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02『お前の名は。』(2017)
01:高校にて。
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スマホを取り出して時刻を確認すると、もうすぐで午後十時になるところだった。
すでに終電はしているが、まだ待合所には明かりが点いている。わたしは中に入って、長椅子にもたれかかった。
なにをするわけでもなく、ただぼんやりと虚空を見つめる。真正面のガラスに写った自分と目が合った。
この駅は普段から通学に利用しているが、電車が一本も通らない今の時間帯にも、ときどきこうして訪れる。
ほかの人が誰もいない、この空間は静かで、一番のお気に入りだった。
硬い木の感触を撫でていると、ふかふかしたものが指先に当たる。長椅子の上に置かれた座布団のあいだに、透明なケースが置かれていた。
その中に入っている、「駅ノート」と書かれた紙が貼られた大学ノートが見える。
隅には「No.2」と小さく書かれていて、どうやら前のはページが埋まってしまったようだ。
以前あったノートに貼られていたものは、白い紙に黒い文字で「交流ノートNo.1」と大書された簡素なものだった。
しかし今回は、青がベースの紙に白い文字で「駅ノート」と書かれ、この駅に電車が停まっている切り絵みたいなシルエットも描かれ、かなり凝ったデザインになっている。
ケースのファスナーを開けて大学ノートを取り出し、パラパラとめくって意味もなく眺める。
最初のページには鉄道の職員からのコメントがあり、三月に訪れた人たちからの書き込みで始まっていた。
かなり遠い場所から訪れた人もいるようだった。
ほとんどの人たちがノートに書き込んでいく、誰かの名前を尋ねる言葉……これがなにを意味しているのか。
しばらく考えた末にようやく、去年流行ったアニメ映画のタイトルであることを思い出した。
この駅が、映画だかなんだかの舞台だかなんだかに使われたとか使われていないとか。
そんな話がどこからか出て、地域を盛り上げるためだかなんだかに、この駅を訪れたファン用に置いているとかいないとかいう、そんな感じのノートだったように記憶している。
いちいち映画館まで行って観るということが、わたしの十七年の人生の中で、一回か二回くらいのものだ。
秋田市のTOHOシネマにしても、大仙市のイオンシネマにしても、ほどよく遠い距離にあるので、その映画も観には行っていない。
待合所の窓を開け、外の風景をぼんやり眺める。
外灯がちらついたような気がして、周りを見回して確認した。今度は中の明かりが明滅する。
その直後、肩になにかが触れた感じがして、わたしはびっくりして立ち上がった。
その物体は「ゴトッ」という鈍い音を立てて、待合所の長椅子に横たわる。
その音がしたほう、さっきまでわたしが座っていたところへ目を向けると、そこには若い男性がいた。
「痛た……」と頭を摩りながら、もぞもぞと起き上がる。わたしはパニクって、咄嗟に顔を背けた。
いつからいたんだろう? 前の電車に乗って来た観光客が、まだ残っていたのだろうか? いや、それはない。
なぜならさっきまで、誰もいなかったはずだからだ。
それは間違いない。それなのに、なにがどうなっているのかわからない。
考えを巡らせすぎたせいか、目眩がしてよろめいた。すると男性が口を開く。
「このは?」
一瞬、なにを言ったのかわからなかった。
さらに男性が言葉を続けたところで、わたしは自分の耳を疑った。
余計に頭が混乱する。
「いわなが、このは?」
「えっ?」
それは、わたしの名前「岩永このは」だった。
どうして、わたしの名前を? そんな疑問を尻目に、男性は大きな欠伸をした。
手を挙げながら背筋を伸ばし、眠そうに目を瞬く。
よく見ると高校の制服を着ていて、わたしとたぶん同じくらいの年齢なのだろう。
それにしても。
男性が着ている制服は、前に閲覧していたサイトで見たことのあるものだった。
東京の、とある高校で使用されている制服と、酷似している。
制服ばかりに気を取られて、こちらを男性が見ていることに気づかなかった。
「夢を見てるのかな……」そう言って、徐ろに立ち上がる。
「ククルカン流星群を見てたはずなのに、つい寝てしまったみたいだ」
流星群?
男性は謎の単語を発して、ドアをカラカラと開ける。
静寂な世界に、甲高い音が響く。
辺りを見回すと、ぼそりと呟いた。
「……懐かしい風景。そういえば好きだったな、ここ」
懐かしい? ということは、前に来たことがあるのか。
でも、住んではいないのだろう。だって知らない人だ。
外に出た男性は、ホームの上から線路を見下ろす。それから、しばらく夜空を見上げていた。
わたしは帰ろうとして、男性の横をすり抜ける。早いところ、ここから立ち去りたい。
ホームを横断している途中、また外灯と待合所の明かりが消えたり点いたりした。
その一瞬、ホームが月明かりだけの薄暗さになり、妙な感覚がして振り返って見る。
さっきまでいた男性が、どこにもいなかった。
不思議に思って待合所の中も確認するが、人が隠れるようなスペースもない。
階段を下りてホームの下も見てみた。やはり、どこにも誰もいない。男性は忽然と姿を消してしまった。
まるで、夢を見ているかのようだ。もしかしたら、本当に夢でも見ていたのかもしれない。
……疲れてるんだ、きっと。十時半になるし、もう帰って寝よう。
~ ~ ~ ~ ~
朝、目覚まし時計の音で起きたわたしは、ハンガーにかかった制服に着替えて階下へと向かった。
台所のほうから、美味しそうな香りが漂ってくる。朝食を作っているのは、隣りの家のお祖母ちゃんだ。
あいさつを済ませ、仏間の母に手を合わせる。数年前に母が亡くなってから、父との二人暮らしだ。
しかし、普段は仕事が忙しいらしく、家にいることは少ない。わたしにとって隣りの家のお祖母ちゃんは、親代わりも同然だった。
身支度を終えて「行ってきます」と告げる。通学に使っている駅は、家からものの百数十メートルの距離だった。
寄り道をしたところで、充分に着ける時刻ではある。周りの風景を眺めながら、のんびり行こうと思った。
わたしが生まれたときから、変わり映えのしない景色が広がっている。
よく言えば長閑な片田舎、悪く言えば不便極まりない僻地。
でも、そんな静かな空間が好きだったのに、観光客の人とばったり鉢合わせないかと、それが最近は気がかりになっていた。
道端に植えられた花が、車に轢かれている跡を、ときどき見かける。
商業的な施設もなにもないのに、去年から多くの人々が、この駅を訪れるようになった。
しかし、その中で電車を利用せずに、車で直接来る人もいる。
無人駅で駐車スペースはなく、狭い道路で転回もできない。
しかも一本道なので、バックをするにも百メートルほど戻らなければならない。
夜間にライトが光り、車のエンジン音がするときもあって、本当に迷惑だった。
階段を上ってホームへと入る。とりあえずはホームの上に誰もいないようなので、わたしはホッと胸を撫で下ろした。
駅舎はなく、小さな待合所だけがある。こんな駅に、わざわざ来るなんて、物好きな人たちもいたものだ。
待合所の扉をカラカラと開ける。どうやら待合所の中にも、人は誰もいないようだった。
それから少しして、上りの電車が来る。
乗ってしばらく揺られたのち、空いていた座席は次第に、通学する顔馴染みたちで埋まりだしていた。
だが満員になることはなく、本を読んで時間を潰しているうちに終点へと着いた。
そこからは約十五分かけて、徒歩での道のりが続く。
高校を歩いて通うのは難しい。車で行くとなると、往路だけでも三十分以上だ。
この地域を走る内陸線を使っても、最寄り駅までは約四十五分ほどかかる。
ほんの数年前までは、車で三十分ほどの距離に別の高校があったが、統廃合して現在の高校が新しくできた。
前あった高校へは、電車で二十分ほどかけて、高校の最寄り駅まで行き、そこから徒歩で、さらに二十分ほどかかるらしい。
父はそこのOBだそうだが、わたしが中学一年生のときに廃校してしまった。
午前九時十分すぎ。校門をくぐって、いつもと変わらない日常を送る。どこにでもある、ありふれた世界。
朝には内履きがどこかに行っていて、昼には弁当がどこかに行っている。
それも変わらない、いつもどおりの日常だった。
クラス全員がハブるくらい大胆にやってくれたほうが、むしろ対処のしようもあってよかったかもしれない。
しかし、普通に親友と呼べる人もいて、それなりに学校生活は楽しいものだった。
「……つまり、この『ダストトレイル』に地球が接近することで、流れ星として観測されるわけです」
先生が黒板に向かって図を描く。現在、天体についての授業中だった。
彗星が太陽に最も近づくとき、その周辺に「流星物質」というものを放出する。
その集合体のことを「ダストトレイル」と呼ぶそうだ。
「数日前から『イシュタム流星群』が観測されているので、みなさんも夜空を見上げてみましょう。一時間に数個ほど、見つけることができるかもしれません」
先生の話を聞いていて、わたしはハッとする。
そういえば、昨日夢に出てきた男性も、流星群を見ていたと言っていた。
けれど、なぜか流星群の名前が違うような気がする。
夢の割りにリアリティがあったけど、所詮夢は夢か。
すでに終電はしているが、まだ待合所には明かりが点いている。わたしは中に入って、長椅子にもたれかかった。
なにをするわけでもなく、ただぼんやりと虚空を見つめる。真正面のガラスに写った自分と目が合った。
この駅は普段から通学に利用しているが、電車が一本も通らない今の時間帯にも、ときどきこうして訪れる。
ほかの人が誰もいない、この空間は静かで、一番のお気に入りだった。
硬い木の感触を撫でていると、ふかふかしたものが指先に当たる。長椅子の上に置かれた座布団のあいだに、透明なケースが置かれていた。
その中に入っている、「駅ノート」と書かれた紙が貼られた大学ノートが見える。
隅には「No.2」と小さく書かれていて、どうやら前のはページが埋まってしまったようだ。
以前あったノートに貼られていたものは、白い紙に黒い文字で「交流ノートNo.1」と大書された簡素なものだった。
しかし今回は、青がベースの紙に白い文字で「駅ノート」と書かれ、この駅に電車が停まっている切り絵みたいなシルエットも描かれ、かなり凝ったデザインになっている。
ケースのファスナーを開けて大学ノートを取り出し、パラパラとめくって意味もなく眺める。
最初のページには鉄道の職員からのコメントがあり、三月に訪れた人たちからの書き込みで始まっていた。
かなり遠い場所から訪れた人もいるようだった。
ほとんどの人たちがノートに書き込んでいく、誰かの名前を尋ねる言葉……これがなにを意味しているのか。
しばらく考えた末にようやく、去年流行ったアニメ映画のタイトルであることを思い出した。
この駅が、映画だかなんだかの舞台だかなんだかに使われたとか使われていないとか。
そんな話がどこからか出て、地域を盛り上げるためだかなんだかに、この駅を訪れたファン用に置いているとかいないとかいう、そんな感じのノートだったように記憶している。
いちいち映画館まで行って観るということが、わたしの十七年の人生の中で、一回か二回くらいのものだ。
秋田市のTOHOシネマにしても、大仙市のイオンシネマにしても、ほどよく遠い距離にあるので、その映画も観には行っていない。
待合所の窓を開け、外の風景をぼんやり眺める。
外灯がちらついたような気がして、周りを見回して確認した。今度は中の明かりが明滅する。
その直後、肩になにかが触れた感じがして、わたしはびっくりして立ち上がった。
その物体は「ゴトッ」という鈍い音を立てて、待合所の長椅子に横たわる。
その音がしたほう、さっきまでわたしが座っていたところへ目を向けると、そこには若い男性がいた。
「痛た……」と頭を摩りながら、もぞもぞと起き上がる。わたしはパニクって、咄嗟に顔を背けた。
いつからいたんだろう? 前の電車に乗って来た観光客が、まだ残っていたのだろうか? いや、それはない。
なぜならさっきまで、誰もいなかったはずだからだ。
それは間違いない。それなのに、なにがどうなっているのかわからない。
考えを巡らせすぎたせいか、目眩がしてよろめいた。すると男性が口を開く。
「このは?」
一瞬、なにを言ったのかわからなかった。
さらに男性が言葉を続けたところで、わたしは自分の耳を疑った。
余計に頭が混乱する。
「いわなが、このは?」
「えっ?」
それは、わたしの名前「岩永このは」だった。
どうして、わたしの名前を? そんな疑問を尻目に、男性は大きな欠伸をした。
手を挙げながら背筋を伸ばし、眠そうに目を瞬く。
よく見ると高校の制服を着ていて、わたしとたぶん同じくらいの年齢なのだろう。
それにしても。
男性が着ている制服は、前に閲覧していたサイトで見たことのあるものだった。
東京の、とある高校で使用されている制服と、酷似している。
制服ばかりに気を取られて、こちらを男性が見ていることに気づかなかった。
「夢を見てるのかな……」そう言って、徐ろに立ち上がる。
「ククルカン流星群を見てたはずなのに、つい寝てしまったみたいだ」
流星群?
男性は謎の単語を発して、ドアをカラカラと開ける。
静寂な世界に、甲高い音が響く。
辺りを見回すと、ぼそりと呟いた。
「……懐かしい風景。そういえば好きだったな、ここ」
懐かしい? ということは、前に来たことがあるのか。
でも、住んではいないのだろう。だって知らない人だ。
外に出た男性は、ホームの上から線路を見下ろす。それから、しばらく夜空を見上げていた。
わたしは帰ろうとして、男性の横をすり抜ける。早いところ、ここから立ち去りたい。
ホームを横断している途中、また外灯と待合所の明かりが消えたり点いたりした。
その一瞬、ホームが月明かりだけの薄暗さになり、妙な感覚がして振り返って見る。
さっきまでいた男性が、どこにもいなかった。
不思議に思って待合所の中も確認するが、人が隠れるようなスペースもない。
階段を下りてホームの下も見てみた。やはり、どこにも誰もいない。男性は忽然と姿を消してしまった。
まるで、夢を見ているかのようだ。もしかしたら、本当に夢でも見ていたのかもしれない。
……疲れてるんだ、きっと。十時半になるし、もう帰って寝よう。
~ ~ ~ ~ ~
朝、目覚まし時計の音で起きたわたしは、ハンガーにかかった制服に着替えて階下へと向かった。
台所のほうから、美味しそうな香りが漂ってくる。朝食を作っているのは、隣りの家のお祖母ちゃんだ。
あいさつを済ませ、仏間の母に手を合わせる。数年前に母が亡くなってから、父との二人暮らしだ。
しかし、普段は仕事が忙しいらしく、家にいることは少ない。わたしにとって隣りの家のお祖母ちゃんは、親代わりも同然だった。
身支度を終えて「行ってきます」と告げる。通学に使っている駅は、家からものの百数十メートルの距離だった。
寄り道をしたところで、充分に着ける時刻ではある。周りの風景を眺めながら、のんびり行こうと思った。
わたしが生まれたときから、変わり映えのしない景色が広がっている。
よく言えば長閑な片田舎、悪く言えば不便極まりない僻地。
でも、そんな静かな空間が好きだったのに、観光客の人とばったり鉢合わせないかと、それが最近は気がかりになっていた。
道端に植えられた花が、車に轢かれている跡を、ときどき見かける。
商業的な施設もなにもないのに、去年から多くの人々が、この駅を訪れるようになった。
しかし、その中で電車を利用せずに、車で直接来る人もいる。
無人駅で駐車スペースはなく、狭い道路で転回もできない。
しかも一本道なので、バックをするにも百メートルほど戻らなければならない。
夜間にライトが光り、車のエンジン音がするときもあって、本当に迷惑だった。
階段を上ってホームへと入る。とりあえずはホームの上に誰もいないようなので、わたしはホッと胸を撫で下ろした。
駅舎はなく、小さな待合所だけがある。こんな駅に、わざわざ来るなんて、物好きな人たちもいたものだ。
待合所の扉をカラカラと開ける。どうやら待合所の中にも、人は誰もいないようだった。
それから少しして、上りの電車が来る。
乗ってしばらく揺られたのち、空いていた座席は次第に、通学する顔馴染みたちで埋まりだしていた。
だが満員になることはなく、本を読んで時間を潰しているうちに終点へと着いた。
そこからは約十五分かけて、徒歩での道のりが続く。
高校を歩いて通うのは難しい。車で行くとなると、往路だけでも三十分以上だ。
この地域を走る内陸線を使っても、最寄り駅までは約四十五分ほどかかる。
ほんの数年前までは、車で三十分ほどの距離に別の高校があったが、統廃合して現在の高校が新しくできた。
前あった高校へは、電車で二十分ほどかけて、高校の最寄り駅まで行き、そこから徒歩で、さらに二十分ほどかかるらしい。
父はそこのOBだそうだが、わたしが中学一年生のときに廃校してしまった。
午前九時十分すぎ。校門をくぐって、いつもと変わらない日常を送る。どこにでもある、ありふれた世界。
朝には内履きがどこかに行っていて、昼には弁当がどこかに行っている。
それも変わらない、いつもどおりの日常だった。
クラス全員がハブるくらい大胆にやってくれたほうが、むしろ対処のしようもあってよかったかもしれない。
しかし、普通に親友と呼べる人もいて、それなりに学校生活は楽しいものだった。
「……つまり、この『ダストトレイル』に地球が接近することで、流れ星として観測されるわけです」
先生が黒板に向かって図を描く。現在、天体についての授業中だった。
彗星が太陽に最も近づくとき、その周辺に「流星物質」というものを放出する。
その集合体のことを「ダストトレイル」と呼ぶそうだ。
「数日前から『イシュタム流星群』が観測されているので、みなさんも夜空を見上げてみましょう。一時間に数個ほど、見つけることができるかもしれません」
先生の話を聞いていて、わたしはハッとする。
そういえば、昨日夢に出てきた男性も、流星群を見ていたと言っていた。
けれど、なぜか流星群の名前が違うような気がする。
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