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第5話

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「またあの頃に戻りたいな……」

現在アルベルトとクローディアは華やかな王都から離れて、街と呼べるほど発展したところでもなく、少し大きな田舎の村と言ったほうが正しい場所で暮らしている。

子供が一人いる家族三人の貧乏家庭でボロ家暮らし。まさか王子が住んでるとは誰も思えないような貧相な家屋。昔住んでいた王宮が心の底から懐かしく羨ましく感じる。

なにしろ、王子が飼っていたペットの家なほうが遙かに立派なのです。抜け殻のような雰囲気を漂わせ、廃人寸前の顔の彼は今にも死にかけの状態のような弱々しい声でつぶやく。

「もうこんな職場は耐えられない!下品な連中だらけで僕に相応しくない奴らばかりだ!」
「好きにしろ仕事ができない能無しが!」
「なんだと!」
「お前はひよっこのくせに文句だけは一人前だな」
「貴様!卑しい平民の分際で僕を鼻で笑うとはいい度胸だ!」

ある日、アルベルトは堪忍袋の緒が切れてしまい、先輩と怒鳴り合いを繰り返す。愚弄されたと感じたのであろう彼は怒りは腹の虫が収まらない。

言い争いはいつまでも止まらなくて結局親方から説教をくらう。激しい喧嘩につながり職場放棄したことも数回はあります。

だけど現在は彼も成長して、職場の仲間とも仲良く会話するようになり、仕事が終わると一緒に酒を飲む仲にまでなった。最初からは考えられませんが、彼のひたむきな姿勢が次第に受け入れられていきました。


「アルベルト気をつけてね」
「いつもありがとうクローディア。それじゃあ行ってくるよ」

数週間後、揉めてたのが嘘のように二人はすっかり仲直りをしていた。アルベルトとクローディアは喧嘩が耐えない日々でしたが、なぜか最近は彼女が機嫌がいい。彼はやっとこの生活に慣れてくれたのだと内心でほっとして胸をなでおろす。

朝仕事に行くため家を出る時に、愛情に満ちた笑顔で頬にキスまでして見送ってくれる。彼はこの幸せを胸中で噛みしめていた。妻と子供の幸せそうな寝顔を見るのも心が和んだ。だが、その幸福は偽りだったのです。

「あれはクローディア?一体どこに行くんだ……?」

その日アルベルトは、体調を崩して早めに仕事を切り上げた。帰り道を歩いていると彼女を発見した。小綺麗な感じで化粧も服装も整えられて、昔のように上品な美しい令嬢に見える。

貧しくなり頭を抱える生活をおくるようになって、ここのところそんな姿を見ることもなかった。彼は思わず駆け足になって気付かれないように慎重に動く。みすぼらしい服装の王子は、愛を捧げている妻の背中を追いかけた。
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