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第45話 恋敵編 愛の試練と挑戦
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きっと、この世界で一番幸せなのは、私だと思う。
だって今、私の隣には、世界で一番素敵な人がいるのだから。
「アイラ」
耳に静かに染み入るような、甘く低い声だった。名前を呼ばれただけで、心臓がきゅっと可愛らしい音を立てる。見上げると、隣国の王弟殿下――カイ様が、私を見つめて柔らかく微笑んでいた。
ここは王都の郊外へと続く、人通りの多いポプラの並木道。葉擦れの音がさわさわと耳に心地よくて、木漏れ日がキラキラと地面に降り注いでいる。私たちは、護衛の騎士たちが気づかれないくらいの距離を保ってくれているのをいいことに、“ふたりきり”の時間を満喫していた。
今日の私は、この日のために仕立てた新しいドレスを着ている。空色のシルク地に、繊細なレースが幾重にもあしらわれた、とっておきの一着だ。
「そのドレス、本当によく似合っている。まるで、空をそのまま閉じ込めたかのようだ」
「……もう、カイ様ったら。褒めすぎですわ」
「褒めすぎなことなどない。アイラの美しさを前にすると、どんな言葉も陳腐に聞こえてしまう」
真顔でそんなことを言うものだから、私の頬は熟れた果実みたいに赤くなっていく。カイ様は、いつもこうだ。私がすること、身に着けるもの、そのすべてを、世界で一番素晴らしいもののように褒めてくれる。
その度に、私は自分が特別な存在なのだと錯覚してしまう。ううん、錯覚なんかじゃない。カイ様と一緒にいるときの私は、きっと本当に特別なんだ。
(心臓が、もたない……)
そんな私の心の声に気づくこともなく、カイ様は楽しそうに目を細めている。彼の黒曜石のような髪が、柔らかな風にさらりと揺れた。
「見て、カイ様。あの露店の飴細工、すごく綺麗」
私が指さした先には、色とりどりの飴細工が太陽の光を浴びて宝石のように輝いていた。鳥や花、蝶々をかたどったそれは、芸術品のようだ。
「……そうだな」
「昔から、こういう素朴で、職人さんの心がこもったものが好きだったの」
宝石や豪華なドレスももちろん素敵だけれど、私の心の琴線に触れるのは、いつもこういうささやかな手仕事の美しさだった。私の言葉に、カイ様は嬉しそうに頷く。
「では、買おう。アイラが笑ってくれるなら、いくらでも」
彼は穏やかな微笑みを浮かべたまま、私の手を引いて露店へ向かう。そして、私が一番綺麗だと思った青い蝶の飴細工と、彼に似合いそうな白馬の飴細工を二つ、買ってくれた。
「ほら、アイラ」
差し出された青い蝶は、陽光を受けて透き通り、今にも羽ばたいてしまいそうだった。それを見つめる私の頬も、自然と緩んでいく。幸せって、こういう瞬間のことを言うんだろうな。
不意に、道の脇でしゃがみこんで、しくしくと泣いている小さな男の子が目に入った。年は五つくらいだろうか。高そうな服を着ているけれど、周りに親らしき人の姿はない。
「カイ様、あの子……」
「迷子、かな?」
私たちは顔を見合わせると、どちらからともなく、その子に歩み寄った。
だって今、私の隣には、世界で一番素敵な人がいるのだから。
「アイラ」
耳に静かに染み入るような、甘く低い声だった。名前を呼ばれただけで、心臓がきゅっと可愛らしい音を立てる。見上げると、隣国の王弟殿下――カイ様が、私を見つめて柔らかく微笑んでいた。
ここは王都の郊外へと続く、人通りの多いポプラの並木道。葉擦れの音がさわさわと耳に心地よくて、木漏れ日がキラキラと地面に降り注いでいる。私たちは、護衛の騎士たちが気づかれないくらいの距離を保ってくれているのをいいことに、“ふたりきり”の時間を満喫していた。
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「そのドレス、本当によく似合っている。まるで、空をそのまま閉じ込めたかのようだ」
「……もう、カイ様ったら。褒めすぎですわ」
「褒めすぎなことなどない。アイラの美しさを前にすると、どんな言葉も陳腐に聞こえてしまう」
真顔でそんなことを言うものだから、私の頬は熟れた果実みたいに赤くなっていく。カイ様は、いつもこうだ。私がすること、身に着けるもの、そのすべてを、世界で一番素晴らしいもののように褒めてくれる。
その度に、私は自分が特別な存在なのだと錯覚してしまう。ううん、錯覚なんかじゃない。カイ様と一緒にいるときの私は、きっと本当に特別なんだ。
(心臓が、もたない……)
そんな私の心の声に気づくこともなく、カイ様は楽しそうに目を細めている。彼の黒曜石のような髪が、柔らかな風にさらりと揺れた。
「見て、カイ様。あの露店の飴細工、すごく綺麗」
私が指さした先には、色とりどりの飴細工が太陽の光を浴びて宝石のように輝いていた。鳥や花、蝶々をかたどったそれは、芸術品のようだ。
「……そうだな」
「昔から、こういう素朴で、職人さんの心がこもったものが好きだったの」
宝石や豪華なドレスももちろん素敵だけれど、私の心の琴線に触れるのは、いつもこういうささやかな手仕事の美しさだった。私の言葉に、カイ様は嬉しそうに頷く。
「では、買おう。アイラが笑ってくれるなら、いくらでも」
彼は穏やかな微笑みを浮かべたまま、私の手を引いて露店へ向かう。そして、私が一番綺麗だと思った青い蝶の飴細工と、彼に似合いそうな白馬の飴細工を二つ、買ってくれた。
「ほら、アイラ」
差し出された青い蝶は、陽光を受けて透き通り、今にも羽ばたいてしまいそうだった。それを見つめる私の頬も、自然と緩んでいく。幸せって、こういう瞬間のことを言うんだろうな。
不意に、道の脇でしゃがみこんで、しくしくと泣いている小さな男の子が目に入った。年は五つくらいだろうか。高そうな服を着ているけれど、周りに親らしき人の姿はない。
「カイ様、あの子……」
「迷子、かな?」
私たちは顔を見合わせると、どちらからともなく、その子に歩み寄った。
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