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迷惑な客。

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悠乃「私はみんなかわいいと思うけどなー?」

バイト「・・・・・。」

バイト「・・・・・・。」

バイト「・・・。」






カウンターの下に隠れてるバイトの子に言うと、彼女たちはすくっと立ち上がった。






遼平「お?みんないたの?」

バイト「こ・・こんにちは。」

遼平「今日もしっかりお仕事して偉いね。」

バイト「!・・・フロア回ってきますっ。」

遼平「うん。いってらっしゃい。」






3人は散り散りになりながらカウンターを出て行った。





悠乃「ふふ。」

遼平「?・・・どうかした?」

悠乃「いえ。杉野さんの力は偉大だなって思っただけですよ。」

遼平「?」





喋りながら作っていた『ラテ』。

会計をしながら、杉野さんに手渡した。




遼平「今日はずいぶん少ないんだな。お客。」




店内にお客さんはいてるけど、空いてる席数のほうが断然多い。

その理由は・・・






悠乃「今日はいつもの方がいらしてますから・・・様子を見て、持ち帰りにされた方が多くて。」





『いつもの人』。

月に何回か来てくださる常連の方の一人だけど、杉野さんとはほぼ、真逆な人。

従業員には連絡先をしつこく聞いてくるし、いつまでも従業員を解放してくれないものだから、他の業務に差し支えがでるほどだ。



遼平「今日来てるの?」




杉野さんが店内にいる『いつもの人』を探すよりも、問題が起こる方が早かった。





バイト「こっ・・・困りますっ・・!」

変な客「い・・いいだろ?れ・・連絡先・・・教えてよ。」






バイトの子の手首を掴んでるお客さん。

泣きそうな顔をしながら困ってるバイトの子が見える。




悠乃「あー・・・さっそくですね。杉野さん、ちょっと失礼します。」

遼平「うん。」





私はカウンターから出て、バイトの子の元に向かった。






悠乃「お客様、従業員が怯えておりますのでこの手を離してもらえますか?」

変な客「あ・・・・あぁ・・。」




掴んでいた手が離され、バイトの子も少し安心したようだった。

その子を背中に庇いながら、このお客さんと話をする。




悠乃「カフェ業務に関わること以外はお答えできない決まりになっております。連絡先でしたらこのお店の番号をお教えいたしますが・・・。」

変な客「だ・・大丈夫・・。」

悠乃「・・・え?」

変な客「き・・キミが・・1番だからね・・。」




すっ・・と手が伸びてきて、私の手首を掴んだ。




悠乃「-ー-っ!」




ぞわぞわっと背筋を伝う嫌な感覚。

思わず振り払いたくなったけど、ぐっと耐えた。




悠乃「・・・離してもらえますか?」

変な客「キ・・キミが・・ぼ・・僕の事・・好きなの・・知ってるから・・ね・・。」

悠乃(・・・・んなわけないじゃんっ!!)




どう言って納得してもらうかを考えてると、私の前に杉野さんが現れた。




遼平「・・・いい加減にしたら?」

変な客「・・・・は?」

遼平「ゆったりした時間を過ごしたくてここに来てるのに・・・みんなが迷惑してるのに気づかないのか?」





そのお客さんは周りにいるお客さんたちを見た。

白い目で見てる人もいれば、関わりたくないのか反対方向を向いてるお客さんもいる。





変な客「ぼ・・僕は・・・彼女に・・・会いに・・・。」

遼平「・・・今の時代、店側が客を出禁にすることだってできる。コーヒーをこの店で飲みたいならバカなことはするな。」

変な客「・・・・・・。」





そのお客さんは私の手を離し、立ち上がった。





変な客「ぼ・・僕はバカな客・・じゃない。・・いつか・・彼女と一緒に・・なるんだから・・・。」





そう言ってお店を出ていった。





遼平「大丈夫?芹澤さん。」




ぞわぞわした感覚が離れない手首を擦っていると、杉野さんが声をかけてくれた。




悠乃「大丈夫ですよ。ありがとうございました。」



笑顔を作り、杉野さんにお礼を言った。




バイト「悠乃さんっ・・・。」




バイトの子まで私に駆け寄ってきた。




悠乃「大丈夫だから。ほら、仕事に戻って?」

バイト「・・・はい。ありがとうございましたっ。」




私もバイトの子に続いてカウンターに戻る。




悠乃「あ、杉野さん、コーヒー淹れ直しますのでちょっとお待ちいただけますか?」

遼平「え?さっきもらったけど?まだあるし。」

悠乃「私からのお礼です。ナイショですよ?」




人差し指を立てて、自分の口に当てた。





遼平「---っ!・・・ありがとう。」




ブラックのコーヒーを1杯用意して、杉野さんに渡した。

杉野さんは受け取って



遼平「仕事に戻らないと。」



と、言って、お店を出て行った。






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