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第一部 第一章 異世界転移の篇
2 どこかわからない場所
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身体のどこかがピクピク痙攣したのを感じて、タクミは目を覚ました。
頭はまだどこかぼんやりしていて、何かの臭いを感じる。かび臭いというか、古い倉庫のような臭い。手のひらがずっとザラザラの床に触れている。
(え~と、どこにいるんだっけ……居残りして……作業してて……女の子たちが居てて……それで…………)
タクミはずっと床を触りながら、何となく考える。
(そう、地震だ!)
タクミはそう思い出すと目を開けた。
「うわっ、何これ!!!」
放課後の教室にいたはずが、辺りは真っ暗だ。空気の臭いといい、床の感じといい、ここは絶対に教室じゃない。
タクミは慌てて身体を起こす。真っ暗なのでよくわからないが、壁や天井が崩れたような瓦礫や、倒れた椅子や机もないようだ。空気はひんやりとしていて、室内はがらんとしている。
女の子たちはどうしたのだろう。タクミは辺りをキョロキョロと見渡す。
「う~ん、どうしたの?」
タクミの声が聞こえたのだろう。闇の中で影がいくつか、もぞもぞと動いた。寝返りを打つ子、声を出す子、身体を起こす子…。
「キャー!!!」
「え~、真っ暗ー!」
「どこどこ?なに、なに?」
自分たちの状況が分かって、女の子たちは一様にパニックになる。
アイとナオは身体を起こして辺りを見回し、ツグミは半泣きになってアユミに抱きつく。
モアも怖がって制服姿のルカと抱き合った。アカリとソラは座り込んでいる。
アイ「なに?ここ……」
ソラ「……教室じゃないみたい……」
ナオ「…誰かが私たちを助け出して、ここに連れてきてくれた?……」
アユミ「でもこんな古い感じの建物、うちの学校にあったっけ……」
アカリ「それにちょっと静かすぎない?……」
確かに車の音やサイレンの音のようなものは聞こえない。微かに聞こえてくるのは虫の声ばかりだ。
ルカ「……なんか山の中にいるみたい……」
ソラ「…山の中って、おかしくない?うちら、学校にいたんだよ……」
モア「…臭いし、埃っぽい…」
暗闇に目が慣れてきて、部屋の様子がぼんやりとわかってくる。
部屋は教室よりやや狭く、窓もなく、暗すぎて扉もどこにあるのかわからない。タクミの左側の奥から女の子たちが並ぶよう座ったり、寝転がったりしていた。
アイが突然立ち上がる。
アイ「タクミ!いったいどうなってんの?」
タクミ「いや…オレも全然分かんなくて…」
アイ「分かんないって、あんた……」
アカリ「ハイハイ、そんなにタクミに当たらないって。」
アイは仕方なく、また座り込む。
ツグミ「…誰か助けに来てくれるかなあ?……」
ソラ「こんな夜中に誰か来てくれる?ヤバいんじゃない?……」
ナオ「いや、夜中じゃないんじゃない。ちょっとずつだけど明るくなってきてるし、外、鳥の声もしない?」
ナオの言葉を聞いて全員が部屋の上の方を見る。
するとそこには明り取りらしき小さなすき間がいくつも空いていて、わずかだが明るくなってきている。鳥の声も聞こえる気がする。
ナオ「とにかく、もう何時間かしたら朝になると思う。」
アイ「ってか、スマホだよ、スマホ‼」
アイの言葉で皆が思い出し、全員が暗闇の中、手探りで自分の荷物を探し回る。
アイ「ない、スマホも荷物も……」
アカリ「……私もない……」
ソラ「ってか、何にもない…机も椅子も……」
モア「…カバンも何もかも…ウソー……」
タクミ「マジか………」
外への連絡の手段がないと分かって、全員がぐったりしてその場に座る。
ソラ「いったい何が起こってんの……」
ルカ「分かんない、どうしよう……」
ナオ「とにかく、明るくなるまで待とう。これじゃ何も見えないし……」
9人全員がしばらくの間黙り込んでいた。
それでも辺りはゆっくりと明るくなってきて、皆、次第に暗闇に目が慣れてくる。
すると、アイが全員がもたれているのと反対側の壁を手探りで調べ始めた。彼女には何かが見えているようだ。アカリやソラもいっしょになって調べる。
アイ「ねえ、ここって戸じゃない。」
アカリ「うん、確かにそう思う。」
アイ「ちょっと引っ張ろうよ。」
アカリ「オーケー。」
ソラ「私も手伝おう。」
3人は引き戸を「せーのっ」と声を合わせて引っ張る。
だが、おんぼろに見える引き戸はびくともしない。3人の様子を見てルカも加わり、今度は4人で引っ張るが全く動かない。
アカリ「ダメ、開かない…」
ソラ「マジか……」
アユミ「出れないの?」
アユミの問いにアイとアカリが黙ってうなずく。
ルカ「…ねえ、ここは小さいけど窓じゃないかな…」
引き戸の右側の少し離れた壁のところ、顔ぐらいの高さに小さな引き戸があるのをルカが見つける。
ルカ「開いたら誰かいないか、呼んでみるね。」
モア「私も手伝うー…」
今度はルカとモアの2人で小さな引き戸を力いっぱい引く。すると部屋の中に薄明かりが入ってきて、木の格子がついた窓が現れた。
モア「やったー!」
ルカ「じゃあ、えーっと、誰かいませんかー?……」
呼び声を上げた2人はすぐに黙ってしまった。
不思議に思ったナオが立ち上がると、振り返ったルカが黙ったまま首を横に振り、外を指す。今度は全員が窓のところへ行く。
アユミ「何これ?学校とかじゃない……」
窓の外に見えるもの。
小屋のすぐ前はある程度開けているが、その向こう側には鬱蒼と木々が生えていて、人の気配は全くしない。どこかに川があるのか、水の流れる音が聞こえてきて、鳥や虫の声もする。
樹と草の匂いが開けた小窓から小屋の中まで入ってきた。
ここは明らかに山中か森の中だ。
9人はお互いに顔を見合わせて、黙って床に座り込んだ。
*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。
*2025年9月15日
読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。
*2025年10月2日。一部の文字にルビを付しました。
頭はまだどこかぼんやりしていて、何かの臭いを感じる。かび臭いというか、古い倉庫のような臭い。手のひらがずっとザラザラの床に触れている。
(え~と、どこにいるんだっけ……居残りして……作業してて……女の子たちが居てて……それで…………)
タクミはずっと床を触りながら、何となく考える。
(そう、地震だ!)
タクミはそう思い出すと目を開けた。
「うわっ、何これ!!!」
放課後の教室にいたはずが、辺りは真っ暗だ。空気の臭いといい、床の感じといい、ここは絶対に教室じゃない。
タクミは慌てて身体を起こす。真っ暗なのでよくわからないが、壁や天井が崩れたような瓦礫や、倒れた椅子や机もないようだ。空気はひんやりとしていて、室内はがらんとしている。
女の子たちはどうしたのだろう。タクミは辺りをキョロキョロと見渡す。
「う~ん、どうしたの?」
タクミの声が聞こえたのだろう。闇の中で影がいくつか、もぞもぞと動いた。寝返りを打つ子、声を出す子、身体を起こす子…。
「キャー!!!」
「え~、真っ暗ー!」
「どこどこ?なに、なに?」
自分たちの状況が分かって、女の子たちは一様にパニックになる。
アイとナオは身体を起こして辺りを見回し、ツグミは半泣きになってアユミに抱きつく。
モアも怖がって制服姿のルカと抱き合った。アカリとソラは座り込んでいる。
アイ「なに?ここ……」
ソラ「……教室じゃないみたい……」
ナオ「…誰かが私たちを助け出して、ここに連れてきてくれた?……」
アユミ「でもこんな古い感じの建物、うちの学校にあったっけ……」
アカリ「それにちょっと静かすぎない?……」
確かに車の音やサイレンの音のようなものは聞こえない。微かに聞こえてくるのは虫の声ばかりだ。
ルカ「……なんか山の中にいるみたい……」
ソラ「…山の中って、おかしくない?うちら、学校にいたんだよ……」
モア「…臭いし、埃っぽい…」
暗闇に目が慣れてきて、部屋の様子がぼんやりとわかってくる。
部屋は教室よりやや狭く、窓もなく、暗すぎて扉もどこにあるのかわからない。タクミの左側の奥から女の子たちが並ぶよう座ったり、寝転がったりしていた。
アイが突然立ち上がる。
アイ「タクミ!いったいどうなってんの?」
タクミ「いや…オレも全然分かんなくて…」
アイ「分かんないって、あんた……」
アカリ「ハイハイ、そんなにタクミに当たらないって。」
アイは仕方なく、また座り込む。
ツグミ「…誰か助けに来てくれるかなあ?……」
ソラ「こんな夜中に誰か来てくれる?ヤバいんじゃない?……」
ナオ「いや、夜中じゃないんじゃない。ちょっとずつだけど明るくなってきてるし、外、鳥の声もしない?」
ナオの言葉を聞いて全員が部屋の上の方を見る。
するとそこには明り取りらしき小さなすき間がいくつも空いていて、わずかだが明るくなってきている。鳥の声も聞こえる気がする。
ナオ「とにかく、もう何時間かしたら朝になると思う。」
アイ「ってか、スマホだよ、スマホ‼」
アイの言葉で皆が思い出し、全員が暗闇の中、手探りで自分の荷物を探し回る。
アイ「ない、スマホも荷物も……」
アカリ「……私もない……」
ソラ「ってか、何にもない…机も椅子も……」
モア「…カバンも何もかも…ウソー……」
タクミ「マジか………」
外への連絡の手段がないと分かって、全員がぐったりしてその場に座る。
ソラ「いったい何が起こってんの……」
ルカ「分かんない、どうしよう……」
ナオ「とにかく、明るくなるまで待とう。これじゃ何も見えないし……」
9人全員がしばらくの間黙り込んでいた。
それでも辺りはゆっくりと明るくなってきて、皆、次第に暗闇に目が慣れてくる。
すると、アイが全員がもたれているのと反対側の壁を手探りで調べ始めた。彼女には何かが見えているようだ。アカリやソラもいっしょになって調べる。
アイ「ねえ、ここって戸じゃない。」
アカリ「うん、確かにそう思う。」
アイ「ちょっと引っ張ろうよ。」
アカリ「オーケー。」
ソラ「私も手伝おう。」
3人は引き戸を「せーのっ」と声を合わせて引っ張る。
だが、おんぼろに見える引き戸はびくともしない。3人の様子を見てルカも加わり、今度は4人で引っ張るが全く動かない。
アカリ「ダメ、開かない…」
ソラ「マジか……」
アユミ「出れないの?」
アユミの問いにアイとアカリが黙ってうなずく。
ルカ「…ねえ、ここは小さいけど窓じゃないかな…」
引き戸の右側の少し離れた壁のところ、顔ぐらいの高さに小さな引き戸があるのをルカが見つける。
ルカ「開いたら誰かいないか、呼んでみるね。」
モア「私も手伝うー…」
今度はルカとモアの2人で小さな引き戸を力いっぱい引く。すると部屋の中に薄明かりが入ってきて、木の格子がついた窓が現れた。
モア「やったー!」
ルカ「じゃあ、えーっと、誰かいませんかー?……」
呼び声を上げた2人はすぐに黙ってしまった。
不思議に思ったナオが立ち上がると、振り返ったルカが黙ったまま首を横に振り、外を指す。今度は全員が窓のところへ行く。
アユミ「何これ?学校とかじゃない……」
窓の外に見えるもの。
小屋のすぐ前はある程度開けているが、その向こう側には鬱蒼と木々が生えていて、人の気配は全くしない。どこかに川があるのか、水の流れる音が聞こえてきて、鳥や虫の声もする。
樹と草の匂いが開けた小窓から小屋の中まで入ってきた。
ここは明らかに山中か森の中だ。
9人はお互いに顔を見合わせて、黙って床に座り込んだ。
*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。
*2025年9月15日
読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。
*2025年10月2日。一部の文字にルビを付しました。
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