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第21話

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セリーヌと竜の関係を理解してアランはかなり慌てふためいていた。昔から仲の良い間柄だと思っていた彼女は、自分とは全く違う世界にいるような気がした。竜とを深めていただなんて、何だかおとぎ話のような不思議な感じがする。

「あの、ドラゴン様」
「なんだ?」

アランは、ふと脳裏をよぎって声をかけると竜も慣れた感じで普通に返事をした。

「それでは今までこの国で平和に過ごせていたのは、セリーヌ様のおかげだったというわけですか?」

アランはセリーヌの話に触れながら、改めて確認するようにそう問いかけた。このヴァレンティノ王国が魔物におそわれることもなく、あらゆる人々が豊かな環境で平和な生活を送ることが出来たのは彼女のおかげなのですか?

「だからそう言っておるだろう!」
「す、すみません……ですが私たちは聖女にずっと守られていたと思っていましたので……」

竜はひとえに彼女のおかげだと反射的に評する。急激な激昂げっこうぶりを見せる竜にアランは素直に詫びた。だが何か釈然しゃくぜんとしないものが心に残った。自分たちは、これまでの期間ステファニーの聖女の力によって、手厚く保護されていると思っていたからです。

「聖女?あのの事か?」
「聖女のステファニーをご存じなのですか?」
「あいつはおどろくほどに無能だ」
「へ……!?」

竜はついポロっと発言した。聖女は強さが欠けていると言うのだ。アランはステファニーのことを知っているのですか?そう尋ねました。すると、竜は聖女のことを異常なほどの無能だと答えると、アランは信じられない面持ちで素っ頓狂とんきょうな声が口かられた。

「全てセリーヌ様のおかげでこの国は守られておる」
「ドラゴン様、お言葉ですがステファニーは先代の聖女に才能があると認められて聖女に選ばれたのですが……」

この国はセリーヌが守っていた。竜はごく当たり前のことのように言う。アランは失礼ながらと前置きをしてから言葉を続けた。ステファニーは前の世代の聖女に、才能や技術が高く評価されて特別に選抜されたと熱を込めて語った。

「黙ればか者!」
「ひいいいいいぃぃーっ」
「この程度の脆弱ぜいじゃくな結界しか張れない者がそんなわけがなかろう!!」
「ドラゴン様お許しを……出過ぎたことを言いまして申し訳ございません……お怒りをおしずめください……」
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