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第36話 私を裏切った男の末路
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「ち、違うの……殺すつもりなんて……ただ、少し大人しくしていてもらおうと……」
「当主の判断能力を奪い、遺言書を偽造するためですね? これは立派な殺人未遂、および公文書偽造の重罪です」
「いやぁぁぁ! 私は悪くない! 全部、この家のためを思って……!」
「お姉様、許して! お願い!」
ローザも泣きついてくる。自分たちが甘い汁を吸うために父を薬漬けにしていた。その罪の重さを彼女たちは理解していない。
「残念ですが、手遅れです」
私は階段の上を見上げた。そこには、ジェラルドに支えられながらも、自分の足で立つ父の姿があった。体は痩せているけれど、目には騎士団長だった時の輝きが戻ってきている。
「……全部、聞いたぞ。イザベル、ローザ」
バラック・フォンテーヌ公爵。その低い声が響くと、ホールの空気が一瞬でピリッと凍りついた。
「あ、あなた……!? 目が覚めたの……?」
「ああ。セリーヌが薬を変えてくれたおかげでな……夢現の中で、お前たちが何を話していたか、何をしていたか……すべて覚えている」
父はゆっくりと階段を降りてきた。その迫力に、イザベルとローザは驚いて後ろに下がり、壁にぶつかって動けなくなった。
「私が病気で寝ている間、セリーヌに全ての重荷を背負わせ、さらに私をただの操り人形にしようとしたんだな……恥を知れ!」
父の怒鳴り声が屋敷全体を揺らした。それは雷が落ちたようなすごい音だった。
「ひぃっ!」
イザベルは、叫びながらびっくりしてお漏らししてしまった。その音は小さな滝のようで、イザベルの姿に驚いたローザは腰を抜かしてへたり込んだ。
「セリーヌ……すまなかった」
父は私の前に立ち、震える手で私の肩を抱いた。
「お前がこれほど苦しんでいるのに、私は……父親失格だ」
「……いいえ、お父様。戻ってきてくださって、嬉しいです」
私は父の胸に顔をうずめた。インクや薬の匂いじゃなくて、懐かしい父の匂いがした。その時、初めて本当に涙がこぼれた。計算でも演技でもなく、心からの涙だった。
――その日の午後、屋敷の応接間で最後の『家族会議』が開かれた。出席者は、父、私、そして縄で縛られたイザベルとローザ。さらに、呼ばれていないのに勝手に来たエドガーも連れてこられていた。懲りずに私と復縁をしたいと言って、門の前で騒いでいたエドガーは、父の命令で衛兵に捕まえられ、この部屋に引きずり込まれたのだ。エドガーは私の婚約者でありながら、ローザに心を奪われてしまった男だから、彼がやったことの罪はとても大きい。
「は、離せ! 僕はセリーヌの婚約者だぞ! こんな扱いを受けていいと思っているのか!」
エドガーは、床に転がされながら喚いている。
「黙れ、この愚か者が!」
父が一喝した。
「貴様がイザベルと結託し、私の遺言書を勝手に書き換えたことは、すでに証言が取れている。貴様は、我が家のっとりを画策した盗っ人だ」
「ち、違う! 僕はただ、セリーヌと結婚して家を支えようと……」
「支える? 娘の金を搾り取り、その妹と不貞を働き、我が家の資産を食い潰すことが『支える』ことか?」
父は私の用意した『借用書』と『損害賠償請求書』の束をエドガーの顔に叩きつけた。
「さあ、返してもらおうか」
「そ、そんな大金……」
「払えぬなら、法の裁きを受けてもらう。詐欺、横領、殺人未遂の共謀……縛り首になっても文句は言えんぞ」
縛り首という言葉を聞いた瞬間、エドガーの顔が真っ青になり、血の気がサーッと引いた。
「い、嫌だ! 死にたくない! 助けてくれ、セリーヌ!」
彼は芋虫が地面を這うかのように、必死にゴロゴロ転がりながら私の足元にたどり着き、命を奪われる寸前の生物のように私の足にしがみついてきた。
「愛してるんだ! 本当だ! 君だけなんだ!」
「……汚らわしい」
「君の靴だって舐める! 一生奴隷として仕えるから!」
「立たない無能なオス犬は消えなさい」
私は冷たく言い放ち、彼の顔を蹴り飛ばした。
「い、い、痛いよぉぉぉ!? セリーヌぅぅぅぅ! でも、君の気が済むなら、もっと蹴ってくれ! お願いだぁぁぁぁぁぁ! もっと強くやってくれ! まさか、こんなにドキドキしながら痛みを感じるなんて……」
頭のおかしなエドガーに、父は冷酷に告げた。
「貴様の身柄は、王国の『強制労働施設』……鉱山へ送る。そこで死ぬまで働き、借金を返済しろ。貴様が嘘をついていた鉱山事業だ。本物の現場で働けるのだ本望だろう?」
「こ、鉱山……!? 嫌だ! ふざけるなよぉぉぉ! 鉱山なんかで働いたら僕の綺麗な爪が汚れるじゃないか! あり得ない! ネイルサロンで時間をかけて磨いているんだぞ! 爪がちょっとでも傷ついたら、僕の人生が崩れちゃうよ! これまでの努力が、ああ、無駄になってしまう!」
「この救いようのないアホを連れて行け!」
父の言葉で、衛兵たちがエドガーを引きずっていく。
「セリーヌ! 愛してるぅぅぅ! お願いだから、金をくれぇぇぇぇぇぇ! 僕はこんなに情けなくて、もうどうしようもないんだ! うわあああぁぁぁ! このままじゃ、死んじゃうよぉぉぉぉ! こんなに泣いてるのに、誰も助けてくれないなんて! セリーヌ、お願い、僕を助けて! うわぁぁぁぁ! 僕は、もうダメだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……死ぬしかないんだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
エドガーの恥ずかしい叫び声が廊下に響き渡っていたが、やがて静かになった。もう二度と、彼の顔を見ることはないだろう。これから彼は暗い地下で、一生かけて自分が犯した罪と向き合わなければならない。
そして次に、父はイザベルとローザを見た。
「当主の判断能力を奪い、遺言書を偽造するためですね? これは立派な殺人未遂、および公文書偽造の重罪です」
「いやぁぁぁ! 私は悪くない! 全部、この家のためを思って……!」
「お姉様、許して! お願い!」
ローザも泣きついてくる。自分たちが甘い汁を吸うために父を薬漬けにしていた。その罪の重さを彼女たちは理解していない。
「残念ですが、手遅れです」
私は階段の上を見上げた。そこには、ジェラルドに支えられながらも、自分の足で立つ父の姿があった。体は痩せているけれど、目には騎士団長だった時の輝きが戻ってきている。
「……全部、聞いたぞ。イザベル、ローザ」
バラック・フォンテーヌ公爵。その低い声が響くと、ホールの空気が一瞬でピリッと凍りついた。
「あ、あなた……!? 目が覚めたの……?」
「ああ。セリーヌが薬を変えてくれたおかげでな……夢現の中で、お前たちが何を話していたか、何をしていたか……すべて覚えている」
父はゆっくりと階段を降りてきた。その迫力に、イザベルとローザは驚いて後ろに下がり、壁にぶつかって動けなくなった。
「私が病気で寝ている間、セリーヌに全ての重荷を背負わせ、さらに私をただの操り人形にしようとしたんだな……恥を知れ!」
父の怒鳴り声が屋敷全体を揺らした。それは雷が落ちたようなすごい音だった。
「ひぃっ!」
イザベルは、叫びながらびっくりしてお漏らししてしまった。その音は小さな滝のようで、イザベルの姿に驚いたローザは腰を抜かしてへたり込んだ。
「セリーヌ……すまなかった」
父は私の前に立ち、震える手で私の肩を抱いた。
「お前がこれほど苦しんでいるのに、私は……父親失格だ」
「……いいえ、お父様。戻ってきてくださって、嬉しいです」
私は父の胸に顔をうずめた。インクや薬の匂いじゃなくて、懐かしい父の匂いがした。その時、初めて本当に涙がこぼれた。計算でも演技でもなく、心からの涙だった。
――その日の午後、屋敷の応接間で最後の『家族会議』が開かれた。出席者は、父、私、そして縄で縛られたイザベルとローザ。さらに、呼ばれていないのに勝手に来たエドガーも連れてこられていた。懲りずに私と復縁をしたいと言って、門の前で騒いでいたエドガーは、父の命令で衛兵に捕まえられ、この部屋に引きずり込まれたのだ。エドガーは私の婚約者でありながら、ローザに心を奪われてしまった男だから、彼がやったことの罪はとても大きい。
「は、離せ! 僕はセリーヌの婚約者だぞ! こんな扱いを受けていいと思っているのか!」
エドガーは、床に転がされながら喚いている。
「黙れ、この愚か者が!」
父が一喝した。
「貴様がイザベルと結託し、私の遺言書を勝手に書き換えたことは、すでに証言が取れている。貴様は、我が家のっとりを画策した盗っ人だ」
「ち、違う! 僕はただ、セリーヌと結婚して家を支えようと……」
「支える? 娘の金を搾り取り、その妹と不貞を働き、我が家の資産を食い潰すことが『支える』ことか?」
父は私の用意した『借用書』と『損害賠償請求書』の束をエドガーの顔に叩きつけた。
「さあ、返してもらおうか」
「そ、そんな大金……」
「払えぬなら、法の裁きを受けてもらう。詐欺、横領、殺人未遂の共謀……縛り首になっても文句は言えんぞ」
縛り首という言葉を聞いた瞬間、エドガーの顔が真っ青になり、血の気がサーッと引いた。
「い、嫌だ! 死にたくない! 助けてくれ、セリーヌ!」
彼は芋虫が地面を這うかのように、必死にゴロゴロ転がりながら私の足元にたどり着き、命を奪われる寸前の生物のように私の足にしがみついてきた。
「愛してるんだ! 本当だ! 君だけなんだ!」
「……汚らわしい」
「君の靴だって舐める! 一生奴隷として仕えるから!」
「立たない無能なオス犬は消えなさい」
私は冷たく言い放ち、彼の顔を蹴り飛ばした。
「い、い、痛いよぉぉぉ!? セリーヌぅぅぅぅ! でも、君の気が済むなら、もっと蹴ってくれ! お願いだぁぁぁぁぁぁ! もっと強くやってくれ! まさか、こんなにドキドキしながら痛みを感じるなんて……」
頭のおかしなエドガーに、父は冷酷に告げた。
「貴様の身柄は、王国の『強制労働施設』……鉱山へ送る。そこで死ぬまで働き、借金を返済しろ。貴様が嘘をついていた鉱山事業だ。本物の現場で働けるのだ本望だろう?」
「こ、鉱山……!? 嫌だ! ふざけるなよぉぉぉ! 鉱山なんかで働いたら僕の綺麗な爪が汚れるじゃないか! あり得ない! ネイルサロンで時間をかけて磨いているんだぞ! 爪がちょっとでも傷ついたら、僕の人生が崩れちゃうよ! これまでの努力が、ああ、無駄になってしまう!」
「この救いようのないアホを連れて行け!」
父の言葉で、衛兵たちがエドガーを引きずっていく。
「セリーヌ! 愛してるぅぅぅ! お願いだから、金をくれぇぇぇぇぇぇ! 僕はこんなに情けなくて、もうどうしようもないんだ! うわあああぁぁぁ! このままじゃ、死んじゃうよぉぉぉぉ! こんなに泣いてるのに、誰も助けてくれないなんて! セリーヌ、お願い、僕を助けて! うわぁぁぁぁ! 僕は、もうダメだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……死ぬしかないんだあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
エドガーの恥ずかしい叫び声が廊下に響き渡っていたが、やがて静かになった。もう二度と、彼の顔を見ることはないだろう。これから彼は暗い地下で、一生かけて自分が犯した罪と向き合わなければならない。
そして次に、父はイザベルとローザを見た。
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