「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈

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第31話

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アルバートは弟が事故で足を失ったことは、運命でどうしようもないと諦めていた。それなのにセリーヌは信じられない事を口にした。自分が治療するから連れてきなさいと、何でもない事のように言ったのだ。

「社長は、そんな高度な回復魔法を使えるのですか……?」
「ええ、そうよ」

この世界に魔法は当たり前に存在するので、怪我を治す回復魔法がある事はわかっている。でもそれは擦りむいた傷や身体の疲れを少しとるくらいだと、ほとんどの人は思っている。噂では遠く離れた国には聖女がいて、どんな病気でも瞬時に治療ができる神のような女性がいるらしい。

その女性とはセリーヌが長年暮らしていたヴァレンティノ王国で、聖女と呼ばれているステファニーの事ですが……。弟の失った足を元に戻すような、そんな規格外の回復魔法が使えるのは世界中でもごく一部の者に限られる事はだれもが皆分かっている。

「社長は、どこのどなた様なのですか?」

アルバートは興奮した顔つきで思わず口に出した。セリーヌという女性は若く美しく知性もあり、他国でも様々な業種に手を付けている実業家だという認識だった。

前にセリーヌ本人から直接話を聞いたことがあり、ホテル経営や農園主で醸造所を営んでいると聞いた。それだけでなく観光開発にも力を入れているらしく、非常に優秀で立派な女性だと感心していた。さらに回復魔法まで使えるとは……アルバートは心臓が数秒間止まって雷に打たれたような感覚を感じる。

「私はこのレストランのオーナーだけど?」
「いや、それはわかっております。魔法が使えるのも正直驚きましたが、最初に会った時は世間知らずのどこかの金持ちの商人の娘かと思っていたこともありました。この店もちょっとした気晴らしや娯楽でされているのではないかと……最近では社長の本来の姿が気になって、まさか社長が聖女様なのですか?」

セリーヌは笑顔を浮かべると不意に不思議そうな顔をしてから口にすると、アルバートは困った様子で語った。二人が数年前初対面の挨拶を交した時は、セリーヌの事を過保護で育てられた令嬢だという印象を抱いていた。

実際には公爵令嬢なので、なかなか勘が鋭いとセリーヌは思いながら見つめた。アルバートはセリーヌの事が気になると気持ちを伝える事をポロリと言ってしまい、恥かしそうな顔になって聖女ではないかと話題をそらすように質問した。

「私は聖女ではありません。前に話したことがあったと思うけど、ここは私が最初に始めた店なの。あなたは私がいない時に、このレストランを全面的に任せている心から信頼できる代表です。その弟さんが怪我をしたら治してあげるのは当然でしょう?」
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