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第37話 私が結婚を提案する
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「イザベル、君とは離婚することに決めた。慰謝料はもちろん請求するが、お前には支払い能力はないだろう」
「あ、あなた……許して……出来心だったの……」
「許さん。お前たちは、修道院……いや、『死の大地』へ送る」
死の大地。それは、罪を犯した者が送られる監獄に近い施設だ。暖房もなく、粗末な食事と、命を削るような過酷な労働だけが待っている場所。
「いやぁぁぁ! ドレスは!? お菓子は!? 舞踏会は!?」
「そんなものはない。あるのは祈りと労働だけだ」
「パパ! 私は!? 私は関係ないでしょ!?」
ローザが叫ぶ。
「お前もだローザ。お前は姉を虐げ、私の病状など気にもかけず、イザベルと贅沢に明け暮れた。その性根、叩き直してこい」
「どうして!? 私は、お母様と一緒に絶望の地へなんか行きたくない!」
その様子は、嫌いな野菜を食べさせられる子供みたいに、必死で逃げようとしているのが伝わってきた。
「嫌ぁぁぁ! 私は天使なのよ!? なんで私が!」
「天使なら、空へ飛んで逃げればよかろう? もっとも、その重い体では無理だろうがな」
心底嫌がっているローザを見て、私は笑いそうになった。父は、ローザが絶望の地に送られる前に、最後に皮肉を与えたみたいだった。
イザベルとローザは泣き叫びながら連行されていった。彼女たちは、二度と華やかなドレスを着ることも、甘いタルトを食べることもないだろう。
――数日後。屋敷の整理も一段落して私は庭で紅茶を飲んでいた。父はリハビリに励み、使用人たちと共に屋敷の再建を進めている。私は……暇になった。今まで私の時間の全てを奪っていた『害虫駆除』と『資金繰り』の業務がなくなったからだ。
「……退屈だわ」
平和って、こんなに何も起こらないものだったのかしら。私はぼんやりと空を見ていると、庭の向こうから黒いコートを着た人が歩いてきた。それはシュナイダー様だった。彼は、誰の許可もなく庭に入ってきて私の隣に座った。
「……のんびりした顔をしているな、セリーヌ」
「ごきげんよう、シュナイダー様……暇を持て余して、庭のアリの数を数えていたところですわ」
「それは重症だな……掃除は終わったか?」
「ええ、完全に。ゴミは分別して処分場へ送りました」
私が微笑むと、彼は満足そうに頷いた。
「ならば、契約の履行を求めよう」
「契約?」
「私の『最高財務顧問』になる話だ。まだ返事を聞いていない」
彼は真剣な眼差しで私を見つめた。その瞳の奥にある熱に、私の心臓がトクンと跳ねる。
「……シュナイダー様。私、考えましたの」
「ほう」
「ただの財務顧問では、割に合いませんわ。私は公爵家の令嬢ですもの。雇われの身分では、社交界での体面が保てません」
「……ふむ。続けてくれ」
私は扇子を閉じて彼を真っ直ぐに見た。これは人生最大にして最も重要な商談だ。
「私が貴方の領地へ行き、貴方の右腕として働く対価として……相応の『地位』と『権限』、そして『永久的なパートナーシップ』を要求します」
「具体的には?」
「……そうですね、貴方の妻にしていただきとう存じます」
「それは良いな」
私は真面目な顔で言ってしまった。顔が熱くて耳まで真っ赤になっているのがわかる。こんな回りくどい言い方しかできないなんて、私もまだ修行が足りない。
「しょうがないから、結婚してあげますよ? 別に、私がそんなことしたいわけじゃないんですけどね。まったく、どうしてこうなったのか、自分でもわからないですけど……」
「くっ……ハハハハハハハハハ! アハハハハッハハ! 参ったな!」
シュナイダー様は、驚いたように目を大きく見開き、大きな声で笑い出した。
「あ、あなた……許して……出来心だったの……」
「許さん。お前たちは、修道院……いや、『死の大地』へ送る」
死の大地。それは、罪を犯した者が送られる監獄に近い施設だ。暖房もなく、粗末な食事と、命を削るような過酷な労働だけが待っている場所。
「いやぁぁぁ! ドレスは!? お菓子は!? 舞踏会は!?」
「そんなものはない。あるのは祈りと労働だけだ」
「パパ! 私は!? 私は関係ないでしょ!?」
ローザが叫ぶ。
「お前もだローザ。お前は姉を虐げ、私の病状など気にもかけず、イザベルと贅沢に明け暮れた。その性根、叩き直してこい」
「どうして!? 私は、お母様と一緒に絶望の地へなんか行きたくない!」
その様子は、嫌いな野菜を食べさせられる子供みたいに、必死で逃げようとしているのが伝わってきた。
「嫌ぁぁぁ! 私は天使なのよ!? なんで私が!」
「天使なら、空へ飛んで逃げればよかろう? もっとも、その重い体では無理だろうがな」
心底嫌がっているローザを見て、私は笑いそうになった。父は、ローザが絶望の地に送られる前に、最後に皮肉を与えたみたいだった。
イザベルとローザは泣き叫びながら連行されていった。彼女たちは、二度と華やかなドレスを着ることも、甘いタルトを食べることもないだろう。
――数日後。屋敷の整理も一段落して私は庭で紅茶を飲んでいた。父はリハビリに励み、使用人たちと共に屋敷の再建を進めている。私は……暇になった。今まで私の時間の全てを奪っていた『害虫駆除』と『資金繰り』の業務がなくなったからだ。
「……退屈だわ」
平和って、こんなに何も起こらないものだったのかしら。私はぼんやりと空を見ていると、庭の向こうから黒いコートを着た人が歩いてきた。それはシュナイダー様だった。彼は、誰の許可もなく庭に入ってきて私の隣に座った。
「……のんびりした顔をしているな、セリーヌ」
「ごきげんよう、シュナイダー様……暇を持て余して、庭のアリの数を数えていたところですわ」
「それは重症だな……掃除は終わったか?」
「ええ、完全に。ゴミは分別して処分場へ送りました」
私が微笑むと、彼は満足そうに頷いた。
「ならば、契約の履行を求めよう」
「契約?」
「私の『最高財務顧問』になる話だ。まだ返事を聞いていない」
彼は真剣な眼差しで私を見つめた。その瞳の奥にある熱に、私の心臓がトクンと跳ねる。
「……シュナイダー様。私、考えましたの」
「ほう」
「ただの財務顧問では、割に合いませんわ。私は公爵家の令嬢ですもの。雇われの身分では、社交界での体面が保てません」
「……ふむ。続けてくれ」
私は扇子を閉じて彼を真っ直ぐに見た。これは人生最大にして最も重要な商談だ。
「私が貴方の領地へ行き、貴方の右腕として働く対価として……相応の『地位』と『権限』、そして『永久的なパートナーシップ』を要求します」
「具体的には?」
「……そうですね、貴方の妻にしていただきとう存じます」
「それは良いな」
私は真面目な顔で言ってしまった。顔が熱くて耳まで真っ赤になっているのがわかる。こんな回りくどい言い方しかできないなんて、私もまだ修行が足りない。
「しょうがないから、結婚してあげますよ? 別に、私がそんなことしたいわけじゃないんですけどね。まったく、どうしてこうなったのか、自分でもわからないですけど……」
「くっ……ハハハハハハハハハ! アハハハハッハハ! 参ったな!」
シュナイダー様は、驚いたように目を大きく見開き、大きな声で笑い出した。
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