溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

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圭と雪華。

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ーーーーーー







圭side・・・






春樹と居酒屋で会ってから1週間が経った。

新隊員として配属されるのは半年。

半年過ぎると別の署に異動になるか、そのままの勤務になる。

そして『新人』という肩書は外されて・・・一人前の扱いになる。

だから今の間に経験は積んでおかないといけない。




「圭!消耗品の補充はしたのか!?」

圭「まっ・・まだです!」

「早くしろ!次の出動命令が来るぞ!」

圭「はいっ!!」




ゆっくりする暇なんてない毎日。

秋の節目を超えても暑い日が続いてる。

そうなれば熱中症の患者は減らないわけで・・・救急車の出動も減らない。




圭「勉強もしないといけないのに・・・仕事がキツ過ぎて追いつかない・・・。」




毎日朝から晩まで仕事に追われ、家に帰るとカップ麺をかっこんで寝る。

夜勤の日は少しマシかと思ったけど、酔っ払いや重篤な症状になるまで放っておく人の通報でドタバタだ。

まだ昼間のほうがマシかもしれない。




圭「まともなメシが食いたい・・・。」




そんなことを考えながら消耗品の補充と点検を終わらせた。

デスクルームに戻ろうと足を向けると、女の人が一人、署の中に入ってくるのが見えた。

あれは・・・雪華ちゃんだ。




圭「雪華ちゃーん!」




手を大きく振りながら名前を呼ぶと、雪華ちゃんは顔を上げてキョロキョロと辺りを見回した。

俺の存在に気がついて、小さく手を振ってくれてる。



雪華「えっと・・原口・・さん?」

圭「圭でいいよ。何しに来たの?」



長袖のカーディガンを羽織ってる彼女。

深緑のロングスカートが大人っぽさを醸し出していて・・・『キレイ系女子』って感じだ。




雪華「あ、消防に差し入れを持って来たの。」

圭「差し入れ?」



雪華ちゃんは手に持っていた紙袋を広げた。

中を覗き込むと・・・そこには透明のパックに入ったサンドイッチが大量に入っていた。



圭「!!・・・すげぇ!!」

雪華「多い目に作ってきたから・・・圭くんも食べる?」

圭「・・・いいの!?」




雪華ちゃんは紙袋に手を入れ、サンドイッチのパックを一つ取り出した。

それを俺に手渡してくれて・・・にこっと笑った。



雪華「お仕事お疲れ様。じゃあ、私、行くね?」

圭「ありがとうっ!」




手を振って署の中に入っていく雪華ちゃんを見送り、俺もデスクルームに戻った。

少し余裕のあるこの時間に・・・さっきもらったサンドイッチを口に放り込む。



ぱくっ・・・!




圭(!?・・・なにこれ!めっちゃ美味い・・・!)



定番のたまごサンドに、カツサンド、ポテトサラダサンド・・・

全部で六種類のサンドイッチがパックに詰められていた。

白いパンに茶色いパン、フランスパンをスライスしたサンドイッチもあって・・・本格的だ。



圭(これ・・・春樹はもったいないことしたな。)



料理上手な女の子は・・・ポイントが高い。

こんな美味いサンドイッチを作れる彼女を手離すとか・・・春樹の気がしれなかった。



圭(こんな料理上手な彼女、欲しいなぁ・・・。)




仕事が終わって家に帰ると彼女が手料理を作って待ってくれてる。

そんな光景、男なら一度は憧れるものだ。



圭(雪華ちゃんって・・・雄大さんと付き合ってるんだよなー・・・。)



頭のキレる雄大さんは、署で有名人だった。

救助活動では先の先まで読んで、行動する。

回りをよく見ていて・・・統率する能力もずば抜けてる。


現場には欠かせない人だ。




圭(そんな人と張り合えるわけないよなぁ・・・。)





半ば諦めながらサンドイッチを頬張った。

でも・・・自分の心とは裏腹に・・・恋心が加速していく事件が起こる。







ーーーーー








30分後・・・





サンドイッチで体力を回復した俺はデスクルームで事務作業をしていた。

あれやこれやと書類があって・・・目が回るほど忙しい。

これを先輩方は平然とした表情でてきぱきとこなしていくのが見える。

正直・・・同じ人間とは思えない。




圭(いつかミスして書きそう・・・。)




そんなことを考えながら事務作業をひたすらこなしていると、一本の内線電話が鳴った。




ピピピッ・・・ピピピッ・・・・




電話の相手はいつも事務員だ。

書類の抜けや、消耗品の確認でかかってきたりすることが多い。

だから新人の俺が出ても何の問題もないから電話を取った。





圭「はい、救急です。」

雄大「あ、こちら消防。一件手当てを頼みたいんですけどいいですか?」

圭「?・・・はい、大丈夫ですけど・・。」

雄大「事務室の前まで頼みます。」



そう言って内線電話は切れた。




圭「手当て?」



疑問に思いながらも俺は席から立ちあがった。

ちょうどデスクルームに入ってきた先輩救急隊の人に行き先を告げる。



圭「消防から内線がありまして・・・手当ての要請が来たので行ってきます。」

「あー・・・さっきのかな?無理そうなら救急車出すって伝えてやってくれ。」

圭「?・・・わかりました。行ってきます。」




先輩の言葉の意味がわからないまま、俺は救急セットを手に取り、事務室に向かった。

2階にあるデスクルームから階段を下りてすぐにある事務室。

タタンッ・・・タタンッ・・・とリズムよく階段を下りると、そこに数人の消防隊の姿があった。

事務室の前に置いてある椅子を囲うようにして立ってる。



圭「救急です。どうかしましたか?」




そう言うと、俺の声に気がついた消防隊が答えてくれた。



「悪いな。ちょっと派手にぶつけちまったみたいで・・・。」

圭「ぶつけた?」


そう言うと消防隊の人は椅子を指差した。

数人いる消防隊の人の中を割って入ると・・・椅子に横になってる雪華ちゃんがいたのだ。




圭「・・・雪華ちゃん!?」

雪華「うー・・・・」

圭「どうしたんですか!?」



救急セットを広げながら椅子の前に屈んだ。

彼女の状態を確認していく。




雄大「そこにある柱にぶつかったんだよ。」

圭「え!?」




この消防署は通路のど真ん中に柱があるところが一か所だけある。

耐震の関係である柱だと、入隊のときに説明を受けた。

毎日署にいてれば慣れて・・・見てなくてもぶつからないようになっていく。

そうじゃなくても普通、前を見て歩けばぶつからない。




雄大「歩きながら鞄の中をちょっと見たみたいで・・・見上げたら柱だったらしい。」

圭「あー・・・」

雄大「咄嗟に横剥いたみたいだから側頭部が腫れてる。」

圭「ちょっとみますね。」




横になって目を閉じてる雪華ちゃんの頬を軽く叩いた。




圭「雪華ちゃん?わかる?」

雪華「大丈夫・・・」




眉を寄せながら少し苦しそうにする雪華ちゃんは、軽く脳震盪を起こしてるようだった。



圭「頭、痛い?」

雪華「じんじんする・・・。」

圭「吐き気は?」

雪華「ない・・・。」



側頭部を触ると、確かに腫れてることが確認できた。

外にこぶができてる時点でまず安心だ。

これが中だったら・・・大変なことになる。

受け答えもできてることから・・・安静にしてれば回復しそうだった。



圭「このまま少し様子見ましょう。もし悪化するようであれば救急車を出すと先輩から言付かってます。」

雄大「助かるよ。」




そう伝えた時、消防のサイレンが鳴った。




ビーッ・・!ビーッ・・!ビーッ・・!




『駅前で火災が発生!至急現場に向かってください!!』




雄大「!!」

圭「!!・・・雪華ちゃんは救護室に運んでおきます。行ってください!」

雄大「悪い!・・・雪華!いい子で寝てろよ?」



消防隊は慌ただしく出動していった。

近くにいた消防隊が全員いなくなり、雪華ちゃんと二人になった。





圭「どう?歩けそう?」




そう聞くと雪華ちゃんは椅子に手をついてゆっくりと起き上がった。

急に倒れたりしないようにその体を支える。




雪華「痛いけど・・大丈夫だから・・・。」

圭「救護室で手当てするから行こう。」




雪華ちゃんは椅子から立ち上がった。

俺は雪華ちゃんの身体を支えながら救護室に連れて行き、ベッド脇にある丸椅子に座らせた。

壁際にあるその椅子に座った雪華ちゃんは、壁にもたれてる。


俺は救急セットからガーゼとネットを取り出して頭に当てていった。




圭「しばらくはつけてた方がいいよ。どこかにあたったりしたら痛いから。」

雪華「ごめん・・・お仕事あるのに・・・。」

圭「これも仕事だから気にしないで。それより気分は?急激に悪くなるなら病院行ったほうがいいよ?」

雪華「うん・・・。」




雪華ちゃんは壁にもたれたまま目を閉じた。

俺は使った救急セットを片付けながら話しかける。



圭「柱にぶつかったんでしょ?どうぶつかった?」

雪華「・・・ごん・・・って・・・。」

圭「その時めまいとかした?」

雪華「・・・・。」

圭「雪華ちゃん?」

雪華「・・・う・・・ん・・」




だんだん返事が遅くなっていく彼女。

様子がおかしいと思って前にしゃがみ込んだ。




圭「雪華ちゃん?」




顔を覗き込むと、目を閉じてしまってる。

息を肩でしていて・・・なんだか荒い。



圭「・・雪華ちゃん!?」







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