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第27話
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竜の暴風雨のような怒りにアランは、青い顔でブルブル震えて足に力が入らず下半身の力が抜けていく。まともに立っていることも出来なくて尻もちをついて倒れた。
「アランどうした……!?」
親友の異常なほどに怯える様子に、フレッドが思わず大声を出した。一体何が起こっているのか? どうしてアランはあんなにも弱々しい面持ちなのか?
「我の愛しきセリーヌ様をよくも! うおおおおおおおおっ!!」
「どうかお許しください……」
「貴様ら、ただではすまさぬ!」
「ひいぃぃーっ」
セリーヌを追放した愚かな者に鉄槌を下すべく、竜は威嚇するように唸り声を上げて口から火を噴いた。アランはどうか許してくれと懇願して、目に涙を一杯溜めて悲鳴じみた絶叫を上げる。
「ドラゴン様! 何か気分を害することを私たちはいたしましたでしょうか?」
察しがよくないフレッドは、まだ竜とセリーヌの関係が理解できていないので、とにかくこの場をおさめるために必死に叫んだ。
「黙れ! 貴様がセリーヌ様に不当な扱いをした張本人であろう?」
竜はセリーヌに無礼な態度の仕返しをしなければ、気がすまなかった。フレッドに向かってお前が原因かと問う。というのも竜はセリーヌとの会話での事を、フレッドという王子の名前を聞いて記憶が連鎖的によみがえってきた――
「今日は大事な話があるんです」
「やけに嬉しそうだな。何があったのだ?」
「実はこの国の王子のフレッド様と婚約しました」
「そ、そうなのか……!?」
ある日、いつもより明るい雰囲気のセリーヌから話があると言われて、竜も大好きな人が嬉しそうなので心が躍るような気持ちになる。だが次の瞬間に悲しみのどん底に突き落とされてしまう。
婚約を聞かされた竜は大きなショックを隠せなかった。数日間は水すら飲まなくて食事も喉を通らない状態が続いて、歯止めがきかなくなるほど涙を流した。
しかしセリーヌが喜んでいるなら、大歓声が上げて一緒にはしゃいで見せるべきではないか? と思い心に明るさを取り戻しました。
「我も婚約を応援しているからな。実にめでたいことだな」
「ドラゴンさん、ありがとう。少しの間、呼びかけても反応がなくて寂しかったです」
「すまぬ、大事な用事があったので話ができなかった」
「アランどうした……!?」
親友の異常なほどに怯える様子に、フレッドが思わず大声を出した。一体何が起こっているのか? どうしてアランはあんなにも弱々しい面持ちなのか?
「我の愛しきセリーヌ様をよくも! うおおおおおおおおっ!!」
「どうかお許しください……」
「貴様ら、ただではすまさぬ!」
「ひいぃぃーっ」
セリーヌを追放した愚かな者に鉄槌を下すべく、竜は威嚇するように唸り声を上げて口から火を噴いた。アランはどうか許してくれと懇願して、目に涙を一杯溜めて悲鳴じみた絶叫を上げる。
「ドラゴン様! 何か気分を害することを私たちはいたしましたでしょうか?」
察しがよくないフレッドは、まだ竜とセリーヌの関係が理解できていないので、とにかくこの場をおさめるために必死に叫んだ。
「黙れ! 貴様がセリーヌ様に不当な扱いをした張本人であろう?」
竜はセリーヌに無礼な態度の仕返しをしなければ、気がすまなかった。フレッドに向かってお前が原因かと問う。というのも竜はセリーヌとの会話での事を、フレッドという王子の名前を聞いて記憶が連鎖的によみがえってきた――
「今日は大事な話があるんです」
「やけに嬉しそうだな。何があったのだ?」
「実はこの国の王子のフレッド様と婚約しました」
「そ、そうなのか……!?」
ある日、いつもより明るい雰囲気のセリーヌから話があると言われて、竜も大好きな人が嬉しそうなので心が躍るような気持ちになる。だが次の瞬間に悲しみのどん底に突き落とされてしまう。
婚約を聞かされた竜は大きなショックを隠せなかった。数日間は水すら飲まなくて食事も喉を通らない状態が続いて、歯止めがきかなくなるほど涙を流した。
しかしセリーヌが喜んでいるなら、大歓声が上げて一緒にはしゃいで見せるべきではないか? と思い心に明るさを取り戻しました。
「我も婚約を応援しているからな。実にめでたいことだな」
「ドラゴンさん、ありがとう。少しの間、呼びかけても反応がなくて寂しかったです」
「すまぬ、大事な用事があったので話ができなかった」
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