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秋也の職業2。

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俺たちは席についた。

店員が注文を聞きに来る。




店員「ご注文は?」

秋也「俺はホット。」

千冬「ホットココアを・・・。」

店員「少々お待ちください。」




店員は去って行き、俺は彼女を見つめた。




秋也「・・・話してくれる?」




そう聞くと、彼女はゆっくりと話し始めた。




千冬「・・・私が未熟児で産まれた話は昨日しましたよね?」

秋也「あぁ、聞いた。よく風邪引いてたんだろ?」

千冬「未熟児で産まれた子は・・・何かしら病気を持ってる子もいてるんですよ。」

秋也「まぁ・・・。」




『普通』と言われてる大きさで産まれる子よりは確率は高い。

それは俺でも知ってることだ。




千冬「私は生まれつき血を作れない病気で・・・毎月病院に通ってます。」

秋也「!!・・・珍しい病気だな。聞いたことはあるけど・・。」

千冬「足りない成分を薬で補ってます。・・・今日も検査で・・・血を取ったので貧血に。」

秋也「なるほど。」




さっき倒れた原因が分かったところで店員が飲み物を持ってきた。




店員「お待たせいたしました。」

秋也「ありがとう。」

千冬「ありがとうございます。」




置かれたココアを見つめながら、彼女は話を続ける。



千冬「今まで付き合ってきた人たちに『毎日の薬』『毎月の病院』『生まれついての病気』のことをいうと、みんな別れを切り出してきました。」

秋也「・・・・・・。」

千冬「だから・・・もうお見合いもするつもりなかったのに・・。」

秋也「『お母さんに仕組まれた。』」

千冬「そうです。会っても別れるだけ。そんな時間を私に割いてもらうわけにはいかないんです。」




彼女はテーブルに置かれたココアを一口飲んだ。

そしてまたテーブルに置く。




秋也「別れなければ・・・問題ないんじゃない?」

千冬「え?」

秋也「言っただろ?俺はこの見合い続けたいって。・・・俺じゃダメか?」

千冬「!?・・私の話、聞いてました?」

秋也「聞いてた。」

千冬「私、病気持ちなんですよ?今でも風邪を引くとキツいですし。」

秋也「あのさぁ、俺、医者だって言ったよな?病気のやつなんて毎日見てるんだよ。なんとも思わない。」




そう言うと、彼女は畳みかけるように俺に言った。




千冬「私、すぐに貧血を起こしますし、ケガもできません。交通事故にあうと軽傷でも死ぬ確率が高いんです。だから私と結婚しても『重たい』だけです。」

秋也「軽傷でも死ぬって?」

千冬「・・・・・私の血液型は『Rh Nullヌル』。」




その言葉を聞いて耳を疑った。




秋也「・・・世界に40人ほどしかいない血液型。」




大量に血を流してしまうと必要になる輸血。

世界に40人ほどしかいない血液型なら・・・輸血は絶望的だ。

ケガができない理由は、血液型を聞いて一瞬でわかった。





千冬「そうです。だから・・・私のことを想ってくださるなら・・・私があなたを好きになる前にお見合いを終わらせてください。お願いします。」





そう言って彼女は深く・・・頭を下げた。




産まれ持っての病気。

世界でも珍しい血液型。

苦労してきたことは目に見えてわかる。




秋也「・・・千冬のことを想うからこそ、この見合いをやめるわけにはいかないな。」

千冬「・・・。」






初めて会った時からすでに惹かれていた。



カフェで俺を待っていた彼女。

遠目にその姿を見ていた。

窓から射し込む陽の光できらきら輝いていた髪の毛。

店内を見たり、外を見たりしてる姿はどこか幼げにも見える。

『かわいい』・・・その言葉で足りない何かを彼女に覚えた。





秋也(まぁ、実際話をしたりしてると中身もよかったんだけど。)




価値観が似てる俺と彼女。

この先、ずっと一緒にいるなら・・・彼女がいい。

そう思ったのはきっと、カフェで会釈をした彼女を見た時だ。






秋也「俺は好きだよ。俺なら千冬を守れる。」

千冬「笹倉さん・・・。」

秋也「だから俺と・・・最後の恋、しない?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬side・・・




秋也「だから俺と・・・最後の恋、しない?」




そう言って笹倉さんの手がすっ・・と伸びてきた。

私の長い髪の毛を指ですくう。




千冬「---っ!」

秋也「『俺のことを好きになる前に終わらせたい』・・・だっけ?もうとっくに俺のこと好きなんだろ?」

千冬「・・・そりゃあ、こんな素敵な人に好意を寄せてもらったら・・・誰だって・・・。」

秋也「ふーん・・・?」




病気のことを聞いても嫌な顔一つしない笹倉さん。

こんな状況は初めてで、どうしていいのかわからなくなってくる。




秋也「『結婚を前提にお付き合い』。・・・いい?」

千冬「それは・・・!ご迷惑になると思うので・・・・」




笹倉さんに好意を寄せてる自分は確かにいる。

でも、私の病気は決して軽いものじゃないし、治るものでもない。



前に進みたい私と、現状維持を希望する私が、心の中で戦いを始めた。








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