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第24話
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「……すまなかった」
絞り出すような、声。
「俺が……俺が、全て、間違っていた……」
「何が、間違っていたのですか?」
私は、容赦なく、問い詰める。曖昧な謝罪など、許さない。
「……ローズが、余命一年だなどと、嘘をついたこと……。君の、優しさに、つけこんで、別荘を、騙し取ろうとしたこと……」
「続けて?」
「君を……公爵令嬢アイラ・フォン・バランシュナイルを……侮辱し、その誇りを、踏みにじったこと……。全て……俺の、罪だ……。申し訳、なかった……っ」
最後は、言葉にならなかった。ただ、すすり泣きだけが、静まり返った広間に響いていた。
床には、彼の涙が落ちてできた小さな水たまりがあった。
ああ、なんて、素晴らしい誕生日プレゼント。
これ以上の贈り物を、私は知らない。
私は、彼の無様な姿を、しばらくの間、満足するまで見下ろしていた。
そして、もう、十分だと思った。
私は、彼の隣で、放心したように座り込んでいるローズに、視線を移した。
「ローズ様!」
私の呼びかけに、彼女の肩が、びくりと跳ねる。
「あなたは、彼に、感謝なさい。彼の、この土下座のおかげで、あなたたちは、今夜、野宿をしなくて済むのですから」
そして、私は、近くに控えていた執事を手招きした。
「この二人を、離れの、物置小屋へ案内してあげて。しばらくは、そこを使うことを、許可します。食事は、一日一回。使用人たちの、残りで十分でしょう」
「かしこまりました、お嬢様」
執事は、何の感情も見せずに、深く一礼した。
衛兵たちが、魂が抜けたようになったオリバーと、腰が抜けて動けないローズを、無造作に両脇から抱え上げる。まるで、ゴミ袋でも運ぶかのように。
引きずられていく彼らの姿を、私は、もう見ていなかった。
私は、呆然と立ち尽くす貴族たちの方へ向き直った。そして、何事もなかったかのように、にっこりと、完璧な微笑みを浮かべてみせた。
「皆様、お見苦しいところをお見せいたしました。余興が、少し、長引いてしまいましたわね」
私のその一言で、会場の凍りついた空気が、ゆっくりと溶け始めた。誰かが、ごくりと喉を鳴らす音。そして、どこからか、こわばったような、小さな拍手が起こった。それは、やがて、広間全体に広がっていく。
その拍手は、もはや、私への賞賛や同情ではなかった。
身のすくむような威厳。
この、穏やかな微笑みの下に、悪魔のような冷徹さを隠し持った、一人の公爵令嬢の圧倒的な存在感に、貴族たちは、尊敬とおそれが混ざった感情が湧き上がった。
それで、よかった。
同情されるくらいなら、恐れられる方が、ずっといい。
「さあ、音楽を」
私がそう言うと、楽団は慌てて、華やかなワルツを奏で始めた。
「皆様、夜はまだ始まったばかりですわ。どうぞ、私の誕生日を、祝い続けてくださいな」
私は、近くにいた若い貴公子から、差し出された手を取り、ダンスの輪の中へと、滑り込んでいく。
夜空色のドレスが、ふわりと舞った。
もう、私の視界に、あの二人の姿はなかった。
そして、私の新しい物語が、今、ここから始まる。
偽りなく、心から誰かを想う──そんな本質だけが残る恋。
誰にも、何も、奪わせない。
私の人生の主役は、いつだって、私自身なのだから。
シャンパンの泡が、再び、きらきらと輝き始めた。
それは、私の未来を祝福するように、いつまでも、美しく弾けていた。
最高の、誕生日の夜だった。
絞り出すような、声。
「俺が……俺が、全て、間違っていた……」
「何が、間違っていたのですか?」
私は、容赦なく、問い詰める。曖昧な謝罪など、許さない。
「……ローズが、余命一年だなどと、嘘をついたこと……。君の、優しさに、つけこんで、別荘を、騙し取ろうとしたこと……」
「続けて?」
「君を……公爵令嬢アイラ・フォン・バランシュナイルを……侮辱し、その誇りを、踏みにじったこと……。全て……俺の、罪だ……。申し訳、なかった……っ」
最後は、言葉にならなかった。ただ、すすり泣きだけが、静まり返った広間に響いていた。
床には、彼の涙が落ちてできた小さな水たまりがあった。
ああ、なんて、素晴らしい誕生日プレゼント。
これ以上の贈り物を、私は知らない。
私は、彼の無様な姿を、しばらくの間、満足するまで見下ろしていた。
そして、もう、十分だと思った。
私は、彼の隣で、放心したように座り込んでいるローズに、視線を移した。
「ローズ様!」
私の呼びかけに、彼女の肩が、びくりと跳ねる。
「あなたは、彼に、感謝なさい。彼の、この土下座のおかげで、あなたたちは、今夜、野宿をしなくて済むのですから」
そして、私は、近くに控えていた執事を手招きした。
「この二人を、離れの、物置小屋へ案内してあげて。しばらくは、そこを使うことを、許可します。食事は、一日一回。使用人たちの、残りで十分でしょう」
「かしこまりました、お嬢様」
執事は、何の感情も見せずに、深く一礼した。
衛兵たちが、魂が抜けたようになったオリバーと、腰が抜けて動けないローズを、無造作に両脇から抱え上げる。まるで、ゴミ袋でも運ぶかのように。
引きずられていく彼らの姿を、私は、もう見ていなかった。
私は、呆然と立ち尽くす貴族たちの方へ向き直った。そして、何事もなかったかのように、にっこりと、完璧な微笑みを浮かべてみせた。
「皆様、お見苦しいところをお見せいたしました。余興が、少し、長引いてしまいましたわね」
私のその一言で、会場の凍りついた空気が、ゆっくりと溶け始めた。誰かが、ごくりと喉を鳴らす音。そして、どこからか、こわばったような、小さな拍手が起こった。それは、やがて、広間全体に広がっていく。
その拍手は、もはや、私への賞賛や同情ではなかった。
身のすくむような威厳。
この、穏やかな微笑みの下に、悪魔のような冷徹さを隠し持った、一人の公爵令嬢の圧倒的な存在感に、貴族たちは、尊敬とおそれが混ざった感情が湧き上がった。
それで、よかった。
同情されるくらいなら、恐れられる方が、ずっといい。
「さあ、音楽を」
私がそう言うと、楽団は慌てて、華やかなワルツを奏で始めた。
「皆様、夜はまだ始まったばかりですわ。どうぞ、私の誕生日を、祝い続けてくださいな」
私は、近くにいた若い貴公子から、差し出された手を取り、ダンスの輪の中へと、滑り込んでいく。
夜空色のドレスが、ふわりと舞った。
もう、私の視界に、あの二人の姿はなかった。
そして、私の新しい物語が、今、ここから始まる。
偽りなく、心から誰かを想う──そんな本質だけが残る恋。
誰にも、何も、奪わせない。
私の人生の主役は、いつだって、私自身なのだから。
シャンパンの泡が、再び、きらきらと輝き始めた。
それは、私の未来を祝福するように、いつまでも、美しく弾けていた。
最高の、誕生日の夜だった。
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