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第9話
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あの空っぽの笑い声が部屋に溶けて消えた後、私の心に残ったのは、焼け野原のような静けさだけだった。怒りも、悲しみも、燃え尽きてしまった。後に残ったのは、ただ、やるべきことをやり遂げるという氷のように冷たい使命感だけ。
復讐なんて、ドラマチックな言葉は好きじゃない。これは、復讐じゃない。後片付けだ。
彼らが私の人生に撒き散らした嘘と誤魔化しという名のゴミを、私が綺麗に片付ける。ただ、それだけのこと。そして、その掃除のやり方は私が決める。
泣き叫んで相手を罵るのは、三流のやることだ。それでは、結局自分も相手と同じ土俵に立つことになる。一流は違う。静かに、微笑みを浮かべたまま、相手が気づいた時にはもう、逃げ場のない場所に追い込んでいる。そう、チェスのように。
「アンナ」
「はい、お嬢様」
「証拠が、まだ足りないわ」
私は、アンナが持ってきた音声記録の水晶玉には目もくれず静かに言った。
「あの二人の会話は、決定打ではあるけれど、それだけではただの痴話喧嘩で終わってしまう可能性がある。もっと、客観的で、誰の目にも明らかな『罪』の証拠が必要よ」
「と、仰いますと?」
「キングダム男爵家の借金の金の流れ。オリバーが個人的に、どこからか金を引き出し、彼らに流していないか。王家の財産に手をつけているなら、最高ね。それから、ローズ嬢が買い漁った品々のリストと支払い記録。全て、オリバーの名義になっていないか、徹底的に洗って」
私の指示に、アンナは深く、静かに頷いた。彼女の灰色の瞳は、私の意図を正確に理解していた。これは、もはや婚約破棄のスキャンダルではない。王子の地位を揺るがしかねない汚職事件へと発展させるための布石だ。
「それと、もう一つ」
私は机の引き出しから、一枚の羊皮紙を取り出した。それは、湖のほとりにある、あの別荘の権利書だった。お父様が、お前の好きなように使いなさいと、優しい笑顔で渡してくれた私の宝物。
「公爵家ご用達の法律家、グレイ伯爵を、明日の午後、内密に呼んでちょうだい。誰にも気づかれないように」
「承知いたしました」
アンナが下がった後、私は一人、権利書を眺めた。美しい薔薇の庭園。きらめく湖面。穏やかな時間。その全てを、あの二人は土足で踏み荒らそうとした。自分のものだと信じて疑わなかった。
「残念だったわね。ここは、あなたたちの家にはならない」
私はその権利書を、暖炉の火にかざした。燃やすためじゃない。その熱で、自分の決意を焼き付けるために。
この別荘は、私の復讐の最も重要な駒になる。ローズが、喉から手が出るほど欲しがった私の宝物。それを、彼女たちの目の前で、彼らが決して手の届かない全く別の誰かに渡してやろう。
その瞬間の、彼らの絶望した顔を想像するだけで、私の冷え切った心に、ほんの少しだけ愉悦の熱が灯る気がした。
復讐なんて、ドラマチックな言葉は好きじゃない。これは、復讐じゃない。後片付けだ。
彼らが私の人生に撒き散らした嘘と誤魔化しという名のゴミを、私が綺麗に片付ける。ただ、それだけのこと。そして、その掃除のやり方は私が決める。
泣き叫んで相手を罵るのは、三流のやることだ。それでは、結局自分も相手と同じ土俵に立つことになる。一流は違う。静かに、微笑みを浮かべたまま、相手が気づいた時にはもう、逃げ場のない場所に追い込んでいる。そう、チェスのように。
「アンナ」
「はい、お嬢様」
「証拠が、まだ足りないわ」
私は、アンナが持ってきた音声記録の水晶玉には目もくれず静かに言った。
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「と、仰いますと?」
「キングダム男爵家の借金の金の流れ。オリバーが個人的に、どこからか金を引き出し、彼らに流していないか。王家の財産に手をつけているなら、最高ね。それから、ローズ嬢が買い漁った品々のリストと支払い記録。全て、オリバーの名義になっていないか、徹底的に洗って」
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「それと、もう一つ」
私は机の引き出しから、一枚の羊皮紙を取り出した。それは、湖のほとりにある、あの別荘の権利書だった。お父様が、お前の好きなように使いなさいと、優しい笑顔で渡してくれた私の宝物。
「公爵家ご用達の法律家、グレイ伯爵を、明日の午後、内密に呼んでちょうだい。誰にも気づかれないように」
「承知いたしました」
アンナが下がった後、私は一人、権利書を眺めた。美しい薔薇の庭園。きらめく湖面。穏やかな時間。その全てを、あの二人は土足で踏み荒らそうとした。自分のものだと信じて疑わなかった。
「残念だったわね。ここは、あなたたちの家にはならない」
私はその権利書を、暖炉の火にかざした。燃やすためじゃない。その熱で、自分の決意を焼き付けるために。
この別荘は、私の復讐の最も重要な駒になる。ローズが、喉から手が出るほど欲しがった私の宝物。それを、彼女たちの目の前で、彼らが決して手の届かない全く別の誰かに渡してやろう。
その瞬間の、彼らの絶望した顔を想像するだけで、私の冷え切った心に、ほんの少しだけ愉悦の熱が灯る気がした。
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