溺愛モードな警察官彼氏はチョコレートより甘い!?

すずなり。

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相談。

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「おぉ、琴葉。元気だったか?」

飛び出してきた妹さんは、私と同じような髪形をしていた。
ショートボブヘアでくるくると巻いた髪の毛。
両耳に髪の毛を引っかけていて、おでこを出してる。

「あれ?その人は?」

私の存在に気がついた妹さんに、私は頭を下げた。

「初めまして、『来間 凜華』です。」
「?・・近衛 琴葉です。えっと・・・?」

私の存在意味が分からない妹さんは、近衛さんを見上げた。

「琴葉、にいちゃんの彼女だよ。」
「彼女・・・!?」
「さっき一緒にいててな、そのまま一緒に来たんだよ。」
「そうなんだ・・・。」

私のことを上から下までじっと見つめて来る妹さんは、私に近づいてきた。
そして目を閉じ、くんくんっと匂いを嗅ぐような仕草を見せたのだ。

「?・・・甘い匂いする。」
「あ・・・。これじゃないですか?」

私は鞄の中から小さな箱を取り出した。
この中には3つ入りのチョコが入ってる。

「これは・・・?」
「チョコです。よかったら食べてくださいね。」

そう言って箱を開けて中のチョコを見せた。
クマのチョコが3つ並んでる姿を見て、妹さんは嬉しそうに目を輝かしてる。

「かわいいっ・・・!」
「よかった、気に入ってもらえて。」
「ありがとうございますっ。」

嬉しそうに受け取ってくれた妹さんに、私は明るい印象を抱いていた。
近衛さんからは『塞ぎ込んでる』とか『一緒にいないほうがいい』とかの話しか聞いてなかったから、不思議で仕方ない。

「ところで相談ってなんだ?てかお前、随分明るくなってる気がするんだけど・・・てか、前みたいに戻ってる?」

私の疑問は合っていたようで、近衛さんも不思議なようだ。

「あ・・・ちょっとリビングいこ?コーヒー淹れるし。」
「オーケー。」
「お邪魔致します。」

妹さんに案内してもらい、私は広い家の中を進んでリビングに通された。
座り心地のいいソファーに座ると、妹さんが手慣れた様子でコーヒーを淹れてくれ、運んできてくれたのだ。

「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「はい、おにい。」
「ん。」

淹れていただいたコーヒーに口をつけながら辺りを見回すと、リビングの端にグランドピアノが置かれてることに気がついた。
あまりにも広いリビングで、目が届かなかったみたいだ。

(すご・・・音楽一家って言ってたもんね・・・。)

棚にはCDや楽譜がびっしりと詰まっていて、大きなスピーカー付きの再生機なんかもある。
すごいところで近衛さんは育ったと思ってると、いつの間にか妹さんの相談話が始まっていた。

「あのね、今・・・ちょっと楽しいことがあって・・・」
「楽しいこと?」
「うん。バンド・・・なんだけど、おにいはどう思う?」
「どう思うって・・・バンドしてんのか?」
「ちょっと機会があって・・・してる。」

妹さんはバンドのボーカルとして活動を始めたらしく、それが楽しいそうだ。
学校へは滞りなく通ってるようで、学業に支障はないらしい。

「で?」
「その・・・ちょっと偽名?を使ってバンドしてて・・・ちょっと正体がバレたというか・・・」
「・・・。」

妹さんは自分の本名を隠してバンド仲間と活動をしてるらしくて、ひょんなことから正体がバレてしまったのだとか。
それもバンド仲間が同じ学園の大学生たちだったらしいのだ。

「なんて言われたんだ?」
「その・・『お遊びでからかいにきてるのか』とかいろいろ・・・」

だんだんテンションが下がって落ち込むように床を見てしまってる妹さん。
そんな様子を見て近衛さんも頭を抱えるように床を見てしまってる。

「『近衛琴葉』を知ってる奴らなのか?」
「それは・・・音楽業界は狭いのと、学園で繋がってるから噂を知っていたらしくて・・・」
「なるほど。」
「辞めたくないんだけど・・・もう修復できないのかなと思って・・・おにいに聞きたくて・・・。」

妹さんは『騙す気はなかった』ようだ。
事故で自分を見失い、自暴自棄になっていた時に見つけた自分の居場所だったようで、そのことを伝えたいのだとか。
でも話をしてもらえるような気がせず、また自分も声を掛けに行く勇気が出ないらしい。

「・・・それでも話をしないと前には進めないだろう?」
「・・・うん。」
「時間が経てば経つほど修復は難しくなる。最初に偽名を使ったことを謝って、その理由を正直に話しなさい。琴葉がからかうようなことしないのは兄ちゃんが一番よく知ってるからな。たぶんそいつらもわかってくれる。」
「・・・うん。」
「もし聞いてくれなかったら諦めろ。人の話を聞こうともしないやつはそこまでの縁だ。新しい縁を神さまが用意してくれるから落ち込むなよ?」
「そうだね・・・。」

そんな話を聞きながらコーヒーを飲んでると、近衛さんが思い出したように妹さんの頭を撫で始めた。

「そういえば成績表は?」
「・・・ん?」
「1学期の成績表。あるだろ?見せてみ?」
「・・・。」
「琴葉ー?」

妹さんは諦めたようにソファーから立ち上がり、リビングをでて階段を駆け上がっていった。
そして少しの時間が流れた後、階段を駆け下りてきてリビングに戻ってきたのだ。
手に薄い紙を持って・・・。

「ほら、成績表。」
「ん。お前の成績が悪かったら俺が怒られるからな。どれどれ・・・。」

近衛さんは受け取った成績表を見て目を丸くして驚いていた。
その様子を見て覗き込むと、なんと全てオールA評価だったのだ。

「言っとくけど首席だからね。実技も筆記も。」
「おま・・・学校は何ともないのか?」
「え?・・・あ、事故のこと?」
「そう。・・・事故のこともあるのにこの成績だったら・・・」
「まぁ、お母さんたちがお金払って記事になることは止めたけど噂は広がっちゃうからね。みんな知ってるよ。いじめはあると思う。」

妹さんが事故に遭った時、近衛さんのご両親は大金をはたいてニュースにはさせなかったそうだ。
このあとの妹さんの人生を守るためにしたことらしいけど、人の口に戸は立てられない。
噂として事故のことは知れ渡ってしまい、妹さんは高校で孤立してるそうだ。

「腕の神経いじってるのに最高成績なのが気に食わないんだってさ。物を隠されたりとかは普通にあるけど・・・まだ命の危険は感じてないから平気。」

その言葉を聞いて『強い・・』と思ってしまった私。
そんな中で見つけた居場所は、妹さんにとって生きる場所になってるのかもしれない。

「私に嫌がらせしてる暇あったら自分の腕を磨けばいいのにねぇ。」

『ごもっとも』と思いながらも口に出さないでいると、近衛さんが口を開いた。

「成績、落とすとかは考えてないのか?わざとでも落としたら嫌がらせは減るんじゃないか?」
「え?なんでそんなことしなきゃいけないの?売られてるケンカなんだよ?買うに決まってんじゃん。」
「・・・。」

意外と『我も強い』ことも知り、ハラハラしてしまう私。
ちらっと近衛さんを見ると、頭を抱えるようにして困ってしまっていた。

「琴葉に聞いた俺がバカだった・・・。まぁ、成績はいいとして、とりあえずはそのバンド仲間に謝ることだな。ケンカ腰になるなよ?」
「うっ・・・それは大丈夫だもん・・・っ。」
「ほんとか?あ、あと何て名前のバンド?どっかで見つけたら応援しとく。」
「『クレセント』だよ。」
「『クレセント』な。オーケー。」

その後も近衛さんと妹さんは相談内容を交えながらお互いの近況を話していた。
時々私も混ぜてもらって話をしてるうちに私が持ってきたチョコの話に・・・。

「このチョコ、さっき気がついたんですけど『ベアーズ』のチョコですよね!?入手が困難な上に超高いチョコ・・・もらってもいいんですか?」
「あー・・・・。」

私のチョコは私一人で作ってるから、受注から発送まで結構な時間がかかる。
それは数週間から数か月の差があり、遅くなることはちゃんと伝えてあるから問題はないのだけど・・・。

「それ、凜華の店のチョコだよ。」

どう伝えようか悩んでると、近衛さんがストレートに伝えてしまったのだ。

「・・・えぇぇ!?彼女さんの店って・・・『ベアーズ』!?」
「えと・・・そうなんです・・・。」

私が妹さんにお店の説明をすると、彼女は真剣に・・・真剣によだれを垂らしそうな勢いで話を聞いてくれていた。
私のチョコを食べたことがあるらしく、また食べたいと思っていてくれたのだとか・・・。

「次、いつ手に入るかわからなかったんで嬉しいですー!」
「ちょうどよかったみたいで嬉しいです。」

箱に入ってるチョコをじっと見てる妹さんは、ゆっくりチョコを取り出して口の中にチョコを放り込んだ。
一口で食べてしまった姿を見た近衛さんが、ぎょっとした顔をしてる。

「おまっ・・・!一口って・・・」
「えへっ。幸せーっ。」
「1個いくらすると思ってんだよ・・・。」

嬉しそうに食べてくれたのを見て私も嬉しくなってくる。
思えばこうやって目の前で食べてもらったのは初めてだったのだ。

「おにい、いい人を彼女にしたねぇ。」
「・・・お前の為に付き合ってるわけじゃないからな。」
「へへっ、わかってるよぉ。」

16歳という感じが表に出ていて、すごくかわいい妹さんだ。
相談内容をぶり返しては近衛さんに同じことを言われて飲み込んでいく。
きっと失いたくない仲間なんだろうなと思いながら私たちは時間の許す限り話をし、帰路についたのだった。





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