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第一部 第一章 異世界転移の篇

19-1 焚き木拾いと清拭(せいしき)

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 女の子たちが並んで川を見ているところに、小屋の陰でおしっこをしていたタクミがチャックを上げながらやって来た。

タクミ「…ねぇ…火、けれる人って…いたかな…」
アユミ「何で?…」
タクミ「…いやー…火があったら…枯れ枝とか枯れ葉を集めて…たきき火もできるかな…って…」

 アカリとアユミとルカ、ソラは顔を見合わせる。

ソラ「…残念、まだ火はないね…」
ナオ「…出てくるかな…」
アユミ「ソラに『水』って能力があるから…もしかすると出てくるかも…」
ルカ「…本に書いてない?…」
アユミ「この本、分厚いけど、ほとんど何も書いてないの…」

 アユミが本を重そうにストレージから取り出すと、真ん中辺りのページをめくる。そこは真っ白で何も書いてない。

ナオ「さっきの魔法みたいに何かが出てくると現れるんだ…」
モア「あんまり意味ないじゃん……」
アカリ「意味ないことはないけど…」
ルカ「出てくるまでは何も分からないんだ……」
アイ「火があったら、焚き火ができそう?」

 タクミがいろいろと知っていそうなので、アイがくわしく聞いてみる。

タクミ「…一応枯れ枝とか枯れ木とか、あと枯れ葉とか集めたらできると思う…ただ普通のキャンプじゃ、ちゃんとまきを用意するから…」
アイ「薪のほうがいいの?…」
タクミ「薪って、燃料用に乾かしてあるから燃えやすいし、最初から量も十分にあるから…」

 食事中はあまり口を開かなかったタクミが、自分からいろんなことを言うのに女の子たちはちょっと驚く。

ソラ「…タクミ…何でそんなにキャンプにくわしいの?…」
タクミ「…オレんち…昔からキャンプが好きで、しょっちゅう行ってたし…
 それに…オレの兄貴がすごくハマって…いつも一緒に連れてかれてたんだ…」
アカリ「枯れ葉とか枯れ枝とか集めとく方がいい?」
タクミ「薪がないから…結構集めないといけないかも…」
アイ「じゃあ、ほとんどの子はすることないし、焚き火にできるもの、集めとこうよ…」
ルカ「…どんなのがいいの?…」

 みんなが森の方へ行こうとすると、タクミはしゃがんで川原の石を拾い出した。

アイ「…何してんの?…」
タクミ「…う~ん…一つは椅子いす代わりにできるような大きめの石をね…スカートで地べたはキツイでしょ?…」
アカリ「確かに…」
タクミ「…あとは…かまど用の石も拾いたいなー、って…」
ルカ「…かまどって?…」
ソラ「そんな本格的でなくていいしょ…」

タクミ「…いや…かまどって言うだけで…そんな大層じゃないけど…」
アイ「椅子はほしいね…」
アカリ「みんなでそれぞれに探す?…」
アユミ「それがいいかも…」
モア「探す!探す!」
タクミ「(笑)…あの~…できるだけ上も下も平べったくて、ぐらぐらしないのがいいよ…」

 タクミの提案でそれぞれが川原に散らばり、思い思いに自分に合った椅子代わりの石を探し始めた。
 小さいのばかりを探す子。明らかに大きすぎるのを持ち上げる子。
 直ぐにこれと決める子。ずっと探している子。
 それでもそれぞれがこれと思ったものを見つけると、一々座って確かめる。

ナオ「…これはまだぐらぐらするし…」
ソラ「これぐらいでいいしょ。」
アイ「あんた、それ小さくない?…」
ソラ「そんなことないよ……」
タクミ「…小さすぎるとすぐ疲れるよ…」
ソラ「…それは困る……」

ツグミ「……う~ん…見つからないよ…」
アカリ「…いや、ある程度にしないと…ちょうどのはなかなか無いよ…」
アユミ「ツグミ…これとかどう?…ぐらぐらしないよ…」
ツグミ「…う~ん…それにしとこうかな~?…」
アイ「さあ、そろそろ焚き木拾いに行こうよ…」
ツグミ「あ~ん、待って…う~ん…アユミの言ってくれたのにする……」
アカリ「(笑)」

 それぞれが自分用の石をストレージにしまうと、川原から小屋の前に戻ってくる。するとタクミがさっき川原から拾ってきた石のうち、5,6個を間隔かんかくあけけて丸く並べた。

ソラ「…これでかまど?…」
タクミ「…料理とかするならもっとしっかりとするけど…これだけでも風で焚き木や落ち葉が飛ばされなくてすむから…」
ルカ「なるほど…」

 タクミは少し間隔を空けて、もう一つ同じように石を並べる。

ナオ「二つ作るの?…」
タクミ「10人ぐらいだと大きな焚き火の方がいいけど、一つだと焚き木もたくさんるし…
 とりあえず小さいのを一つ作って、慣れたらもう一つ、っていうつもりだけど……」
アカリ「…まず火が要るけど…」
アイ「…でもあらかじめ焚き木を集めておくのはいいと思う。」
ルカ「…じゃあ、次は焚き木ね…どんなのがいいの?…」

 タクミは小屋の前の木陰こかげからいくつかの枯れ葉や枯れ枝を拾ってくる。

タクミ「…枯れ葉は最初に火が点きやすくて…枝は太いのから細いのまでいろいろ拾って、あとで太さごとに仕分けするほうがいいよ…」
アイ「全部いっしょじゃダメってこと…」
タクミ「うん…細い枝のほうが燃えやすいから、最初は細い枝から組んで…だんだんと太い枝を入れると火が大きくて、長持ちするようになるから…」
ナオ「…太い枝は燃えにくいってことね…」
タクミ「…そう…」

モア「すごくでっかい木は?…」
タクミ「大きくて太い枝や木でもいいんだけど…ここにはなたおのもないから…」
アイ「…道具がないと意味なさそうね…」
タクミ「そうなっちゃうと思う…」

 タクミは振り返って川原のほうを指した。

タクミ「川原に面してる辺りに落ちている枝や葉っぱは日差しを受けてるから、もう乾燥してて燃えやすいと思う…
 逆に森の中の枝は川原とか、日光が当たってて風の少ないところで乾かしたほうがいい…」
アユミ「…なるほど…」
アイ「…よし、時間がある人は少しずつでも焚き木を拾っておこう!」
全員「オーケー!」

 声がそろったので全員が爆笑した。








*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
 また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。

 2025年9月27日
 読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
 一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
 今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。

 2025年11月23日
 文字数がかなり多いエピソードが増えてきましたので、エピソードを分割して読みやすくしていきます。
 現状では文字数で機械的に分割を行っていますので、単純にページが増えているという感じでお読み下さい。
 こちらもマイペースで進行いたしますので、ご容赦ください。
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