおられて飛んでいるくらいにしか思わない。ある夜、ひとりの男が家路を急いでいた。すると、空からスーッと白い布が男の前に落ちてきた。驚いて足を止めると、その白い布が今度は男の首に巻きついてきた。そのとき、男はすばやく脇差わきざしを抜き、白い布を切った。すると、白い布は消えたが、男の手には血飛沫ちしぶきがついていたという。一反木綿はこうして人の首に巻きついたり、または顔面をおおったりして、息の根を止めてしまうのである。そのため『ゲゲゲの鬼太郎』の中に登場する一反木綿は鹿児島弁を使う。しかし伝承とは異なり、愛らしいキャラクターで、鬼太郎たちを助けたり、乗せて移動したりし、活躍する場面も多い。似たような妖怪には、新潟県佐渡島さどがしまに現れるという「ふすま」や『桃山人夜話とうさんじんやわ』に記されている「野鉄砲のでっぽう」などがある。また、物の精ではないかという説もある。
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