44 / 93
第一部 第一章 異世界転移の篇

32-1 袋に入っていたもの

しおりを挟む
 小屋の前に並べたふくろを前にして、アユミは地べたに置いた本をのぞき込んだ。

アユミ「え~と、まずなんか色の付いたタグみたいなのがついてる大きな袋があるでしょ?それに……なになに……その袋にそれぞれの服が入ってるんだって…」
アイ「服?」
ナオ「ホント?」
ルカ「やったー!」
アカリ「どの袋が誰のか、分かる?」

アユミ「なんか、色がそれぞれを指してるみたい……え~と、赤がアイで、青がアカリ。黄色がソラで、白が私だって。
 それで……黄緑色がツグミで…ナオが赤紫。緑色がモアで、青紫がルカで、最後に黒がタクミ君だって。」
ソラ「なになに、私、何色だって?」
モア「私ももう一ぺん。」

 みんなが本を覗き込み、互いの色を確かめて袋に向かう。

アイ「でも、でっかい袋だけど…何が入ってんの?」
アユミ「え~と、ズボンとシャツと上着と…あと、マントとかくつとかもあるみたい。」

 全員が袋を開けて中身を引っ張り出す。と、その時、ルカが何か声を上げた。

ルカ「ねえ、何か能力、付いたみたい…」
ナオ「なに?なんでこんなタイミングで?…」

 ルカが言ったので全員がステイタスを確認するとルカとアユミ、そしてナオに『下着』という能力が確かにある。
 アユミがあわててページをめくってその能力の意味を確認する。

アユミ「『下着』は……『パンツやショーツ、ブラジャー、インナーのシャツ、靴下などが出せる。
 サイズもそれぞれ、S、M、L、ブラジャーについてはカップ数に合わせたサイズが出せる。また、保温用兼作業用の手袋も出せる。』だって…」
ソラ「…またまたチートじゃん(笑)…」
アカリ「この服だって立派なチートだって(笑)…」
アイ「(笑)とにかく、その下着、出せる?」
ナオ「たぶん大丈夫…」

 ナオとアユミ、ルカがそれぞれ下着を出してみる。
 すると、その場にパンツやショーツ、シャツやブラ、靴下、そして軍手が一度に散乱した。

ソラ「出るのはいいんだけど…いちいち散らばるのね……」
ルカ「ゴメンね…なんか散らかっちゃって……」
アイ「ルカやアユミのせいじゃないって…」
モア「ねえ!Fのブラある?」
アカリ「自分で拾って確かめなよ(笑)…」
タクミ「あの~、男物ってあるかな?~」
ツグミ「ここに落ちてるの、そうじゃないかな…」
ナオ「男はあんただけだから、サイズも大丈夫じゃないの…」

 それぞれが散らばった下着をひろいながら、互いに合ったサイズを探していく。

アユミ「どう?みんな、自分のもの、分かった?…」
アカリ「こっちはオーケーだよ。」
ツグミ「私も大丈夫そう…」
アイ「じゃあ、引っ張り出した服も確認しようよ。」
ナオ「ついでに着替えだね…」

ソラ「やっと着替えられるー……」
アユミ「ホントだね…」
アイ「一週間もこのワイシャツのままだったから…」
タクミ「よ、よかった、服があって…」
アカリ「確かに(笑)…ずっとパンイチのままじゃ、ねえ(笑)…」
ルカ「(笑)…」

 全員がずっと着たまんまの制服、そして下着も脱いで、出てきた下着と袋に入っていた衣服に着替えた。

 入っていたのはややゆったりとしたズボンと、これも腕のところがふくらんだシャツ、その上から羽織はおるのは毛織物のベストようなものだ。
 ただそのベストも男のタクミは腰までの長さだが、女性用はもう少しお尻の辺りまでの長さがあり、少しスカートのようになっている。
 その毛織のベストの上からかわのベルトをする。

モア「ズボン、ベルトじゃなくてひもだよ……」
ツグミ「で、上からするベルトはこれでいいの?……」
アイ「このベルトのところに剣とかを差すのかな?」

 一応例の本にっている絵を見ながら、みんな見よう見まねで入っていた服を身につける。
 だが袋にはどうやって着るのか、書かれていない衣類もある。

ルカ「これがマントで…マント以外にも、なんか長いガウンみたいのや、毛皮のコートみたいのもあるけど……」
アカリ「だんだん暑くなってくるのに、そんなの着る?」
ナオ「それってみんな、冬用じゃない?」
アユミ「どれをいつ着るかまでは書いてないね……」
タクミ「マントもそうかな?」

 タクミは引っ張り出したマントの上下が分からず、ぐるぐる回すようにどこが上かを探している。

アカリ「タクミ、フードが付いてるのが上に決まってんじゃん…」
ナオ「マントは防寒もあるけど、防風とか防砂とか、日除ひよけとかもあるからいろいろじゃないかな…」
ツグミ「これ、全部着るんじゃないよね……」
ソラ「これから暑くなっから、無理に着ることないしょ。」

ルカ「この毛皮のコート、毛のついた方が内側になってる…」
アユミ「ガウンとかコートはやっぱり防寒具じゃないかな…」
アイ「とりあえずズボンとシャツとベストと着とけばいいんじゃない…」

 ある子は袋の中身を取り出し、ある子は袋の中に頭を突っ込んで他に何が入っているのかを調べる。 
 全員が着替えをしながらあたえられたものが何なのかを確かめていく。

ソラ「でも、この服、何枚ずつ入ってんの?5枚ずつぐらい…」
アユミ「うん、5枚ずつ…」
ツグミ「この靴も5足ずつあるよ。
アカリ「靴ってさ、なんか古い形してるけど、靴底、ちゃんとゴムのソールだよ(笑)…」
ソラ「…チートばっかり、ウケる(笑)…」
ナオ「でも、革だとすべるし、疲れるよ…」
アイ「せっかくの気遣きづかいだし、ありがたくいただいておきましょう(笑)…」
全員「(笑)」

 それぞれが自分のことを表している袋の中の服装に着替えると、上着やズボンのたけや太さ、靴のサイズまで身体に合っている。
 アイたちはお互いの様子をいぶかしみながら確かめる。

アカリ「でもさ、これってサイズがちょうどじゃん……」
ルカ「ねえ…」
ソラ「めっちゃキモイんだけど……」
モア「靴もピッタリ!」
アカリ「はかったみたいに……」

 女の子たちは袋から出てきた服が、丈から太さ、手足の長さ、細かいサイズまでがきっちり合っていることに気持ち悪がりながら、お互いにちゃんと着れているのかをチェックした。

ルカ「ホント……どっかでずっと見てたのかな?……」
アイ「だとしたら、今も見てんのかな…」
ナオ「ホントに気持ち悪いよね……」
ソラ「会ったら絶対にぶっ飛ばしてやる‼」
アユミ「まあまあ、落ち着いて……」
ツグミ「それにしてもこの服、みんな同じ色だね…」

 衣服の色はズボンが濃い灰色で、シャツは白、チョッキは茶色か少し赤っぽい茶色。マントは全て灰色。
 がらは一切なく、デザイン的にも多少シャツの手首が細くなっていたり、ひじから上が膨らんでいたりはするが、おしゃれの様子はほとんどない。

ソラ「色味が地味すぎるよ…」
アイ「だね…」
ナオ「でもさ…私たちって他所の世界から来たわけでしょ。
 あんまり派手な格好で目立たない方がよくない?能力もあるし、気を付けないとすぐ目をつけられるような気がするけど……」

ルカ「言えてる…こんな地味な方がいいと思うよ……」
アカリ「そうか、ただでさえ黒髪に黒い瞳って目立ちそうだもんね……」
モア「オシャレじゃないけど……」
ルカ「仕方ないよ……」

 アイとアカリは何度も後ろを向いたりしながらお互いの服装を見比べた。2人とも何かが気になっているようだ。

アイ「この服装って、多少女性っぽくしてるとこもあるけど…基本は男物だよね…」
アカリ「私もそう思う。」
タクミ「スカートって、全然無いの?」
ルカ「うん、一枚も入ってないの…」
モア「パンツスタイルってどう?アイとかはいわゆる剣士とかだからパンツでもわかるけど…
 魔法使いって、なんか足元までの長いマントで、フードで顔を隠して…みたいな…」
ナオ「言ってることは分かるけど…」

 アイやアカリは着替えた格好かっこうで、剣を振るようなフリをエアーでしてみる。

アイ「でも昨日の戦いでも分かったけど、結局パンツスタイルの方が戦いやすいよ。」
ツグミ「特にあの魔法使いの長い服は邪魔そうだね…」
アカリ「でも結局のところ、これって男装でしょ?どうなのかな?それともこの世界の女の人ってこんな格好してるのかな?……」
タクミ「パンツしかないなら、そうかもしれないけど…」

ナオ「でも、この服装見てると古い時代のようだから、あんまり女性ばかりのグループって知られない方がいいんじゃないかな…」
ソラ「それって襲われるってこと?」
ナオ「そう。やっぱり治安とか悪い感じがするから…」
アイ「まあ、とにかく新しい服が手に入っただけでもオーケーとしようよ…じゃ、次の袋ね。」











*楽しんでくださった方や今後が気になるという方は、「いいね」や「お気に入り」をいただければ励みになります。
 また、面白かったところや気になったところなどの感想もいただければ幸いです。よろしくお願いします。

 2025年10月9日。
 読みやすさ改善のため、文章を大幅に変更しました。
 一部の語句や文章の修正も行っていますが、内容は変更していません。
 今後も文章の改変を随時行っていきます。ゆっくりマイペースで行いますので、どうかご理解下さい。

 2025年12月2日
 文字数がかなり多いエピソードが増えてきましたので、エピソードを分割して読みやすくしていきます。
 現状では文字数で機械的に分割を行っていますので、単純にページが増えているという感じでお読み下さい。
 こちらもマイペースで進行いたしますので、ご容赦ください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...