「犯人は追放！」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

第30話

「最高の料理を提供する『精霊のレストラン』へようこそおいでくださいました」

この日は、あいにく天候が悪く雨模様の曇り空でしたが、セリーヌの経営する店は連日行列ができるほどの大盛況であった。店員たちはセリーヌがずっと店にいることに最初は明らかに戸惑っている様子だった。その理由はセリーヌは店に顔を出すときは基本的に週末限定でした。

店員たちはセリーヌが他国の公爵令嬢という事は知らないので普通に接している。それでも経営者なので、それなりの敬意を払っています。セリーヌは明るい性格で人柄の良さは皆わかっているので、毎日のように店にいるセリーヌを店員たちは心から嬉しく思う。

「社長は色々な店を経営していると聞きましたが、この店に毎日顔を出して大丈夫なのですか？」

その日、レストランの営業終了して仕事を片付けた店員の一人が、セリーヌがいる部屋のドアをノックした。彼は店のリーダー役を務めている男性で名前はアルバート。

セリーヌがいなくても彼が店を上手く回してくれて全幅の信頼を置いています。年齢はセリーヌより少し年上で、すらりと背が高く銀髪で平民だが貴族のような整った上品な顔立ちをしていた。

そのアルバートは心配そうな表情を見せて尋ねた。正直なところセリーヌが好きなので、毎日店にいることは非常に喜ばしいことだ。それでも何かあったのかと気がかりでした。

「心配してくれてありがとう。私は問題ないわ。こっちの仕事に専念することが可能になっただけよ」
「そうでしたか、安心いたしました。店員たちも心配していましたので早速伝えます」

セリーヌは国を追放されたので、もう家に戻る必要もなくなった。彼女は他の国にも店を持っているが、そこも信頼できる人に任せている。ここに来て生活している理由はセリーヌが最初に始めた店だから特別な思い入れが強かった。

アルバートは他の店員たちも心に引っかかるものがあったと話す。とは言え、誰もがセリーヌに好意を寄せているので、毎日顔を見れて一緒に仕事ができて嬉しいというのが本音でした。セリーヌの言葉を聞いてアルバートは心の中の霧が消えていき花のような笑顔を向けてきた。

次の日の朝。アルバートは青白い顔色をして悲しげな様子で出勤してきて、意気消沈したような重い声でセリーヌに挨拶をする。

「……おはようございます……」
「何かあったの？」
「実は昨日、弟が不慮の事故に巻き込まれてしまって、命に別条なかったのですが片足を失ったのです」
「そう、私が治すからすぐに連れて来て」
「え……！？」