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第一部 第一章 異世界転移の篇

32-3 袋に入っていたもの

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 アイはもう一つの大きな袋を手にする。袋を開けるとガラガラと多くの木製の武具が出てきた。

アユミ「これには……木剣もっけんとか木槍とかが入ってるって。」
アカリ「なるほど…普段はこれで稽古けいこしろってことね……」

 アイは入ってる武具を一つ々々確認する。

アイ「竹刀しないはないか…」
ルカ「稽古って、こんな木の棒で練習して、痛くないの?」
アカリ「残念ながら、やっぱ痛い…木剣って竹刀みたいに打撃を弱めたりしないからね…」
アイ「防具もないし…」
ツグミ「こんなので練習して大丈夫?…」

アイ「でも、真剣では練習できないわけだから、無いよりはずっといいよ。」
ソラ「えー、これでアイとかに叩かれたら痛てぇよー…」
アカリ「そこは手加減するから…」
アイ「それはどうかな?(笑)…」
ソラ「ほら!こいつ、こんなこと言ってるよー…」
アユミ「ハイハイ…残りの袋も確認しないと……」

 まだ大きな袋が三つも残っていて、ルカがその一つを開けてみる。

ルカ「ねえ、みんな!いろんな調理器具が入ってるよ!おなべとかボールとか…」
ソラ「マジで!」
ナオ「えー、全部引っ張り出そうよ!」

 袋の中身を出すと調理器具だけでなく、日常生活のための道具がたくさん出てきた。
 調理器具では大小の鍋やボールに加えて大きな焼きあみや鉄板、フライパンになぜかダッチオーブンまであり、おまけに作業のための低い机が3台も入っている。

ナオ「包丁とかもあるかな?」
ツグミ「大丈夫。包丁も三つあるし、おはしやお玉やしゃもじ、フライ返しもあるよ。」
ルカ「ナイフもフォークもスプーンも数あるし…トングや鍋つかみも…」
アユミ「計量カップに計量スプーンまで入ってる(笑)。」
ソラ「お店出すんじゃないって(笑)。」

 これまで家で使ってたような物が並んで、みんな苦笑いを浮かべる。

タクミ「こっちは手斧ておのなたにのこぎりに…かまもある。」
アカリ「スコップとかシャベルとかもあるけど、いいの?(笑)」
アイ「これはやすりかな…それに巻きじゃくとか竹尺たけじゃくとか…」
ソラ「何これ?もりと釣り竿ざおじゃない?で、針と糸は?」
ルカ「これたぶん針と糸だよ…」
アカリ「マジで?りしろって?…」

アユミ「誰か、まな板見てない?」
ツグミ「ここに木製のまな板、3枚もあるよ。
モア「この変な道具って、何?」
タクミ「これはきり。穴開けるやつだよ。
 あとはバケツがあって洗面器とタライがあって、木づちに金づちにくぎ抜きまで…」
アイ「何?私たち、ここでDIYして生きてっけこと?」
ソラ「ちょっと至れり尽くせり過ぎない(笑)。」

 ソラだけでなく、ナオやアカリもあきれ顔をする。
 モアは木の板でできた道具を持ち上げて、首をかしげた。

モア「この波々となってる板は?」
ツグミ「それっておばあちゃんの家で見たことあるよ。それで洗濯するんだって…」
ナオ「洗濯板だって……」
モア「こんなんで洗濯なんてできんの?」

 板の形と洗濯が全然結びつかないモアにツグミが説明する。

ツグミ「服に洗剤をかけて、それからこの波形のところでゴシゴシこすって汚れを落したんだって。」
モア「ウソだー。」
ナオ「ホントだよ。洗濯機ができるまで、そうやって洗濯してたんだって…」
ソラ「『洗浄せんじょう』かけるだけじゃダメなの?…」
ナオ「擦ったりして、始めて汚れが布から離れていくんだって…」
ソラ「へぇー…」
アカリ「明日からみんな、交代で洗濯だね。」
モア「えー、たいへんすぎるよー…」
全員「(笑)」 

 モアが大きな声を出すのを見て、みんなが笑った。
 別の袋を見ると、大量の紐とペグ、そして釘をはじめ、大小の洗濯ばさみや安全ピン、裁縫さいほう道具、ハサミやつめ切りのような小物などがたくさん入っていた。
 
ルカ「ホントに何でもそろってる…」

 ナオが同じ袋に入っていた大きめの袋を開ける。

ナオ「ねぇ、これってブラシとかくしとかじゃない?」
アカリ「なになに?見せて見せて?」 
モア「ホントだ…他のは何?」
ナオ「他は髪留めのピンとかゴムとか…」
アイ「ねえ、私にも見せて…」

 ナオが袋の中身を取り出すとブラシと櫛は人数分より多くあり、髪留めのピンやゴムも形状ごとに小分けにされて大量に入っている。さらに理髪店や美容院で見るようなハサミまである。

モア「コスメはないね……」
アユミ「せめて髪だけでも整えたかったから……」
ナオ「そうね、これぐらいは欲しかったね。」
アイ「こんなハサミあってもさ、誰か髪切れるの?」

 アイが理髪用のハサミをチョキチョキと開いたり閉じたりするのを見て、ルカが恥ずかしそうに手を挙げた。

ソラ「えー、ルカって髪切って整えられるの?」
アイ「すげえよ!」
ルカ「…違うの…昨日、『理髪・美髪』という能力が付いたから…でも、まだ付いたばっかだし…上手くできるかどうか、わかんないよ…」
アカリ「贅沢ぜいたく言わなきゃ、少しぐらい切ってもらってもいいんじゃない。だんだん伸びちゃうし…」
ナオ「でも…鏡も無しでいいの?…」

 するとタクミが最後に残った袋を指差す。

タクミ「これって、鏡じゃないかな……この袋、スゲー重かったし……」
ソラ「どれどれ…重い、これ!」
アユミ「気をつけてね……鏡だと危ないよ…」

 慌ててタクミやルカがソラに手を貸して中のものを引っ張り出す。するとやはりそれは布につつまれた姿見の鏡だ。
 それ以外にも半身を写すための四角い鏡が一枚と手鏡が3枚入っていた。 

ルカ「なんか凄いね……」
ナオ「鏡もチートだよ。この小屋もガラス窓じゃなかったから、たぶんこの世界にはまだガラスはないと思う。そこにこんなおっきい鏡なんて……」
モア「鏡って、いつでもあるんじゃないんだ……」
アユミ「そう、昔は金属を磨いて、そこに写った姿を見てたから…」
アイ「でも、これって普段私たちが使ってるのと同じでしょ。」
ソラ「だから、チートなんだって(笑)…」
ルカ「こんなものまであるって……」

 改めて袋から出てきた大量の武器や道具をながめて、みんなちょっと言葉を失う。

アカリ「お礼を言えばいいのかどうか……」
ソラ「こんなの要らないから、帰りの乗り物を用意して欲しいんだけど…」
ナオ「まあ、気持ちはわかるけど……とにかく生活に必要なものはいろいろもらえたみたいね……」
アユミ「まあまあ、とりあえず貰ったものを使って、今晩はハムかソーセージでも焼こうよ…」
ソラ「それ、大賛成‼」
モア「アガるー‼」
アイ「じゃあ、とにかくこの袋をまずは片付けよう!(笑)」

 アユミの言葉で元気づいた一同は、それぞれに作業を始めた。







*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
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 2025年12月2日
 文字数がかなり多いエピソードが増えてきましたので、エピソードを分割して読みやすくしていきます。
 現状では文字数で機械的に分割を行っていますので、単純にページが増えているという感じでお読み下さい。
 こちらもマイペースで進行いたしますので、ご容赦ください。
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