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第一部 第一章 異世界転移の篇

28-1 一日目の終わり

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 夕方。

 モアが人差し指からロウソクの炎のような火を出して、その火をゆっくりと地面に置いたティッシュペーパーに点ける。
 と、タクミがすぐに火のいたティッシュを木の棒で枯れ葉と枯れ枝で組んだ中に押し込んだ。

 ティッシュの火はあっという間に枯れ葉に燃えうつり、火が大きくなってくると細い枝がパチパチという音を出し始めた。

 陽がかたむき始めると、女の子たちは眠っていたタクミを起こして焚き火の準備をさせた。
 タクミは慣れた手つきで枯れ葉と枯れ枝を組み、それに今、モアが出した火を点けたのだ。

 火が大きくなるのを見ながら、アユミやルカがパンが入ったかごをみんなに回す。その間にツグミが恐る恐る、みんなに言う。

ツグミ「…あの~……『食器』っていう能力も付いたから…もしかしたらお皿かコップが出てくるかも…」
アイ「それはいいね。じゃあ、ちょっと出してみて。」
ソラ「断然、コップがいいけど…」
アカリ「ちょっと祈っとこう…」

 ツグミはみんなから少し離れて、地面に手を置く。
 すると、いつの間にかその手の周りにマグカップのような格好をした持ち手の付いた陶器とうきのコップがいくつも転がっていた。

モア「やったー!」
ナオ「よかった…」
ソラ「お皿より今は断然コップでしょ。」
ツグミ「人数分、あるかな…」

 コップはどれも分厚く、がらもほとんどない簡素なものだが、それでも持ち手はしっかりとしている。
 みんなはそれぞれが転がっているコップから思い思いのものを取り上げる。

アユミ「大丈夫。ちゃんと人数分あるよ。」
アイ「ってか、人数分よりずっと多いよ。」
モア「私、これー!」
ルカ「まだもらってない人、いるかな…」
タクミ「あっ、オレにもちょうだい…」
アカリ「ハイ、どうぞ。」
ソラ「これでゆっくりと水が飲めるよ…」

 アユミとルカが水の入ったはちを出すとそれぞれが選んだコップに水をみ、パンも手に取ると焚き火をかこんで食事を始めた。

ソラ「パンと水だけでもお腹に入れると生き返るねー…」
アユミ「お菓子とかなかったから…」
ルカ「なんか長いような…短いような…そんな一日だったね……」
モア「長かったよ~…タクミとシた以外は他に何にもすることなかったし…」
アカリ「まあ、タクミだけはずっとシてたけど…」
アイ「焚き木ひろったりしただけだからね…」

 コップを使うことで昼の時よりは飲みやすくなったのだろう。みんなさっきよりも多くの水を飲んだ。

ツグミ「水をこんなに飲むのなんて、久しぶりだね…」
ルカ「何となくお茶とかジュースとか飲んじゃうもんね…」
ソラ「でもこの水、なんか美味おいしい…」
アイ「分かる…ごくごく飲めちゃうよ…」
アユミ「パンもまだあるから…」

アカリ「ありがとう…でも、あと一個は多いかな…」
ナオ「じゃあ、私と分けない。私も一個はちょっと…」
ソラ「私も半分がいいんだけど…」
アユミ「わかった(笑)…私がソラの半分、もらうから…」
ソラ「ありがとう!(笑)…」

 全員がパンと水の食事でお腹を満たしている間にすっかり陽が暮れた。
 虫の声と聞いたこともない鳥の声がずっと静寂せいじゃくの中に響いていて、電灯も何もない中で焚き火の光だけが赤く全員の顔をらし出している。
 女の子たちは周りの濃い闇が怖いのだろう、お互いに腕を組んだり、肩を寄せたりしている。

 みんながしばらく黙って焚き火を見ていると、アイが口を開いた。

アイ「…で、明日から…どうしよう?……」

 それぞれがお互いの顔色をうかがうようにして、誰も何も答えない。
 そんなみんなの様子を見てナオが言う。

ナオ「…正直に言うと、まだここから動くのは危ないと思うの。とにかく今はタクミとヤッて、それぞれができることを増やしていくしかないと思う…」
アイ「やっぱり…それしかないか……」
アカリ「…何かできるようになった、って言っても、まだ最低限のことだけでしょ……これじゃあどうしようないね…」
ソラ「でも…今日みたいに一人ずつだと、時間がかなりかかっちゃうよね。」

 ソラの言葉に今日一日のことを思い出したのか、何人かが黙ってうなずく。

ナオ「じゃあ、2人ずつでスルのはどう?」
アカリ「3Pするってこと?」
ナオ「そう。経験のある人と、まだ今日初めてだった人が組んで、2回か3回ずつすれば多少は時短になるんじゃないかな…」
ルカ「ちょっと…恥ずかしいけど…」

 今日が初めてだったルカとアユミとツグミは3Pと聞いて下を向いてしまうが、ナオはそのまま話を続けた。

ナオ「あとは、今日のように一日に一回だけじゃなくて、何回もシたほうがいいと思う…」
ソラ「っていうか、何回もシたいけど…」
アイ「それはあんたの希望でしょ。」
ソラ「それがみんなのしたいことなら、いいんだけど(笑)…」
アカリ「あんたはヤリたいだけでしょ(笑)…」

 さっきからヤル気満々のソラにアイとアカリがあきれる。

モア「え~、それだけでいいじゃん。」
ルカ「モアまでそんなこと言って…」
アユミ「でも、現実的なことを考えると、やっぱり回数するしかないと思う……それで出来ることが増えていくとしたら…」
アイ「…はあ~、確かにナオやアユミの言う通りかも…」

 アイは気が向かないのか、しぶしぶナオやアユミの言葉に同意する。
 そんな言葉を聞いてソラが念押しする。

ソラ「じゃあ、交代で何回も、でいいね…」
モア「やったー!」
ナオ「なんか、ちょっと違うんだけど(笑)…」
アカリ「で、1人ですんの?それとも2人?」
アイ「じゃあ2人でして、テンポよく交代ね…」
ソラ「仕方ないな~(笑)…」

 ソラとモアは2人とも今すぐタクミを連れていこうかというような表情をして、お互いに目が合うとニッコリと笑い合う。
 そんな2人の様子に他の女の子たちはクスクスと笑う。

アカリ「あんたたちは、ホントにヤリたいだけだねー(笑)…」
ソラ「え~、違うよ……みんなのためだよ……」
モア「みんなのためー!…」
アユミ「とてもそんな風には見えないけど(笑)…」

ソラ「みんなのためにタクミとヤルんだから…」
アカリ「いや、完全に自分自身のためだよ…こいつは…」
ソラ「いやいや、みんなのためだって(笑)…」
モア「ねぇー(笑)…」
アイ「(苦笑)」

 正直な気持ちがかくせないソラとモアの様子を見て、焚き火の灯りに全員の笑顔がらめく。

アイ「じゃあ、タクミはこれから大変だけど、ちょっと頑張がんばってもらおうかな…」
タクミ「えっ?えっ?一日中?」
アカリ「そうそう…」
アイ「話、聞いてた?…」
タクミ「まあ……」

 タクミはぼんやりした表情で小さくうなずく。
 ソラはタクミの後ろに回り、両手で肩をバシバシと何度も叩く

ソラ「よかったな、タクミ…エロゲーで夢見たことが現実になったな…」
タクミ「いや~…そんなことは……」
アカリ「一日中ヤルのがこんなに大変だとは……」
ナオ「思ってなかったでしょ(笑)…」
タクミ「……確かに……」

 タクミが正直に首を縦に振るのを見て、モアが口をとがらせる。

モア「え~、気持ちいいじゃん。ずっとシてたいよー…」
アイ「こういうのがいるから、大変なんだよ…」
ナオ「まあ、ちゃんと満足させてあげるから(笑)…」
ソラ「こう言ってて、ナオが一番しぼり取ってるんじゃない?」
ナオ「え~、アカリじゃないの?」

アカリ「う~ん、どっちもどっちかな…」
ソラ「やっぱり明日から、タクミは無事じゃすまないね(笑)…」
ナオ「たぶんそうね(笑)。」
タクミ「え~~~‼」
全員「(笑)」

 タクミの絶望的な絶叫ぜっきょうが山にこだましたのを聞いて、女の子たちは爆笑した。







*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、ブックマークや評価をいただければ励みになります。
 また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。

 2025年10月3日。
 読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
 一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
 今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。

 2025年11月23日
 文字数がかなり多いエピソードが増えてきましたので、エピソードを分割して読みやすくしていきます。
 現状では文字数で機械的に分割を行っていますので、単純にページが増えているという感じでお読み下さい。
 こちらもマイペースで進行いたしますので、ご容赦ください。
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