二度目の結婚は異世界で。~誰とも出会わずひっそり一人で生きたかったのに!!~

すずなり。

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視線を上げるとそこには黒くて短い髪の毛の男の人が立っていたのだ。


「ふぁっ・・!?」

「目が覚めたのか。・・・どこへ行く気だ?」

「---っ。」


仁王立ちするように立っていたこの人は、私よりはるかに背が大きい。

まるで壁のような存在に思わず後ずさりしてしまう。


「えと・・その・・・」


よくよくみるとこの人はレイスさんと同じ制服を身に纏っていた。

ここで『帰りたいんで失礼します』なんて言ったらどうなるかわからない。


(どうしよう・・・。)


悩んだ私が言葉に困ってると、この人は盛大にため息をついたのだ。


「はぁー・・・。」

「!!」

「ステラ、目が覚める前のことを覚えてるか?」

「え・・目が覚める前のこと・・?」

「そうだ。」


私はここに来たときから順番に記憶を手繰り寄せた。


(えっと・・・レイスさんと一緒にこの国にきて、お風呂に入って・・王様に会った。その時に剣を向けられて殺されるかと思って逃げて・・・)


路地裏に隠れていたところまで思い出した私は、そのあとのことがわからなかった。

どうしてここに戻ってきてしまってるのかが思い出せないのだ。


「・・・?」

「覚えてなさそうだな・・。お前、熱出して倒れたんだよ。」

「え・・!?」

「ここで侍女に看病させるから、回復するまでこの部屋から出るな。いいな?」

「!?」


『出るな』と言われても帰りたい私は出る道を探した。

目の前は大きな壁のような人がいるから無理だとして、窓から脱出はどうかと思ってそっちに目を向ける。


「窓は開かないからな?」

「へっ・・!?」


見透かされたような言葉に驚くと、この人は後ろ手に頭を掻きながらぐっと身を屈めた。

私と同じ目線で何を言われるのか身を構える。


「・・・お前が熱を出したのは俺たちのせいだ、あとできちんと謝罪する。」

「・・・謝罪?」

「あぁ。ちゃんと回復してから謝りたいんだ。だから侍女たちに任せて体を治せ。いいな?」


そう言ってこの人は私のおでこに手をあてた。


「ほら、まだ熱いじゃないか。」

「・・・。」

「ほら、寝とけ。」


私の体はくるっと回され、部屋にいた侍女さんに預けられてしまった。


「ステラを頼む。」

「かしこまりました。」

「・・・。」


私は侍女さんに連れられてベッドにいき、そっと腰かけた。

そして扉のほうに目をやると、さっきの人はもういなかったのだ。


「いない・・・。」


ぼそっと呟くと私をベッドに連れてきてくれた侍女さんが、水を用意しながら話してくれた。


「タウ様ですか?男の方は立ち入り禁止にされたんで戻られたんだと思いますよ?」

「立ち入り禁止・・?」

「はい。ステラ様が怖がらないようにと、立ち入り禁止にされました。」

「!」


剣を向けられたことで逃げたことを知ってるのか、私を気遣っての配慮をしてくれたようだった。

思い返せばさっきの人、ハマルおばぁちゃんが亡くなるときに『残された時間』を表す時計を貸してくれた人だったのだ。


(あの人が・・タウさん・・・。)


黒くて短い髪の毛がツンっと天井を向いて立っていて、おでこが全開になっている人だ。

私が知ってる人の中で一番背が高い。


(おばぁちゃんの時のお礼・・言えてなかった・・。)


『国宝級のもの』と言われていた時計を貸してくれた上に、熱を出して倒れていた私を保護してくれた。

部屋には女の人しかいないように配慮までしてもらったのに私はお礼も言えてないのだ。


(あとで謝罪って言ってたから、その時にお礼を言わせてもらおう・・。)


そう思ったとき、私の前に小さな机が運ばれてきた。

木でできた机はベッドの座ってる私の高さにぴったり合ってる。


「こちら、スープでございます。」


平たいお皿に入れられたスープは白い色をしていた。

スプーンを入れてくるっと円を描くように混ぜたけど具はなさそうだ。

でも少しとろみがあるこの白いスープに、私は見覚えがあるような気がした。


(これ・・シチュー?)


疑問を確信に変えるためにスプーンを口にいれると、懐かしい味が口の中に広がった。

野菜の出汁に、濃厚な牛乳。

前世で食べていたもの、そのものだ。


「手作りのシチューの味だ・・・。」


そう呟くと侍女さんがクスッと笑いながら水を持ってきてくれた。


「ふふ、ステラ様はシチューはお好きですか?」

「好き・・というか久しぶりに食べましたね・・・」


前世から考えたら軽く18年経ってることになる。

久しぶりを通り越してもはや初めまして状態だ。


「おいしい・・・。」

「よかったです。少し様子を見て、量を考えていきましょうか。」

「はい・・・。」


こうして私は侍女さんたちのお世話になりながら風邪を治すことになった。

基本的にふかふかなベッドで寝て過ごし、ご飯の時間になったら起きて食べる。

こまめに水分を取らせてもらって、また寝るを繰り返すこと三日。

熱が上がることがなくなり、体もすっかり軽くなった私はベッドから降りて大きな伸びを一つしていた。


「んーっ・・!!」

「全快おめでとうございます、ステラ様。」

「ありがとうございます、みなさんのおかげです。」


この世界は『薬』というものがあまりないらしく、風邪を引いても基本寝て過ごすのだとか。

だからこそ献身的なお世話が必要で、こまめに水を飲ませてくれたり栄養価が高くて消化のいいご飯を用意してくれる人が必要になってくるみたいだ。


「わたくし共は仕事ですので。・・・ではトゥレイス様とタウ様をお呼びしてもよろしいでしょうか?」


私の風邪が完全に治ったら会うという約束だ。

私もお礼を言わないといけない。


「はい、お願いします。」

「かしこまりました、少々お待ちください。」


そう言って侍女さんが部屋から出て行った。

その間に私は窓が開くかどうか見に行った。


「はめ込みの窓だ・・・開かないし割ることもできない・・。」


窓をコンコンっと叩き、厚さを確認した。

すると結構な分厚さがあるようで、低い音が鳴ったのだ。


「無理矢理割っても高さがあるから降りれそうにないし・・。」


窓の下は随分と下のほうに地面が見えた。

お城なこともあってか建物の一階と地面はズレて造られてるようだ。


「じゃあもしものときの逃げ道はあの扉一択かー・・。」


ガタイのいい男の人数人を正面から突破できるとは思えず、私は肩を落とした。

その場に身を任せるしかないと分かったとき、扉をノックする音が聞こえてきたのだ。


コンコンっ・・・


「はい。」


窓際に立ったまま振り返って返事をすると扉が開き、レイスさんを先頭にタウさんと他数人の男の人が入ってきた。

みんな同じ制服を身に纏ってる。


(確か騎士団って言ってたよね、レイスさん。)


その話からここにいる人たちはみんな騎士団に所属してる人だろう。

そしてその中に一人、赤い制服を身に纏ってる人がいた。

あの人は・・・私に剣を向けた人だ。


「---っ!」


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