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01『黒沼あい話』(2016)
04:藍婆王山
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女性が教えてくれた藍婆王山を目指して、オレと妹とツルの三人は駅へ向かい、鶴ヶ池の畔に沿って移動した。
駅のすぐ手前を左折して、シャッターが閉まった呉服店を通り過ぎた先の、小さな橋を渡る。
その先に見えた交差点もすぐに右折して、また一本の橋を渡った。眼下には川が流れている。
道の途中で迷いかけたオレたちは、一度だけ通りかかりの人たちに道を訪ねた。
藍婆王山の場所を知っているらしく、近くまで案内してくれるということだった。
また橋が見えてくる。
前の二本とは違って、身長と同じくらいの高さのフェンスに囲われた橋だった。
「三明岡橋」という文字が刻まれている。読み方はわからない。
その橋の眼下には、大小様々な車が流れていた。秋田自動車道が下を通っているのか?
この先は行き止まりのようで、わざわざ藍婆王山へ行くための跨道橋なのだろうか。
道案内をしてくれた人と別れ、オレたち三人は奥へと進む。
「蘭婆王神社 登山口」と書かれた白看板が茂みの中に隠れるように立てられていた。
そこに書かれている表記は、また異なる漢字になっていた。どれが正しいのだろう。
「その格好で大丈夫?」
人のことも言えないが、登山をするには、ワンピースはあまりにも軽装だ。
着替えてから再チャレンジしようと提言したが、ツルは見上げたまま微動だにしなかった。
しかし、ツルの瞳には藍婆王山以外に映っていないようで、真剣な眼差しを山頂へ向けている。
ツルは意を決したように、見上げた状態の高さからそのまま首を振り下ろし、深く大きく頷いた。
「これはおらの問題だがら、ひとりで行っでくる」
立ち去りかけたツルの手を掴んで引き止める。
オレも妹も、両親に似てお節介なのだ。
引き下がれと言われても、はいそうですか、とここまで来たのに、女の子ひとり残して帰るわけにもいかない。
オレが先頭を切って、後ろからツルと妹が続いて歩き始める。
道なりに。といっても、ほとんど道の体を成していない。
わずかに草木が踏まれて獣道ができている程度だった。
オレは拾った枝で、前方に立ちはだかる草を薙ぎ倒し、幾分、楽に後続が歩けるようにしていった。
何度も後ろを振り返って気にかけつつ、異様に曲がりくねった登山道を進み続ける。
急勾配なところは、ほとんど地べたを這う状態で登っていく。
数十分と経たないうちに、次第と息が上がってきた。
部活で体力に多少の自信があるオレでさえこうなのだから、ましてやツルや妹の疲弊ぶりは尋常ではなかった。
ほとんど崖のようなところから下へ、真っ逆さまに落ちそうになった。
伸びている蔓を掴んでみたが、ほとんど千切れて使い物にならない。
それでも、比較的に太くて丈夫な蔓を探し出して、蔓、もとい、藁にもすがる思いで掴みながら、ほとんど垂直な坂道を登っていった。
十五分くらい経っただろうか。
ふと、二人がいないことに気づき、来た道を数歩戻ってみると、曲がり角でしゃがむ妹の背中が見えた。
その正面には、木へと凭れかかったツルが、呼吸を荒くしている。
「大丈夫か?」
オレがそう訊くと、ツルは小さく頷いた。
服にはひっつき虫や泥がつき、どこで怪我をしたのか膝上には擦り傷があり、とても大丈夫そうには見えない。
心配そうにツルのことを介抱する妹も、服に小枝がくっつき、深くはなさそうだが腕には切り傷が刻まれていた。
オレも身体を確認すると、ツルや妹ほどではないが、似たような有様だ。
答えはわかりきっていたが、オレはもう一度ツルに訊く。やっぱり、この軽装で登るべきではなかった。
「もう、きょうは引き返す?」
「嫌」
「……わかった。無理そうだったら、いつでも言っていいから」
そうして、何度か休憩を挟みながら、一時間半ほどかけて登りきった。
なんだか最後は、呆気なかったような気がする。
手水舎もなければ鳥居もない。本殿だけが寂しそうに、ただぽつんと建っていた。
もっと見晴らしがいいかとも思ったが、大木が鬱蒼と生い茂っていて、ほとんど街の風景は見えなかった。
とりあえず社殿の前に立って、手を合わせた。
お参りというものを、ほとんど経験したことのないオレは、ただ目を瞑って頭を下げただけだった。
「藍婆王さま……」
ツルが呟いた。手を合わせたまま、俯いている。「いるっすべか?」
オレもツルの所作に倣って呟く。「どうか……」
藍婆王なのか羅婆王なのか。それとも蘭婆王なのか。
名前は関係ない。ツルの置かれた状況を説明できる人物が、どうか現れてくれますように。
「そこで、なにしてらなだ?」
どこからともなく、誰かの声が響き渡る。社殿の屋根の上で、和装に身を包んだ男性が立っていた。
見た目は三十代くらいの壮年期で、ツルと同様に訛りが強い。「こさ来る物好きは、何年ぶりだべ?」
「藍婆王さん、ですか?」妹が男性に向かって声を発する。
「あ、あのっ! この人、誰かわかりませんか?」
「……知らねな」
男性はツルのほうへ顔を向けるも、嘲笑うように吐き捨てた。
「そんだごど訊くためにわざわざ来たんだが? 残念だども無駄足だったな」
「藍婆王さんは関与していないんですか?」
「関与? なにさ?」
「この人が、記憶をなくしてしまったことか……もしくは、ここへ来てしまったことに」
「我ぁはツル一筋だ。そんた女子に構ってる暇はねえ」
ツルにぞっこんなのは伝説どおりだった。しかし、それよりも気になる発言をしている。
この少女のことを藍婆王も知らないとなると、この人はツルではないということなのか。
「あー、でも。あんの男ならやりかねねな」
「あの男……?」
続けて質問しようと口を開きかけた瞬間、その男性は跡形もなく消え失せてしまった。
結局のところ、ツルの正体も男性の発言もわからずじまいに変わりない。
オレは頭を抱える。ツルはオレ以上に頭が混乱しているようだった。
なんだか、ここへ来るときよりも、謎が増えただけのような気がした。
☆
上りにかかった時間より、下りのときは幾分か早く麓へと着いた。
跨道橋へ足を踏み入れた頃には、時刻は午後六時を過ぎ、日没寸前のところだ。
眼下の車道にはちらほらと、少し早めのヘッドライトを点け始めた車が見える。
なんとか、まだ明るいうちに戻れてよかった。妹はツルに付き添って橋を渡っていく。
ぼんやりとしているのか覚束ない足取りのツルに、妹はそっと腰のところに手を回してリードする。
家に辿り着いた途端、オレたちの格好を見て、母は目を剥いて驚いた。
ここまでの経緯をオレが説明する。
ツルのためにしたことなら仕方ない、と母は思っていたよりも簡単に折れてくれた。
汚れた服を見て、お風呂に入ってしまいなさい、と優しく言い加える。
洗濯機の音が回り始める。湯船の底へ叩きつけるような水音が風呂場から反響してきた。
台所に立った母さんは夕飯の支度を始める。オレと妹はパジャマへ着替えてきた。
お湯が満タンになるまで待ってから、ツルと妹が一緒に風呂場へと向かう。
「冷っこ!」
風呂場から悲鳴に近い叫び声が聞こえた。
なにごとかと立ち上がりかけ、思いとどまったオレは、母さんの報告を待つことにする。
「なにかあった?」
「んー? なんが、湯っこが出たり出ねがったりするみたいだ」
この家も古いからかな、そろそろボイラーもガタが来ているか。
水道が止まるよりマシだが、水風呂で入るのも嫌だな。
髪も乾かないうちに、パタパタとリビングに入ってきた妹へ訊ねる。
「大丈夫だった? お湯、出た?」
「うん。なんとか持ったみたい。お湯出るよ。入ってくる?」
「ああ……」
風呂から上がったツルは、出会ったときと同じ着物に身を包んでいた。
真っ白な薄手の襦袢のような布から伸びた肢体に、オレは本当に白いなと改めて実感する。
オレが風呂から上がったときには、ちょうど夕飯の準備が整っていた。
「おやずみなざい」
「おやすみ~」
まったりとした時間は十時頃に終了し、挨拶を交わしたオレたちは、就寝するために自室へ向かう。
明日こそは、と気合を入れて部活の準備を始めたオレに、妹が聞き捨てならない言葉を発した。
「もう一度、黒沼に行ってみようよ」
「え?」
ツル用に与えられた部屋の前で、妹に引き止められたツルは、目を丸くした。
いつの間にか自分の隣りに来ていた妹に、ツルは戸惑ったような表情をしている。
顎に手を当てて思案顔をした妹の提案に、真っすぐ前方を見つめていたツルは、少し躊躇ったあとに小さく頷く。
お兄ちゃんも行く? と訊かれ速攻で「行く」と返答した。
予定変更。明日も部活は休むことにする。
母さんとの話し合いの結果、明日も午前中から行くことになった。
駅のすぐ手前を左折して、シャッターが閉まった呉服店を通り過ぎた先の、小さな橋を渡る。
その先に見えた交差点もすぐに右折して、また一本の橋を渡った。眼下には川が流れている。
道の途中で迷いかけたオレたちは、一度だけ通りかかりの人たちに道を訪ねた。
藍婆王山の場所を知っているらしく、近くまで案内してくれるということだった。
また橋が見えてくる。
前の二本とは違って、身長と同じくらいの高さのフェンスに囲われた橋だった。
「三明岡橋」という文字が刻まれている。読み方はわからない。
その橋の眼下には、大小様々な車が流れていた。秋田自動車道が下を通っているのか?
この先は行き止まりのようで、わざわざ藍婆王山へ行くための跨道橋なのだろうか。
道案内をしてくれた人と別れ、オレたち三人は奥へと進む。
「蘭婆王神社 登山口」と書かれた白看板が茂みの中に隠れるように立てられていた。
そこに書かれている表記は、また異なる漢字になっていた。どれが正しいのだろう。
「その格好で大丈夫?」
人のことも言えないが、登山をするには、ワンピースはあまりにも軽装だ。
着替えてから再チャレンジしようと提言したが、ツルは見上げたまま微動だにしなかった。
しかし、ツルの瞳には藍婆王山以外に映っていないようで、真剣な眼差しを山頂へ向けている。
ツルは意を決したように、見上げた状態の高さからそのまま首を振り下ろし、深く大きく頷いた。
「これはおらの問題だがら、ひとりで行っでくる」
立ち去りかけたツルの手を掴んで引き止める。
オレも妹も、両親に似てお節介なのだ。
引き下がれと言われても、はいそうですか、とここまで来たのに、女の子ひとり残して帰るわけにもいかない。
オレが先頭を切って、後ろからツルと妹が続いて歩き始める。
道なりに。といっても、ほとんど道の体を成していない。
わずかに草木が踏まれて獣道ができている程度だった。
オレは拾った枝で、前方に立ちはだかる草を薙ぎ倒し、幾分、楽に後続が歩けるようにしていった。
何度も後ろを振り返って気にかけつつ、異様に曲がりくねった登山道を進み続ける。
急勾配なところは、ほとんど地べたを這う状態で登っていく。
数十分と経たないうちに、次第と息が上がってきた。
部活で体力に多少の自信があるオレでさえこうなのだから、ましてやツルや妹の疲弊ぶりは尋常ではなかった。
ほとんど崖のようなところから下へ、真っ逆さまに落ちそうになった。
伸びている蔓を掴んでみたが、ほとんど千切れて使い物にならない。
それでも、比較的に太くて丈夫な蔓を探し出して、蔓、もとい、藁にもすがる思いで掴みながら、ほとんど垂直な坂道を登っていった。
十五分くらい経っただろうか。
ふと、二人がいないことに気づき、来た道を数歩戻ってみると、曲がり角でしゃがむ妹の背中が見えた。
その正面には、木へと凭れかかったツルが、呼吸を荒くしている。
「大丈夫か?」
オレがそう訊くと、ツルは小さく頷いた。
服にはひっつき虫や泥がつき、どこで怪我をしたのか膝上には擦り傷があり、とても大丈夫そうには見えない。
心配そうにツルのことを介抱する妹も、服に小枝がくっつき、深くはなさそうだが腕には切り傷が刻まれていた。
オレも身体を確認すると、ツルや妹ほどではないが、似たような有様だ。
答えはわかりきっていたが、オレはもう一度ツルに訊く。やっぱり、この軽装で登るべきではなかった。
「もう、きょうは引き返す?」
「嫌」
「……わかった。無理そうだったら、いつでも言っていいから」
そうして、何度か休憩を挟みながら、一時間半ほどかけて登りきった。
なんだか最後は、呆気なかったような気がする。
手水舎もなければ鳥居もない。本殿だけが寂しそうに、ただぽつんと建っていた。
もっと見晴らしがいいかとも思ったが、大木が鬱蒼と生い茂っていて、ほとんど街の風景は見えなかった。
とりあえず社殿の前に立って、手を合わせた。
お参りというものを、ほとんど経験したことのないオレは、ただ目を瞑って頭を下げただけだった。
「藍婆王さま……」
ツルが呟いた。手を合わせたまま、俯いている。「いるっすべか?」
オレもツルの所作に倣って呟く。「どうか……」
藍婆王なのか羅婆王なのか。それとも蘭婆王なのか。
名前は関係ない。ツルの置かれた状況を説明できる人物が、どうか現れてくれますように。
「そこで、なにしてらなだ?」
どこからともなく、誰かの声が響き渡る。社殿の屋根の上で、和装に身を包んだ男性が立っていた。
見た目は三十代くらいの壮年期で、ツルと同様に訛りが強い。「こさ来る物好きは、何年ぶりだべ?」
「藍婆王さん、ですか?」妹が男性に向かって声を発する。
「あ、あのっ! この人、誰かわかりませんか?」
「……知らねな」
男性はツルのほうへ顔を向けるも、嘲笑うように吐き捨てた。
「そんだごど訊くためにわざわざ来たんだが? 残念だども無駄足だったな」
「藍婆王さんは関与していないんですか?」
「関与? なにさ?」
「この人が、記憶をなくしてしまったことか……もしくは、ここへ来てしまったことに」
「我ぁはツル一筋だ。そんた女子に構ってる暇はねえ」
ツルにぞっこんなのは伝説どおりだった。しかし、それよりも気になる発言をしている。
この少女のことを藍婆王も知らないとなると、この人はツルではないということなのか。
「あー、でも。あんの男ならやりかねねな」
「あの男……?」
続けて質問しようと口を開きかけた瞬間、その男性は跡形もなく消え失せてしまった。
結局のところ、ツルの正体も男性の発言もわからずじまいに変わりない。
オレは頭を抱える。ツルはオレ以上に頭が混乱しているようだった。
なんだか、ここへ来るときよりも、謎が増えただけのような気がした。
☆
上りにかかった時間より、下りのときは幾分か早く麓へと着いた。
跨道橋へ足を踏み入れた頃には、時刻は午後六時を過ぎ、日没寸前のところだ。
眼下の車道にはちらほらと、少し早めのヘッドライトを点け始めた車が見える。
なんとか、まだ明るいうちに戻れてよかった。妹はツルに付き添って橋を渡っていく。
ぼんやりとしているのか覚束ない足取りのツルに、妹はそっと腰のところに手を回してリードする。
家に辿り着いた途端、オレたちの格好を見て、母は目を剥いて驚いた。
ここまでの経緯をオレが説明する。
ツルのためにしたことなら仕方ない、と母は思っていたよりも簡単に折れてくれた。
汚れた服を見て、お風呂に入ってしまいなさい、と優しく言い加える。
洗濯機の音が回り始める。湯船の底へ叩きつけるような水音が風呂場から反響してきた。
台所に立った母さんは夕飯の支度を始める。オレと妹はパジャマへ着替えてきた。
お湯が満タンになるまで待ってから、ツルと妹が一緒に風呂場へと向かう。
「冷っこ!」
風呂場から悲鳴に近い叫び声が聞こえた。
なにごとかと立ち上がりかけ、思いとどまったオレは、母さんの報告を待つことにする。
「なにかあった?」
「んー? なんが、湯っこが出たり出ねがったりするみたいだ」
この家も古いからかな、そろそろボイラーもガタが来ているか。
水道が止まるよりマシだが、水風呂で入るのも嫌だな。
髪も乾かないうちに、パタパタとリビングに入ってきた妹へ訊ねる。
「大丈夫だった? お湯、出た?」
「うん。なんとか持ったみたい。お湯出るよ。入ってくる?」
「ああ……」
風呂から上がったツルは、出会ったときと同じ着物に身を包んでいた。
真っ白な薄手の襦袢のような布から伸びた肢体に、オレは本当に白いなと改めて実感する。
オレが風呂から上がったときには、ちょうど夕飯の準備が整っていた。
「おやずみなざい」
「おやすみ~」
まったりとした時間は十時頃に終了し、挨拶を交わしたオレたちは、就寝するために自室へ向かう。
明日こそは、と気合を入れて部活の準備を始めたオレに、妹が聞き捨てならない言葉を発した。
「もう一度、黒沼に行ってみようよ」
「え?」
ツル用に与えられた部屋の前で、妹に引き止められたツルは、目を丸くした。
いつの間にか自分の隣りに来ていた妹に、ツルは戸惑ったような表情をしている。
顎に手を当てて思案顔をした妹の提案に、真っすぐ前方を見つめていたツルは、少し躊躇ったあとに小さく頷く。
お兄ちゃんも行く? と訊かれ速攻で「行く」と返答した。
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