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第26話
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セリーヌ様。竜がそう言うとフレッドは、ちょっと首を傾げて不思議そうな顔をした。なんで竜はセリーヌ様と呼ぶのだろう? それを尋ねようと口を開きかけた時にアランがとっさに声を出した。
「フレッド! その話は置いておこう」
「いや、気になるじゃないか」
「今は魔物が迫ってきているんだ。それどころじゃないだろう!」
アランは胸を掻きむしられる思いで、フレッドに今はそんな場合ではないと必死に説得するのだが、フレッドはセリーヌとドラゴンがどんな繋がりを持っているのか? 興味本位で意見を求めてきたのだ。
「でも追放したセリーヌとドラゴン様に、どのような関係があるのか気になるのだ」
「フレッドなんてことを言うんだ!!」
フレッドは絶対に言ってはならない最大の禁句を思わず口に出してしまう。アランは目に焦りの色を浮かべてひときわ大きな声を出した。
「……ん? おい、お前今なんと申した?」
竜は耳をピクリと反応させて声をかけた。その声を聞いて少し怒っているような印象を受けたアランは体が細かく震え始めた。
「セリーヌとの関係が気になったと……」
「その前だ」
フレッドは何もわかってないので、まったく平然とした顔で答える。すると竜はそれに応じて言葉を返した。
「私たちが罪を着せて、セリーヌを国から追い出したことですか?」
とうとう言ってしまった。非常にはっきり聞きとれる声で、フレッドは悪びれた素振りも後悔している様子もない。それはセリーヌと竜の関係が分からないので仕方がないことだが……。
アランはあちゃー、と額に手をやってこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。だが体は固まってしまい動かなくなっていた。
「なんだと……!?」
「ドラゴン様! 勘違いをなさらないでください。彼女は絶対に無罪だと確信しております。私たちも今は反省して……」
竜は驚いたように大きな目を開いて、空へ向けて怒鳴るような声を発した。アランは頭の中で、この国は完全に崩壊するというイメージが広がっている。今にも崩れそうになる膝に両手をつけて支えて慌てて弁解した。
「貴様知っていたな……なぜセリーヌ様が追放された事実を黙っていた?」
(そんな事を正直に言えるわけがないだろう)
竜はアランに責任を追及するように問いただしますが、アランは心が不安に追い詰められていた。
「フレッド! その話は置いておこう」
「いや、気になるじゃないか」
「今は魔物が迫ってきているんだ。それどころじゃないだろう!」
アランは胸を掻きむしられる思いで、フレッドに今はそんな場合ではないと必死に説得するのだが、フレッドはセリーヌとドラゴンがどんな繋がりを持っているのか? 興味本位で意見を求めてきたのだ。
「でも追放したセリーヌとドラゴン様に、どのような関係があるのか気になるのだ」
「フレッドなんてことを言うんだ!!」
フレッドは絶対に言ってはならない最大の禁句を思わず口に出してしまう。アランは目に焦りの色を浮かべてひときわ大きな声を出した。
「……ん? おい、お前今なんと申した?」
竜は耳をピクリと反応させて声をかけた。その声を聞いて少し怒っているような印象を受けたアランは体が細かく震え始めた。
「セリーヌとの関係が気になったと……」
「その前だ」
フレッドは何もわかってないので、まったく平然とした顔で答える。すると竜はそれに応じて言葉を返した。
「私たちが罪を着せて、セリーヌを国から追い出したことですか?」
とうとう言ってしまった。非常にはっきり聞きとれる声で、フレッドは悪びれた素振りも後悔している様子もない。それはセリーヌと竜の関係が分からないので仕方がないことだが……。
アランはあちゃー、と額に手をやってこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。だが体は固まってしまい動かなくなっていた。
「なんだと……!?」
「ドラゴン様! 勘違いをなさらないでください。彼女は絶対に無罪だと確信しております。私たちも今は反省して……」
竜は驚いたように大きな目を開いて、空へ向けて怒鳴るような声を発した。アランは頭の中で、この国は完全に崩壊するというイメージが広がっている。今にも崩れそうになる膝に両手をつけて支えて慌てて弁解した。
「貴様知っていたな……なぜセリーヌ様が追放された事実を黙っていた?」
(そんな事を正直に言えるわけがないだろう)
竜はアランに責任を追及するように問いただしますが、アランは心が不安に追い詰められていた。
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