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いろんな意味でハジメテ。

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どさっ・・・!


「ん?」


物音がして視線をうつすと、アイビーが本を落としていた。

落としたにも関わらず微動だにしない。


「・・・寝たか?」


立ち上がり、アイビーを覗き込むと目を閉じてすぅすぅと眠ってる姿が目に入る。


「本読んでると眠くなるんだよなー。」


落ちた本を取り、本棚に戻す。

近くに置いてあった大判のタオルをアイビーにそっとかけた。


「顔ちっちゃ・・・。」


俺の手のひらくらいしかない顔に、目や鼻や口がある。

白い顔にほんのり赤い頬。

長いまつ毛がきれいだった。


「こんなちっちゃい顔であんなに感情を表現するんだもんな・・・すごいよな。」


ころころと表情が変わるアイビー。

嬉しいときは嬉しそうに笑い、不思議に思ってるときはほんとに不思議そうな顔をする。

泣いてる顔はダリアが死んだときが最後だと思うけど・・・おもわず抱きしめたくなるくらいだった。


「守りたいってあんな時に思うんだろうな。」


泣かせたくない。

ずっと微笑んでいて欲しい。

そんなことを思いながら俺はアイビーの髪の毛に触れた。

柔らかく、細い髪の毛。

金色にきらきらと輝くのをただ見つめていた。


「・・・好きだ。アイビー。」


そう言った時、アイビーの目がぱちっと開いた。


「お?起きたか?」

「~~~っ。」


顔を真っ赤にして自分の腕で顔を隠したアイビー。

俺は思わずその手を取った。


「なんで隠すんだ?」


そう聞くとアイビーは掠れるような声で言った。


「・・・優しくしないで・・。」

「え?」

「聞いたんでしょ・・?シャガから・・前の世界のこと・・・。」


目を少し潤ませながら話をするのは、俺が知ってる18歳のアイビーじゃなかった。

『涼花』だ。

屈託のない笑顔を見せるのもアイビーであり、涼花だけど・・・『今』話してるのはアイビーじゃなかった。


「それは前の『男』のことか?」

「・・・。」

「そんな酷いやつだったのか?」

「・・・酷いって言うか・・・その人しか知らないの。髪の毛なんか優しく触られたことないし、そんな目で見られたこともない。だから優しくされると困るの!」


この世界じゃ男が女を大事にするのは当たり前。

でも涼花の世界じゃそうじゃなかったらしい。

なら戸惑うのも仕方のないこと・・・。


「でも俺はお前が欲しい。」

「!?」

「側にいてくれるなら・・・その男のこと忘れさせてやる。」

「・・・へ!?」


俺はアイビーの隣に寝ころんだ。

大きいクッションはアイビーだけなら余裕で寝れるけど、俺も一緒になると少しはみ出る。


「来い。」

「わっ・・・!」


アイビーの身体をぐぃっと引き寄せ、抱きしめた。


「ちょ・・!?」

「俺のことが嫌いならもう二度と来るな。少しでも俺に希望があるなら・・・拒むな。」


最初こそは身体に力が入っていたアイビーだったけど、それも時間が過ぎると俺に身体を預け始めてきた。

小さな手を俺の身体に乗せてぎゅっと抱きついてきてる。


「好きだ・・・。口づけていいか・・・?」


そう言ってアイビーの顎をすくった。

そのまま顔を近づけると・・・アイビーはぎゅっと目を閉じた。


「いいんだな・・?」


何も言わないアイビーの唇に、そっと自分の唇を重ねた。


「んっ・・・。」

「・・・そんな声出すな。抑えられなくなる。」


思ってたよりも甘い声を漏らしたアイビーを抱きしめなおした。

自分の子供が欲しくて誰かと婚姻関係にあったときもあったけど・・・アイビーは他の女とは違うような気がした。


(何て言うか・・・壊しそう・・・。)


今まで抱いた女は・・・

『早くして』とか『もういい?』とかよく口にしてた。

そんな女しか知らなかったけど・・・アイビーの甘い声に『もっと聞きたい』という欲求が生まれてくる。


「もうちょっとだけ・・・いいか・・?」



俺の言葉にアイビーはぎゅっと俺の服を握った。

その瞬間、俺の中にある糸がぷつんと切れる音が聞こえた。


『もっと食べたい。』


アイビーの顎を指で掴み、口を割らせる。

小さくできた唇の隙間に・・・舌を滑り込ませた。


「んぅ・・・」

(なんだこれ・・・せま・・・温か・・。)


ちゅくちゅくと口の中を食べてる。

アイビーの・・・口の中を。


(もっと・・・もっと・・・。)


アイビーの応え方が上手いのか、何度も何度も舌を絡めさせた。

くちゅくちゅと水音が聞こえる中で、必死に俺の服を握るアイビーが可愛すぎて息ができないくらいに口づけを繰り返した。


ちゅ・・ちゅちゅ・・ちゅぱっ・・・



「ニゲラっ・・・んーっ・・!」


バシバシと肩を叩かれ、俺は唇を離した。

ちゅぱっと音を立てて離れた唇からは、名残惜しむように銀糸が伝ってる。



「はぁっ・・はぁっ・・・」

「あー・・・もっと口づけてたい・・・。お前、月のモノはまだか?」

「ま・・まだ・・・」

「まぁ、俺も耳飾り作ってないしな・・。柄だけ見せてもらうぞ。」


そう言ってアイビーの左側の髪の毛をかき上げ、耳飾りを見た。


「へぇ・・。」


髪飾りの柄を覚えたところで髪の毛を下ろした。

アイビーはまだ息が整わないのか肩で息をしてる。


「月のモノが終わったら来い。右耳に・・・深い青の耳飾りつけてやるからな。」

「~~~~っ!?」



アイビーはそのあと顔を赤らめたまま帰っていった。

あのまま家に着いたらシャガに問われることは間違いなさそうだ。


「さて・・・俺は耳飾りを作りに行くか。」





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