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第8話
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「殿下!その平民とはどのようなご関係ですか?」
誰もが見ている前でレオ殿下に抱きついてキスを行うという衝撃的な行為には、婚約者のクロエ令嬢じゃなくても納得がいかない。さっそくレオ殿下の婚約者のクロエ令嬢が我慢ならないという顔で詰め寄る。
一体どういうことなのか?まさかクロエ令嬢と婚約しているのにレオ殿下とローズは付き合っているのかと疑いの目が向けられる。
先ほど、クロエ令嬢に睨まれて虫のように大人しくなっていた貴族の令嬢達もレオ殿下に対してローズの馴れ馴れしい態度に恨みのこもった非難するような目で睨んでいた。
「ローズは僕の恋人で運命の女性だ。僕はローズと結婚する」
「な……!?」
「クロエとの婚約はなかったことにしてもらうようにお父様に頼んでいる」
突然の婚約解消の申し入れを宣言されてクロエ令嬢は返す言葉が見つからない。その上に平民のローズのことを自分にふさわしい生涯の伴侶と口にした。
学園の新入生の歓迎会という笑顔が溢れて明るく話しているパーティーが緊迫した状況になり、誰もが気まずそうな顔をして見守る。
「結婚なんてあり得ないでしょう!こんな平民と殿下では身分が違い過ぎます!」
クロエ令嬢は公爵家の誇りがズタズタにされる。こんな平民に婚約者のレオ殿下を奪われて、全員の見ている前で恋人のように寄り添いキスを交わされ婚約破棄の宣言までされた。
「私はそんな…レオと結婚なんて…初めて言われて…戸惑っています」
ローズは目を丸くして驚き子犬のように体を震わせながら喋る。しかしこれも演技で心の中でクロエ令嬢に舌を出す図太い女。
「ローズ突然こんなところで告白してすまない」
「いえ、息が詰まるほど驚きましたが嬉しいです」
「ローズ…」
レオ殿下とローズは見つめあって抱き合い二人だけの世界に入ってしまっている。もう誰にも止めることはできない。
「平民がよくも殿下をたぶらかしたな。殿下を催眠にでもかけている魔女が!」
クロエ令嬢は幼い頃からレオ殿下と結婚するために教育を受けてきてそれが苦しくても自分の生き甲斐だと思い耐えてきた。それなのにぽっと出の平民に取られた悔しさは計り知れない。
「黙れクロエ!それ以上ローズに悪態を吐くことは僕が許さん!」
「殿下…どうしてですか?」
「クロエには悪いがもう愛せない。クロエの家にも申し訳なく思う」
「私の何がいけなかったのですか?」
「不満はなかったがローズがそれ以上に魅力的だった。それにローズは聖女だ」
「え……?」
婚約者のレオ殿下から一方的な別れを切り出され、もうお前は愛することができないと告げられた。何年も続いた二人の関係があっけなく幕を閉じる。
ローズが聖女と耳元でささやかれたクロエ令嬢は気の抜けな声を出す。その瞬間壊れた人形のようにその場に泣き崩れてしゃがみ込みいつまでもすすり泣いていた。
**********
新作『妹の婚約者が子供の時に好きだった人で誘惑すると、彼は妹に婚約破棄を告げた』の連載を始めました。
誰もが見ている前でレオ殿下に抱きついてキスを行うという衝撃的な行為には、婚約者のクロエ令嬢じゃなくても納得がいかない。さっそくレオ殿下の婚約者のクロエ令嬢が我慢ならないという顔で詰め寄る。
一体どういうことなのか?まさかクロエ令嬢と婚約しているのにレオ殿下とローズは付き合っているのかと疑いの目が向けられる。
先ほど、クロエ令嬢に睨まれて虫のように大人しくなっていた貴族の令嬢達もレオ殿下に対してローズの馴れ馴れしい態度に恨みのこもった非難するような目で睨んでいた。
「ローズは僕の恋人で運命の女性だ。僕はローズと結婚する」
「な……!?」
「クロエとの婚約はなかったことにしてもらうようにお父様に頼んでいる」
突然の婚約解消の申し入れを宣言されてクロエ令嬢は返す言葉が見つからない。その上に平民のローズのことを自分にふさわしい生涯の伴侶と口にした。
学園の新入生の歓迎会という笑顔が溢れて明るく話しているパーティーが緊迫した状況になり、誰もが気まずそうな顔をして見守る。
「結婚なんてあり得ないでしょう!こんな平民と殿下では身分が違い過ぎます!」
クロエ令嬢は公爵家の誇りがズタズタにされる。こんな平民に婚約者のレオ殿下を奪われて、全員の見ている前で恋人のように寄り添いキスを交わされ婚約破棄の宣言までされた。
「私はそんな…レオと結婚なんて…初めて言われて…戸惑っています」
ローズは目を丸くして驚き子犬のように体を震わせながら喋る。しかしこれも演技で心の中でクロエ令嬢に舌を出す図太い女。
「ローズ突然こんなところで告白してすまない」
「いえ、息が詰まるほど驚きましたが嬉しいです」
「ローズ…」
レオ殿下とローズは見つめあって抱き合い二人だけの世界に入ってしまっている。もう誰にも止めることはできない。
「平民がよくも殿下をたぶらかしたな。殿下を催眠にでもかけている魔女が!」
クロエ令嬢は幼い頃からレオ殿下と結婚するために教育を受けてきてそれが苦しくても自分の生き甲斐だと思い耐えてきた。それなのにぽっと出の平民に取られた悔しさは計り知れない。
「黙れクロエ!それ以上ローズに悪態を吐くことは僕が許さん!」
「殿下…どうしてですか?」
「クロエには悪いがもう愛せない。クロエの家にも申し訳なく思う」
「私の何がいけなかったのですか?」
「不満はなかったがローズがそれ以上に魅力的だった。それにローズは聖女だ」
「え……?」
婚約者のレオ殿下から一方的な別れを切り出され、もうお前は愛することができないと告げられた。何年も続いた二人の関係があっけなく幕を閉じる。
ローズが聖女と耳元でささやかれたクロエ令嬢は気の抜けな声を出す。その瞬間壊れた人形のようにその場に泣き崩れてしゃがみ込みいつまでもすすり泣いていた。
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新作『妹の婚約者が子供の時に好きだった人で誘惑すると、彼は妹に婚約破棄を告げた』の連載を始めました。
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