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第一部 第一章 異世界転移の篇
1 放課後の居残り作業
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ゴールデンウィーク明けのある日。
6時間目が終わると高校生はみな、それぞれが部活へ行ったり、街に繰り出したり、一直線に家に向かったり、友達とバカ話を延々としたりして過ごす。
そんな放課後に、S学園の3年D組では何人かの男女が近々ある遠足の栞作りのために居残りをしていた。
「何人かの男女」と言ったが、男子は真ん中に座っている真中巧、ただ一人。他は全員女子。
それもその筈、S学園は一昨年女子校から共学に変わったばかりで、このクラスでも35人中、男子は巧を入れてたった5人しかいない。
作業のために机を5つ、横並びにしてちょうどその真ん中、その巧の席をすぐ前の机の上からショートヘアの女の子が何度も蹴っていた。
「ほらぁ、巧!サッサと終わらせなよ!いつまでも部活に行けないだろ。」
巧の机をずっと蹴って急がせているこの女子は、河合愛。
剣道部のエースで、おまけにキャプテンまで務めている。スポーツ女子らしいボーイッシュな風貌が最近道着姿でネットで紹介されて美人剣士と話題になっている。
確かにそのキラリと光る瞳と美しいラインを描く鼻筋、短髪の黒髪が似合う均整の取れた顔は制服の紺ブレ、薄紺のチェックのスカート姿でも間違いなく美少女なのだが、巧には全く容赦ない。
おまけに巧とは中学一年からずっと同じクラスという腐れ縁なのだ。
「蹴、る、の、を、や、め、ろ。何、も、で、き、な、い、だ、ろ。」
「ハイハイ、さっさとお仕事、お仕事(笑)。」
今や催促でも何でもなく、ただ机を蹴ることを楽しんでいる愛は巧で居残りの不満を発散させていた。
「愛も手伝いなよ。そうすりゃすぐに終わるんだから(笑)。」
作業の手を止めて笑いながら声をかけたのは愛と同じ剣道部の部員、小川明莉。
愛と明莉は親友同士でいつも一緒にいる。
愛とは対照的に美しいロングヘアしており、長身で整った顔、切れ長の眼と鋭い視線をしていて、対戦相手の女子からは「氷の微笑」とか言われているらしい。
愛は蹴り疲れたのか今度は机の上で足をぶらぶらさせた。
「わたしはいいの。がんばるのは部活だけにしてるから。ったく、こんなことまで選ばれなくてもいいのに…。」
「とか言いながら、巧の邪魔してるだけじゃん。」
「こいつがグズグズして進まないから、手伝ってるわけ…。」
「手伝ってるって、言い方(笑)…。」
愛が悪びれずに言ったので、明莉はケラケラと笑い出す。巧は憮然としながら机を直して作業を再開した。
少数男子というクラスの底辺だと、仕事が回ってくるだけじゃない。様々な迫害に耐えねばならない。
おまけに巧本人は160㎝と言い張るが、実際には160㎝を切っているその身長では愛や明莉をはじめ、多くの女子に実際に見下ろされてしまっている。
巧はうつむいて上目づかいで愛を見るが、聞こえないように口の中でぼそぼそと文句を言った。
「まあまあ、みんなでやって、早く終わらせよう。」
そう手を動かしながら言うのは鈴木歩。
ショートヘアと笑顔がトレードマークで、しかも面倒見が良く、クラスの作業の度に中心になって働いている。
丸顔に瞳をキラキラさせたニコニコ顔がすっかりデフォなのだが、背が低いわりにムチムチした胸やお尻が印象的でもある。
歩は巧の作業を確認しようと彼の机をのぞき込んでくるが、あまりに身を乗り出してくるので、肩や腕が巧に触れる。
ショートヘアからのぞくうなじを見て、巧はドキドキしてきた。その様子を愛は見逃さない。
「巧!なに?歩に触れてるからってドキドキすんなよー(笑)。」
「歩、こいつ、気をつけないと変なことするかもよ…」
「巧君、ゴメンね。近すぎたかな…」
「明莉、心配ないって。こんなチキンの童貞、何もできやしないって。」
「童貞にチキンって…」
「おや~、もう経験がおありですか~?まさかー(笑)。」
「……(イヤ、ナイデスケド)……」
「はあ~?ハッキリ言えって!聞こえねえよ。」
愛の言葉があまりに図星なので、巧は返事もできず、黙って手を動かす。
「あの~…歩…、私はこれ、タイムテーブルを書けばいいの?」
歩に作業について訊いてきたのは高岡つぐみ。
優等生グループで歩とは仲良しなので、今日も手伝いを買って出ている。
丸顔にクリッとした目をした可愛い顔つきをしていて、本人は小柄で口数が少なくおとなしいが、制服を膨らませているGカップはあろうかというバストの主張が数少ない男子の中で話題なのは秘密だ。
歩はつぐみにも栞のことを丁寧に説明する。
「あっ、ゴメン。そうね、ここに書いてるやつ、きちっとした形で書いてもらえるかな?…」
「うん、わかった。」
「どう、まだかかりそう?」
そうつぐみへ声をかけてきたのは小野寺直。
クラストップの成績を上げる優等生だが、いつも一人で本を読んでいて誰とも話をしない。
黒髪のミディアムヘアに黒い瞳が印象的な、美人ともかわいいとも言えるいわゆるキレカワ系女子なのだが、いつも無口で目力のある瞳からクールな視線を向けてくるのでいささか近寄りがたい。
唯一、昔から家の近いつぐみとだけは毎日仲良くいっしょに登下校をしていた。
「うん、まだだいぶかかりそうなの。」
「じゃあ、私も手伝うよ。」
「…直も手伝ってくれるの?ありがとう…。じゃあ、つぐみといっしょにタイムテーブルを書いてくれるかなあ。」
普段話しかけてきたりしない直が作業を手伝うと言ったので、歩は少し戸惑って彼女の顔を見る。しかし、直には特に何も気にしている様子はなかった。
「てか、なんか作業の人数、足んなくない?」
「そういや、空がどっか行ったままだね。」
愛が気づいて聞くと明莉が答えた。
明莉が言ったのは中森空。
彼女も愛のようにショートヘアが似合う、校内でも話題の美人だ。噂ではハーフかクォーターらしく、真っ白な肌と茶色い髪がその美形を一層際立たせている。
だが本人は団体行動が苦手で、いつもフラフラと自由気ままにしていた。
「あんなのがいるから、なかなか終わんないんだよ。」
「いやいや、あんたもしなよ。」
「ヤホー。もう終わった?」
文句を言う愛に明莉が軽く突っ込んでると、空が笑いながら教室に入ってきた。
「終わってるわけないじゃん。てか、あんたもさっさといっしょにしなよ。」
「あれ?まだ終わってないの?ダメじゃん。タイミング、ミスったな~。」
空は愛の言葉を気にもしないで、足を開いて椅子に座る。
今でもクラスは圧倒的に女子が多いので男子の目を気にしない女子は少なくないが、空は特に無防備で、今も足を広げたせいで短いスカートから白い太ももがチラチラ見える。
巧は何も見ていませんという体であらぬ方向へ視線をやった。
「でー、もう帰っていいよね。こんだけいればいいっしょ。」
「はー?何であんただけ帰っていいわけ。さっさと作業をしなよ!」
「いや、あんたも何もしてないし。」
空はブレザーの前を開け、リボンを緩めて下敷きをうちわ代わりにワイシャツの中へ扇ぎながら、愛にヘラヘラと言い返した。
「あれ?まだやってる。どう進んでる?」
入ってきたのは1人はジャージ姿、もう1人は制服にポニーテールの2人組。
ジャージ姿はバレーボール部の岡村瑠香。
制服でニコニコしているのは金沢萌愛。
瑠香は頑張り屋さんで知られていて、おまけに何でも気がつく世話好きだ。美少女度では愛や明莉、空に譲るが、その爆乳はつぐみと学年一、二を争うだろう、というのがバカな男子たちの密かな評判だ。
瑠香のジャージの中の巨乳と巨尻が彼女が動くたびに揺れている。
萌愛は天然で有名で、しょっちゅう場違いなことを言い出すがなぜか憎めない。少したれ目なのが、逆に表情に柔らかい雰囲気を与えている。
暑いのかブレザーを手に持っているので、こちらもワイシャツ越しに大きなバストが波打っていた。
瑠香の顔を見て、歩が尋ねる。
「どうしたの?」
「いや、忘れ物をして戻ってきたら、そこで萌愛と会っていっしょに来たの。」
「まあ、私も忘れ物みたいなもんかな。」
萌愛は答えになってないことを言う。
瑠香は作業の様子を眺めて、歩に聞いた。
「じゃあ、私も手伝おうか。人数多い方がいいだろうし。」
「瑠香、部活あるんじゃないの。悪いよ。」
「今日は、本当はサボりたい気分だったの。あとで言い訳するし。じゃあ、何すればいい?」
瑠香は歩にそう言うとすぐ机に座った。
「私は応援してるから~。」
萌愛はニコニコしながら離れた机の上に座る。
「あんたも手伝ってよ。」
萌愛に向かってそう言う愛に、明莉が紙を手に近づいた。
「ハイハイ、あんたもこれするの。そうすりゃ、みんな早く帰れるんだから。」
「あ~あ、巧がさっさとしないからこんなことになんだよ。」
また愛に毒づかれて巧は渋い顔をするが、何も言わずに黙々と手を動かす。
「ハイ、空はこれをして。」
「え~、仕方ないなあ~。」
歩が空にも紙とペンを渡すと、意外にも空も素直に作業の輪に加わった。
しばらく8人はそれぞれ作業をして、萌愛だけがぼんやりと窓の外を見ていた。
…
…コトコト
…コトコトコトコト
「え、なに?」
物音がして、作業をしていた全員が顔を上げる。
歩は手元の筆箱が揺れているのに気づく。すぐに、自分たちがいる机もガタガタと揺れ始めた。
「地震だ!みんな机の下に潜って!」
愛がすぐ指示する。
全員がはじかれるように立ち上がって、急いで机の下に潜り込む。もうその時には机の足を持っていないといけないぐらい激しく揺れていた。
「みんな、しっかり!頭を守って!」
愛が大声で全員に言うが、もう教室全体が揺れている。
すると、聞いたこともないような大きな音が響いて、天井がガラガラと崩れてきた。
「ダメー。」
「助けてー。」
「お母さ~ん!!!」
みんなの声も大音響にかき消され、辺りは真っ白な粉じんに包まれた……。
*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。
*2025年9月14日
読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。
2025年10月2日。一部の文字にルビを付しました。
6時間目が終わると高校生はみな、それぞれが部活へ行ったり、街に繰り出したり、一直線に家に向かったり、友達とバカ話を延々としたりして過ごす。
そんな放課後に、S学園の3年D組では何人かの男女が近々ある遠足の栞作りのために居残りをしていた。
「何人かの男女」と言ったが、男子は真ん中に座っている真中巧、ただ一人。他は全員女子。
それもその筈、S学園は一昨年女子校から共学に変わったばかりで、このクラスでも35人中、男子は巧を入れてたった5人しかいない。
作業のために机を5つ、横並びにしてちょうどその真ん中、その巧の席をすぐ前の机の上からショートヘアの女の子が何度も蹴っていた。
「ほらぁ、巧!サッサと終わらせなよ!いつまでも部活に行けないだろ。」
巧の机をずっと蹴って急がせているこの女子は、河合愛。
剣道部のエースで、おまけにキャプテンまで務めている。スポーツ女子らしいボーイッシュな風貌が最近道着姿でネットで紹介されて美人剣士と話題になっている。
確かにそのキラリと光る瞳と美しいラインを描く鼻筋、短髪の黒髪が似合う均整の取れた顔は制服の紺ブレ、薄紺のチェックのスカート姿でも間違いなく美少女なのだが、巧には全く容赦ない。
おまけに巧とは中学一年からずっと同じクラスという腐れ縁なのだ。
「蹴、る、の、を、や、め、ろ。何、も、で、き、な、い、だ、ろ。」
「ハイハイ、さっさとお仕事、お仕事(笑)。」
今や催促でも何でもなく、ただ机を蹴ることを楽しんでいる愛は巧で居残りの不満を発散させていた。
「愛も手伝いなよ。そうすりゃすぐに終わるんだから(笑)。」
作業の手を止めて笑いながら声をかけたのは愛と同じ剣道部の部員、小川明莉。
愛と明莉は親友同士でいつも一緒にいる。
愛とは対照的に美しいロングヘアしており、長身で整った顔、切れ長の眼と鋭い視線をしていて、対戦相手の女子からは「氷の微笑」とか言われているらしい。
愛は蹴り疲れたのか今度は机の上で足をぶらぶらさせた。
「わたしはいいの。がんばるのは部活だけにしてるから。ったく、こんなことまで選ばれなくてもいいのに…。」
「とか言いながら、巧の邪魔してるだけじゃん。」
「こいつがグズグズして進まないから、手伝ってるわけ…。」
「手伝ってるって、言い方(笑)…。」
愛が悪びれずに言ったので、明莉はケラケラと笑い出す。巧は憮然としながら机を直して作業を再開した。
少数男子というクラスの底辺だと、仕事が回ってくるだけじゃない。様々な迫害に耐えねばならない。
おまけに巧本人は160㎝と言い張るが、実際には160㎝を切っているその身長では愛や明莉をはじめ、多くの女子に実際に見下ろされてしまっている。
巧はうつむいて上目づかいで愛を見るが、聞こえないように口の中でぼそぼそと文句を言った。
「まあまあ、みんなでやって、早く終わらせよう。」
そう手を動かしながら言うのは鈴木歩。
ショートヘアと笑顔がトレードマークで、しかも面倒見が良く、クラスの作業の度に中心になって働いている。
丸顔に瞳をキラキラさせたニコニコ顔がすっかりデフォなのだが、背が低いわりにムチムチした胸やお尻が印象的でもある。
歩は巧の作業を確認しようと彼の机をのぞき込んでくるが、あまりに身を乗り出してくるので、肩や腕が巧に触れる。
ショートヘアからのぞくうなじを見て、巧はドキドキしてきた。その様子を愛は見逃さない。
「巧!なに?歩に触れてるからってドキドキすんなよー(笑)。」
「歩、こいつ、気をつけないと変なことするかもよ…」
「巧君、ゴメンね。近すぎたかな…」
「明莉、心配ないって。こんなチキンの童貞、何もできやしないって。」
「童貞にチキンって…」
「おや~、もう経験がおありですか~?まさかー(笑)。」
「……(イヤ、ナイデスケド)……」
「はあ~?ハッキリ言えって!聞こえねえよ。」
愛の言葉があまりに図星なので、巧は返事もできず、黙って手を動かす。
「あの~…歩…、私はこれ、タイムテーブルを書けばいいの?」
歩に作業について訊いてきたのは高岡つぐみ。
優等生グループで歩とは仲良しなので、今日も手伝いを買って出ている。
丸顔にクリッとした目をした可愛い顔つきをしていて、本人は小柄で口数が少なくおとなしいが、制服を膨らませているGカップはあろうかというバストの主張が数少ない男子の中で話題なのは秘密だ。
歩はつぐみにも栞のことを丁寧に説明する。
「あっ、ゴメン。そうね、ここに書いてるやつ、きちっとした形で書いてもらえるかな?…」
「うん、わかった。」
「どう、まだかかりそう?」
そうつぐみへ声をかけてきたのは小野寺直。
クラストップの成績を上げる優等生だが、いつも一人で本を読んでいて誰とも話をしない。
黒髪のミディアムヘアに黒い瞳が印象的な、美人ともかわいいとも言えるいわゆるキレカワ系女子なのだが、いつも無口で目力のある瞳からクールな視線を向けてくるのでいささか近寄りがたい。
唯一、昔から家の近いつぐみとだけは毎日仲良くいっしょに登下校をしていた。
「うん、まだだいぶかかりそうなの。」
「じゃあ、私も手伝うよ。」
「…直も手伝ってくれるの?ありがとう…。じゃあ、つぐみといっしょにタイムテーブルを書いてくれるかなあ。」
普段話しかけてきたりしない直が作業を手伝うと言ったので、歩は少し戸惑って彼女の顔を見る。しかし、直には特に何も気にしている様子はなかった。
「てか、なんか作業の人数、足んなくない?」
「そういや、空がどっか行ったままだね。」
愛が気づいて聞くと明莉が答えた。
明莉が言ったのは中森空。
彼女も愛のようにショートヘアが似合う、校内でも話題の美人だ。噂ではハーフかクォーターらしく、真っ白な肌と茶色い髪がその美形を一層際立たせている。
だが本人は団体行動が苦手で、いつもフラフラと自由気ままにしていた。
「あんなのがいるから、なかなか終わんないんだよ。」
「いやいや、あんたもしなよ。」
「ヤホー。もう終わった?」
文句を言う愛に明莉が軽く突っ込んでると、空が笑いながら教室に入ってきた。
「終わってるわけないじゃん。てか、あんたもさっさといっしょにしなよ。」
「あれ?まだ終わってないの?ダメじゃん。タイミング、ミスったな~。」
空は愛の言葉を気にもしないで、足を開いて椅子に座る。
今でもクラスは圧倒的に女子が多いので男子の目を気にしない女子は少なくないが、空は特に無防備で、今も足を広げたせいで短いスカートから白い太ももがチラチラ見える。
巧は何も見ていませんという体であらぬ方向へ視線をやった。
「でー、もう帰っていいよね。こんだけいればいいっしょ。」
「はー?何であんただけ帰っていいわけ。さっさと作業をしなよ!」
「いや、あんたも何もしてないし。」
空はブレザーの前を開け、リボンを緩めて下敷きをうちわ代わりにワイシャツの中へ扇ぎながら、愛にヘラヘラと言い返した。
「あれ?まだやってる。どう進んでる?」
入ってきたのは1人はジャージ姿、もう1人は制服にポニーテールの2人組。
ジャージ姿はバレーボール部の岡村瑠香。
制服でニコニコしているのは金沢萌愛。
瑠香は頑張り屋さんで知られていて、おまけに何でも気がつく世話好きだ。美少女度では愛や明莉、空に譲るが、その爆乳はつぐみと学年一、二を争うだろう、というのがバカな男子たちの密かな評判だ。
瑠香のジャージの中の巨乳と巨尻が彼女が動くたびに揺れている。
萌愛は天然で有名で、しょっちゅう場違いなことを言い出すがなぜか憎めない。少したれ目なのが、逆に表情に柔らかい雰囲気を与えている。
暑いのかブレザーを手に持っているので、こちらもワイシャツ越しに大きなバストが波打っていた。
瑠香の顔を見て、歩が尋ねる。
「どうしたの?」
「いや、忘れ物をして戻ってきたら、そこで萌愛と会っていっしょに来たの。」
「まあ、私も忘れ物みたいなもんかな。」
萌愛は答えになってないことを言う。
瑠香は作業の様子を眺めて、歩に聞いた。
「じゃあ、私も手伝おうか。人数多い方がいいだろうし。」
「瑠香、部活あるんじゃないの。悪いよ。」
「今日は、本当はサボりたい気分だったの。あとで言い訳するし。じゃあ、何すればいい?」
瑠香は歩にそう言うとすぐ机に座った。
「私は応援してるから~。」
萌愛はニコニコしながら離れた机の上に座る。
「あんたも手伝ってよ。」
萌愛に向かってそう言う愛に、明莉が紙を手に近づいた。
「ハイハイ、あんたもこれするの。そうすりゃ、みんな早く帰れるんだから。」
「あ~あ、巧がさっさとしないからこんなことになんだよ。」
また愛に毒づかれて巧は渋い顔をするが、何も言わずに黙々と手を動かす。
「ハイ、空はこれをして。」
「え~、仕方ないなあ~。」
歩が空にも紙とペンを渡すと、意外にも空も素直に作業の輪に加わった。
しばらく8人はそれぞれ作業をして、萌愛だけがぼんやりと窓の外を見ていた。
…
…コトコト
…コトコトコトコト
「え、なに?」
物音がして、作業をしていた全員が顔を上げる。
歩は手元の筆箱が揺れているのに気づく。すぐに、自分たちがいる机もガタガタと揺れ始めた。
「地震だ!みんな机の下に潜って!」
愛がすぐ指示する。
全員がはじかれるように立ち上がって、急いで机の下に潜り込む。もうその時には机の足を持っていないといけないぐらい激しく揺れていた。
「みんな、しっかり!頭を守って!」
愛が大声で全員に言うが、もう教室全体が揺れている。
すると、聞いたこともないような大きな音が響いて、天井がガラガラと崩れてきた。
「ダメー。」
「助けてー。」
「お母さ~ん!!!」
みんなの声も大音響にかき消され、辺りは真っ白な粉じんに包まれた……。
*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。
*2025年9月14日
読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。
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