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01『黒沼あい話』(2016)
08:相野々
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次の土曜日、学校から帰って来たオレは、成果のほどを訊いてみた。
ユキはこくこくと頷く。なにかしらの新たな発見があったんだろう。
「ん。本当にいだっけ」
向こうのお宅から借りてきたというアルバムを、妹は手にしていた。
そこに挟まれていた、一枚のカラー写真を抜き取る。その写真が、大事に扱われていたのがよくわかる。
ファインダーに満面の笑みを向けた、ユキと瓜二つの少女がそこには佇んでいた。
「おじいさん、泣いてたね。おゆきちゃんに会えたのが、すっごく嬉しかったみたい。この写真も、もらって行っていいって!」
その写真を、ユキはじっと見つめる。そのおじいさんから聞いたという経緯を、妹は話し始めた。
「その人の話によると、三十年前くらいに、お兄ちゃんと全く同じシチュエーションで、おゆきちゃんと遭遇したんだって。そのときも名前がわかんなかったけど、自分がいたのは『黒沼だ』って答えたらしいの」
ユキと初めて会った日の晩、オレたちが訊いたときも「黒沼」と答えていた。
「それから何年かしたあと、黒沼に落ちたんだって。消防隊も出て必死の捜索をしたんだけど、結局見つからずじまいになって……」
「いまに至る、と?」
口籠る妹の代わりに、オレが話を締めくくった。
忽然《こつぜん》と人ひとり消え失せたのだとしたら、当時の新聞に載っていてもおかしくないほど、世間を騒然とさせた大事件だったかもしれない。
今度、当時の新聞記事を読める機会があったら読みたいものだ。
辺鄙な一村で起こった出来事なら載っていない可能性もあるが。
☆
いつの間にか九月になっていた。
なにげなくカレンダーを眺めていたオレは、ふとそんなことを感じた。
毎年、九月の第三日曜日に、鶴ヶ池周辺で祭りが開催される。
村の特産品を使ったイベントが行われ、全国各地から毎年二万人以上の人々が訪れる。
その日は、見事なまでのイベント日和だった。夜になって、辺りが暗くなり始める。
オレが部活終わりで到着したとき、その人は浴衣姿で待っていた。
鶴ヶ池荘の外に、木の柵で囲まれた一角がある。
その中に設けられた足湯スペースでユキと妹は、投げ出した足を気持ち良さそうに浸けさせていた。
「朝からいたのか?」
「うん。ピラミッド大会もやったよ」
妹は快活に答える。
その大会は、十三時頃から十四時頃に行われるイベントで、村の特産品を台の上へ積み上げていき、その高さを競ったものだ。
確か、歴代最高記録が一二〇センチだったか、それとも一三〇センチだったか。
柵の中へ足を踏み入れるまでもなく、周辺には温泉特有の匂いが漂っている。
ラミネート加工の紙が複数枚、柵の内側へ貼られていた。
そこには「菅江真澄はこんな人」や「菅江真澄も訪れた景勝地『鶴ヶ池』」などと書かれている。
☆
江戸時代後期を生きた紀行家「菅江真澄」
当時、ここ鶴ヶ池にも訪れ、季節を彩る山々と風光に嘆称を惜しまず「またなき処なり」と記し、和歌を添えています。
"きしべなる 松のみどりも 影さして 千代もすむらし 鶴の池水"
☆
鶴ヶ池を見るだけに飽き足らず、温泉に入るはぐれ虫もおります。
しつけが行き届かず、大変ご迷惑をおかけしますが、そんなはぐれ虫を見かけた際は、網で救って頂ければ幸いです。
ご面倒お掛け致しますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
☆
掬うと救うが、かかっているのかな。利用者に向けてのお願いが書かれた紙を見て、そんなどうでもいいことを思った。
妹が足湯から上がり、持参のタオルで足を拭いている間、オレは「鶴ヶ池おんせん館『足湯』の温泉成分、禁忌症・適応症【浴用】」を眺める。
☆
『成分』
一、源泉名……新相野々温泉。
二、泉質……ナトリウム・カルシウム―硫酸塩・塩化物泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)。
三、泉温……源泉:六十二・五度、使用位置:四十三・〇度。
四、温泉の主な成分(一キログラム中)……硫酸イオン:一四三〇・〇ミリグラム、ナトリウムイオン:七一三・五ミリグラム、塩素イオン:四六四・一ミリグラム、カルシウムイオン:二二四・四ミリグラム、炭酸水素イオン:六十八・九ミリグラム、カルシウムイオン:十・五ミリグラム。
五、温泉の分析年月日:平成十七年八月二十五日。
『禁忌症・適応症』
一、
浴用の禁忌症……急性疾患(特に熱がある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)。
二、
浴用の適応症……動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病。
療養泉の適応症……神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、打ち身、関節のこわばり、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進。
三、入浴の方法及び注意事項……別に掲示の注意事項をお読み下さい。
四、禁忌症・適応症決定年月日……平成十八年四月十一日。
※禁忌症・適応症は全身浴した場合のものです。飲用は出来ませんので、ご遠慮願います。
☆
ユキも立ち上がり、近くに畳んであったタオルで足を拭く。
それから二人はサンダルを履き、オレたち三人は並んで歩き始めた。
灯りの点った屋台が並ぶ通りを道なりに進む。
ここは普段、車も行き交う道路だが、この日ばかりは通行止めされていた。
鶴ヶ池の畔では、大勢の人たちが犇き合い、周囲に歓声が木霊する。
十八時半を回って、ちょうど祭りも終盤となり、花火大会が始まっていた。
妹が屋台のほうへ突っ走っていく。本当に、花より団子だな。
そしてユキのほうからも、盛大に腹の虫が聞こえた。
彼女は恥ずかしそうに、頬を朱に染める。肌が白いだけに、その変化は余計に大きい。
「なにか買ってやるよ」
オレは財布を取り出して、屋台へと向かった。
屋台を巡りつつ、ときどき見上げて花火を眺める。
「第十七号~~」
男性の声が響き渡り、あとに女性のアナウンスが続いた。
どこが提供した花火か、淡々とした口調で説明していく。
食べ物を両手に持ち、階段を駆け登って擁壁の上へ向かった。
ここは毎年、オレたち二人の特等席の場所だったが、今年はユキがいる。
この祭りは、今年で三十回目ほどの歴史だ。ユキが現れた時代と重なる。
もしかしたら、記念すべき第一回目に居合わせていたかもしれないが、微妙なところだ。
結局、新聞記事も発見するには至らなかったわけだし、正確に何年前かはわからない。
コンクリートの地面にビニール袋を広げ、オレは芝生の上に寝っ転がる。
袋の上に置いた食べ物を摘みながら、オレとユキと妹の三人は、夜空に咲く大輪を鑑賞した。
花火大会も二十時に差しかかり、祭りの大トリとなる「水中花火ショー」が始まる。
こんなときに尿意を催した妹は「ちょっとトイレ~」と言って擁壁を下りて行ってしまった。
この地域出身のシンガーソングライターが歌っている曲が、BGMとして会場中に流れる。
今日は辛いことがあったかもしれない。でも明日になれば、きっといい日になる。
そんな内容の歌詞だった。テレビでも幾度となく聞いたことのある歌である。
その曲に合わせ、打ち上がった花火が水面に映り、壮大な一枚絵のようになった。
照らされたユキの横顔に、オレはちらりと目を向ける。
ツルと出会ってから、たった四ヶ月しか経っていないが、いろんな場所へ行ったものだ。
いろんなことがありすぎて、一度に思い返すのは難しい。
未だに正しい答えは見つかっていない。過去へ戻る方法も、いまを生きていく手段も。
このときアレをしておけばよかった、と後悔する以前に、オレにはどうすることもできなかった問題だ。
遠い昔に過ぎ去った事実を見つめて項垂れているより、まだ可能性のある未来を見つめて、同じ失敗を繰り返さないようにしなければならない。
それが過去に対する、たった一つの、せめてもの償いではないか。
「過去には戻れない。だから、未来を生きるしかないんだ……」
名言っぽく言ったが、これは至極当然のことだった。オレなんかに言われるまでもなく、だからこそ苦しいのだ。
ならば最後に、いま流れている曲の歌詞を引用して、物語の締めくくりに相応しい(?)台詞を吐くことにした。
ユキがそれを、どう捉えるかはわからない。
「ありがとう」と感謝するかもしれないし、「無責任なこと言うな」って怒るかもしれない。
もしかしたら、それ以前に「パクるな」って注意するかもしれない。
しかし、いても立ってもいられない。なにか、ユキに対して言ってやれないだろうか。
ここ数週間の彼女の顔は、とても見ていられるものではなかった。
昼間は元気に振る舞っていても、夜中に泣いている声を、何度も聞いたことがある。
聞こえるか聞こえないかの距離で、オレはぼそりと呟く。
前方を真っ直ぐに見つめ、打ち上がり続ける花火の光を浴び、眩しくもないのに目を細めた。
「大丈夫。笑い合えたら、きっといい日になるよ」
花火に照らされた彼女の顔に、笑みが浮かんでいるのを一瞬、目の端に捉えたような気がした。
(了)
ユキはこくこくと頷く。なにかしらの新たな発見があったんだろう。
「ん。本当にいだっけ」
向こうのお宅から借りてきたというアルバムを、妹は手にしていた。
そこに挟まれていた、一枚のカラー写真を抜き取る。その写真が、大事に扱われていたのがよくわかる。
ファインダーに満面の笑みを向けた、ユキと瓜二つの少女がそこには佇んでいた。
「おじいさん、泣いてたね。おゆきちゃんに会えたのが、すっごく嬉しかったみたい。この写真も、もらって行っていいって!」
その写真を、ユキはじっと見つめる。そのおじいさんから聞いたという経緯を、妹は話し始めた。
「その人の話によると、三十年前くらいに、お兄ちゃんと全く同じシチュエーションで、おゆきちゃんと遭遇したんだって。そのときも名前がわかんなかったけど、自分がいたのは『黒沼だ』って答えたらしいの」
ユキと初めて会った日の晩、オレたちが訊いたときも「黒沼」と答えていた。
「それから何年かしたあと、黒沼に落ちたんだって。消防隊も出て必死の捜索をしたんだけど、結局見つからずじまいになって……」
「いまに至る、と?」
口籠る妹の代わりに、オレが話を締めくくった。
忽然《こつぜん》と人ひとり消え失せたのだとしたら、当時の新聞に載っていてもおかしくないほど、世間を騒然とさせた大事件だったかもしれない。
今度、当時の新聞記事を読める機会があったら読みたいものだ。
辺鄙な一村で起こった出来事なら載っていない可能性もあるが。
☆
いつの間にか九月になっていた。
なにげなくカレンダーを眺めていたオレは、ふとそんなことを感じた。
毎年、九月の第三日曜日に、鶴ヶ池周辺で祭りが開催される。
村の特産品を使ったイベントが行われ、全国各地から毎年二万人以上の人々が訪れる。
その日は、見事なまでのイベント日和だった。夜になって、辺りが暗くなり始める。
オレが部活終わりで到着したとき、その人は浴衣姿で待っていた。
鶴ヶ池荘の外に、木の柵で囲まれた一角がある。
その中に設けられた足湯スペースでユキと妹は、投げ出した足を気持ち良さそうに浸けさせていた。
「朝からいたのか?」
「うん。ピラミッド大会もやったよ」
妹は快活に答える。
その大会は、十三時頃から十四時頃に行われるイベントで、村の特産品を台の上へ積み上げていき、その高さを競ったものだ。
確か、歴代最高記録が一二〇センチだったか、それとも一三〇センチだったか。
柵の中へ足を踏み入れるまでもなく、周辺には温泉特有の匂いが漂っている。
ラミネート加工の紙が複数枚、柵の内側へ貼られていた。
そこには「菅江真澄はこんな人」や「菅江真澄も訪れた景勝地『鶴ヶ池』」などと書かれている。
☆
江戸時代後期を生きた紀行家「菅江真澄」
当時、ここ鶴ヶ池にも訪れ、季節を彩る山々と風光に嘆称を惜しまず「またなき処なり」と記し、和歌を添えています。
"きしべなる 松のみどりも 影さして 千代もすむらし 鶴の池水"
☆
鶴ヶ池を見るだけに飽き足らず、温泉に入るはぐれ虫もおります。
しつけが行き届かず、大変ご迷惑をおかけしますが、そんなはぐれ虫を見かけた際は、網で救って頂ければ幸いです。
ご面倒お掛け致しますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
☆
掬うと救うが、かかっているのかな。利用者に向けてのお願いが書かれた紙を見て、そんなどうでもいいことを思った。
妹が足湯から上がり、持参のタオルで足を拭いている間、オレは「鶴ヶ池おんせん館『足湯』の温泉成分、禁忌症・適応症【浴用】」を眺める。
☆
『成分』
一、源泉名……新相野々温泉。
二、泉質……ナトリウム・カルシウム―硫酸塩・塩化物泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)。
三、泉温……源泉:六十二・五度、使用位置:四十三・〇度。
四、温泉の主な成分(一キログラム中)……硫酸イオン:一四三〇・〇ミリグラム、ナトリウムイオン:七一三・五ミリグラム、塩素イオン:四六四・一ミリグラム、カルシウムイオン:二二四・四ミリグラム、炭酸水素イオン:六十八・九ミリグラム、カルシウムイオン:十・五ミリグラム。
五、温泉の分析年月日:平成十七年八月二十五日。
『禁忌症・適応症』
一、
浴用の禁忌症……急性疾患(特に熱がある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)。
二、
浴用の適応症……動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病。
療養泉の適応症……神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、打ち身、関節のこわばり、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進。
三、入浴の方法及び注意事項……別に掲示の注意事項をお読み下さい。
四、禁忌症・適応症決定年月日……平成十八年四月十一日。
※禁忌症・適応症は全身浴した場合のものです。飲用は出来ませんので、ご遠慮願います。
☆
ユキも立ち上がり、近くに畳んであったタオルで足を拭く。
それから二人はサンダルを履き、オレたち三人は並んで歩き始めた。
灯りの点った屋台が並ぶ通りを道なりに進む。
ここは普段、車も行き交う道路だが、この日ばかりは通行止めされていた。
鶴ヶ池の畔では、大勢の人たちが犇き合い、周囲に歓声が木霊する。
十八時半を回って、ちょうど祭りも終盤となり、花火大会が始まっていた。
妹が屋台のほうへ突っ走っていく。本当に、花より団子だな。
そしてユキのほうからも、盛大に腹の虫が聞こえた。
彼女は恥ずかしそうに、頬を朱に染める。肌が白いだけに、その変化は余計に大きい。
「なにか買ってやるよ」
オレは財布を取り出して、屋台へと向かった。
屋台を巡りつつ、ときどき見上げて花火を眺める。
「第十七号~~」
男性の声が響き渡り、あとに女性のアナウンスが続いた。
どこが提供した花火か、淡々とした口調で説明していく。
食べ物を両手に持ち、階段を駆け登って擁壁の上へ向かった。
ここは毎年、オレたち二人の特等席の場所だったが、今年はユキがいる。
この祭りは、今年で三十回目ほどの歴史だ。ユキが現れた時代と重なる。
もしかしたら、記念すべき第一回目に居合わせていたかもしれないが、微妙なところだ。
結局、新聞記事も発見するには至らなかったわけだし、正確に何年前かはわからない。
コンクリートの地面にビニール袋を広げ、オレは芝生の上に寝っ転がる。
袋の上に置いた食べ物を摘みながら、オレとユキと妹の三人は、夜空に咲く大輪を鑑賞した。
花火大会も二十時に差しかかり、祭りの大トリとなる「水中花火ショー」が始まる。
こんなときに尿意を催した妹は「ちょっとトイレ~」と言って擁壁を下りて行ってしまった。
この地域出身のシンガーソングライターが歌っている曲が、BGMとして会場中に流れる。
今日は辛いことがあったかもしれない。でも明日になれば、きっといい日になる。
そんな内容の歌詞だった。テレビでも幾度となく聞いたことのある歌である。
その曲に合わせ、打ち上がった花火が水面に映り、壮大な一枚絵のようになった。
照らされたユキの横顔に、オレはちらりと目を向ける。
ツルと出会ってから、たった四ヶ月しか経っていないが、いろんな場所へ行ったものだ。
いろんなことがありすぎて、一度に思い返すのは難しい。
未だに正しい答えは見つかっていない。過去へ戻る方法も、いまを生きていく手段も。
このときアレをしておけばよかった、と後悔する以前に、オレにはどうすることもできなかった問題だ。
遠い昔に過ぎ去った事実を見つめて項垂れているより、まだ可能性のある未来を見つめて、同じ失敗を繰り返さないようにしなければならない。
それが過去に対する、たった一つの、せめてもの償いではないか。
「過去には戻れない。だから、未来を生きるしかないんだ……」
名言っぽく言ったが、これは至極当然のことだった。オレなんかに言われるまでもなく、だからこそ苦しいのだ。
ならば最後に、いま流れている曲の歌詞を引用して、物語の締めくくりに相応しい(?)台詞を吐くことにした。
ユキがそれを、どう捉えるかはわからない。
「ありがとう」と感謝するかもしれないし、「無責任なこと言うな」って怒るかもしれない。
もしかしたら、それ以前に「パクるな」って注意するかもしれない。
しかし、いても立ってもいられない。なにか、ユキに対して言ってやれないだろうか。
ここ数週間の彼女の顔は、とても見ていられるものではなかった。
昼間は元気に振る舞っていても、夜中に泣いている声を、何度も聞いたことがある。
聞こえるか聞こえないかの距離で、オレはぼそりと呟く。
前方を真っ直ぐに見つめ、打ち上がり続ける花火の光を浴び、眩しくもないのに目を細めた。
「大丈夫。笑い合えたら、きっといい日になるよ」
花火に照らされた彼女の顔に、笑みが浮かんでいるのを一瞬、目の端に捉えたような気がした。
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